どういったことが離婚の原因になるのでしょうか?
調停離婚では、離婚理由を申立時に記入する項目があり、それをまとめたものを裁判所が発表しています。
その統計から、みんながどんな理由で離婚に至ったのかを見てみましょう。
離婚調停を申し立てたときの「離婚理由」は選択式
家庭裁判所に夫婦関係調整申立を行うと、離婚に関しての話し合いを家庭裁判所内でできる「離婚調停」を行うことができます。
このときに記入する申立書の用紙の中に「申立ての動機」を選ぶ項目があります。
「申立ての動機」とは、つまり「なぜ離婚を希望するのか」ということ。その理由を下記の中から選択し、記入します。
- 性格があわない
- 異性関係
- 暴力をふるう
- 酒を飲みすぎる
- 性的不調和
- 浪費する
- 病気
- 精神的に虐待する
- 家族をすててかえりみない
- 家族と折合いが悪い
- 同居に応じない
- 生活費を渡さない
- その他
離婚理由男女別ランキング
そして、裁判所が発表した2016年度(平成28年度)の統計では以下のような結果になっています。
(男性の申し立て件数:18,135件、女性の申し立て件数:48,359件)
男性 | 件数 | 女性 | 件数 | |
1位 | 性格があわない | 11,138 | 性格があわない | 18,994 |
2位 | その他 | 3,708 | 生活費を渡さない | 14,090 |
3位 | 精神的に虐待する | 3,590 | 精神的に虐待する | 12,361 |
4位 | 家族・親族と折り合いが悪い | 2,682 | 暴力をふるう | 10,461 |
5位 | 異性関係 | 2,594 | 異性関係 | 8,357 |
6位 | 性的不調和 | 2,407 | その他 | 5,403 |
7位 | 浪費する | 2,268 | 浪費する | 5,139 |
8位 | 同居に応じない | 1,719 | 家族をすててかえりみない | 4,125 |
9位 | 暴力を振るう | 1,535 | 性的不調和 | 3,465 |
10位 | 家庭を捨てて省みない | 1,098 | 家族と折合いが悪い | 3,355 |
男女ともに、1位に来ているのが、「性格があわない」です。特に男性からの申し立ての場合は、2位と大きく差が出るくらいの圧倒的な理由であることが分かります。
では、離婚理由は「性格の不一致」が最も多いのでしょうか?
「性格の不一致」が最も多い離婚理由ではない!
実は、この申立書の「申立ての動機」は、3つまで選択することが可能です。(現在はいくつでも選択できます。)
そしてこの統計では、3つまでを選択した結果をまとめたものです。
たとえば、あなたがパートナーとの離婚を決意したときに、その理由がパートナーの浪費であったとします。さらに、パートナーはギャンブルにお金を費やし、家計にはお金を入れてくれませんでした。そうすると、選択するのは、「生活費を渡さない」と「浪費する」ですね。他にも、一緒に生活していく上で性格で合わない部分もありました。なので「性格があわない」も〇をつけました。3つまで選択できますし、他に当てはまるものがなかったからです。
他のパターンを考えてみましょう。パートナーからの暴力があった場合です。「暴力をふるう」「精神的に虐待する」に〇をつけました。そして、暴力をふるったり、暴言を言ってくる人とは性格があうはずもありません。やっぱり最後に「性格があわない」に〇をつけることになりました。
このように「性格があわない」という選択肢は、他の選択肢が離婚の最たる理由であっても、重複して選択される可能性が高いのです。
たとえ離婚を選択しなくてもパートナーと「性格があわない」と思う場面というのはたくさんあります。
別々の環境で育ってきたもの同士が結婚するので、価値観も違いますし、性格だって違います。他のことがきっかけで離婚を決意した場合でも、「性格があわない」という項目は誰しもが選択する可能性があるのです。DVをしてくる相手だって、浪費をする相手だって、不倫をする相手だって「性格があわない」わけですから。
つまり、「性格の不一致」は選択されているものの、それが離婚を決意した最たる理由ではない場合が多いのです。
性格や価値観の違いだけで調停離婚に至るケースは少ないと考えられる
実は、きちんとした理由がなければ一方的に離婚することはできません。(もちろん双方が納得して離婚に至る場合は別です。)
離婚ができる理由は下記のものです。
- 浮気・不倫(不貞行為)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないこと
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
これを見てどう思われましたか?意外と離婚に該当する事由というのは少ないのです。
不貞行為がない場合であれば、ほとんどの場合は、5の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当することになります。
では、性格や価値観の違いだけで離婚ができるのでしょうか?
答えはノーです。
性格や価値観の違いは5の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当しません。なので、わざわざ調停を起こしても、相手が拒否をすれば離婚ができない可能性が高く、裁判になったら間違いなく離婚できません。
夫婦関係解消の調停を起こす人というのは、協議離婚(お互いの話し合いで離婚やその条件を決めること)ができなかった人たちです。
そして、相手が離婚を拒否した、もしくは離婚の条件を拒否したから調停に至っています。
どうしても強く離婚を希望しているからこそ、夫婦関係解消の調停を起こして離婚をしようとしています。
その原因には、「性格の不一致」だけではないどうしても離婚を希望する理由があると想像するのは難くないでしょう。
調停離婚に至る理由は「モラハラ」!?
となると、「性格があわない」は真の離婚理由からは除外して考えてみた方が良さそうです。
男性の場合は、2位の「その他」も理由が分からないので除外するとしたら、3位の「精神的に虐待する」が離婚理由の最たるものだと言えそうです。
女性の場合は、2位の「生活費を渡さない」と3位の「精神的に虐待する」が僅差で離婚理由上位になっています。
あれ?もしかして、モラハラで調停離婚をする人って、男性も女性も少なくないのではないでしょうか?
ちなみに私も「精神的に虐待する」で申し立てを出しています。
男女差から分かる離婚の金銭面での争い
ここで、調停の申し立ての男女比率をもう一度見てみましょう。
男性の申し立て件数:18,135件に対し、女性の申し立て件数:48,359件です。実に女性の方が男性の2.6倍もの多さなのです。
つまりは、女性の方が協議離婚での離婚に合意ができなかったことを表しています。
夫婦関係調節調停では、「養育費」「財産分与」「面会交流」「慰謝料」「親権」「年金分割」についてもあわせて話し合うことができます。女性は多くの場合、男性から養育費や財産分与や年金分割を受ける側です。
女性からの申し立ての方がはるかに多い理由は、離婚の条件面での争いが元で、離婚調停を申し立てる場合が多いからではないでしょうか。
離婚の争いの背景にはやはり「お金の争い」がありそうですね・・・。
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