モラハラ夫は家庭に安らぎを求め、妻には、いつもニコニコとしていて機嫌を良くしていろと言います。
しかし、モラハラ夫の母親を見ると支配的なタイプでニコニコしてはいないのに、自分の妻に対してはニコニコした人物を求めることもあります。これは、「妻や母親とはこうあるべき」という固定観念が理由ではありません。原因は自分自身の劣等感にあるのです。
モラハラ加害者が家庭に求める真の意味と、なぜそういう考え方をしてしまうのかについてまとめました。
安らぎの場=家族みんなが安らげるという意味ではない
モラハラ加害者にとって、家庭は安らぎの場であるというのはみんなが安らげる場であるという意味ではありません。「妻さえニコニコしていればすべてがうまくいく」というのは、家庭内のことが上手くいくということではありません。自分のみが気持ちが良いということです。
モラハラ加害者いう「安らげる家庭」というのは、自分自身にとってだけ都合が良く、家族が自分の言うとおりに何でも言うことを聞き、機嫌をとってくれ、偉く振舞えるという意味にすぎません。
さらにそんな自分を受け入れてくれる家族しかいらないとも思っています。(歯向かうことは許さない)
こうした価値観が生まれる背景には、幼少期のモラハラ加害者自身の押し殺された思いがあります。
親の機嫌を取ってきた幼少期のインナーチャイルド
モラハラ家庭で育った場合、子どもたちは親の機嫌を取らなくてはいけません。親の機嫌が悪いときは、愚痴を聞いたり「まぁまぁ」となだめたりして、親の機嫌がよくなるように図ります。自分の機嫌が悪ければ、そんな自分は親から否定されるし、その結果親からのモラハラが始まる恐れがあるため親の前で感情を出すことはありません。
こうやって家庭の雰囲気を保つために子ども時代から感情を殺し、良い自分を演じるしかなかったモラハラ加害者は、満たされなかった想いをインナーチャイルドとして心の内に抱えています。
モラハラ加害者が妻に求める「いつもニコニコしていて機嫌のいい姿」というのは、まさに子ども時代のモラハラ加害者そのものなのです。
家庭を持った瞬間、モラハラが始まる理由
幼少期にため込んで満たされなかった想いは、本人が自覚をしていようがなかろうが、癒しを求めています。モラハラ加害者は、自分の家庭を持ち、家庭の中で自分が一番偉くなったときにその想いが爆発します。押さえつけれた思いは、そのまま妻や子どもたちを押さえつける力となって働くのです。
モラハラ夫は自身の生育環境から、家庭の中で偉いものがいるのが当たり前で、その他の人は偉いもの(親や父親)に対して機嫌を取るべきだと考えているのです。
妻が原因だと思われてしまう理由
モラハラ夫の両親は「いい子」であるモラハラ夫のことしか知らず、結婚してモラハラが始まったのだとすれば、それは妻であるあなたの責任だと言うでしょう。今までは、親の知るところではモラハラ行為などしてきてもいませんでしたし、むしろ「いい子」であった人物が突然真逆の性格になったようにさえ感じます。表面だけ見れば、原因は新しい家庭内にあると思うでしょう。
さらに周りからそのように責め立てられることで、妻自身も、自分のせいで夫がモラハラをするようになってしまったと誤解をしてしまいます。自分が招いたことであり、何とか夫を元の「良い人」にしようと努力しますが、何も改善、解決されることはありません。
なぜなら、原因は幼少期の満たされなかった想いにあり、現状の家庭(妻や子ども)にはないからです。
インナーチャイルドを癒すためには?
いくらモラハラ夫の要求を聞いたとしても、モラハラが改善することはありません。癒しを求めているのは、幼いころの夫であり、夫自身もそのことに気づいていないことが多いのです。
こうしたインナーチャイルドを癒すには、幼少期に抑え込んでいた想いをモラハラ夫自身が認識することです。
「あの時、こういうことがつらかった」、「本当は親からこうして欲しかった」ということを言葉や想いにすることが必要です。
もし夫と義両親が話し合いの末に和解ができれば、一番の癒しにつながるでしょう。それが難しければ、自分自身もしくはパートナーがつらい思いを受け止めて癒してあげることです。
また、インナーチャイルドを自覚できれば、子育てを通じてインナーチャイルドを癒すことができる場合もあります。たとえば、我が子の要求を聞いてあげることで、自分が子どものときに叶えられなかった要求が間接的に叶ったように感じられ癒される場合もあります。
子育ては「自分育て」でもあり、自分自身を再び一から育てなおすことができるいい機会でもあるのです。
一方で我が子に対して強い嫉妬を抱えてしまうタイプもいる
中には我が子に対して強い嫉妬心を燃やしてしまうタイプもいます。なぜならモラハラ夫自身が子どものときにモラハラ被害に遭ったとしても、誰も助けてくれなかったからです。
我が子に対してモラハラ行為をしてしまったときに、妻が子どもをかばい、自分は妻から叱責されたとしましょう。このときにモラハラ夫は、自分の親は同じことをしても誰からも叱られなかったこと、自分はかばわれなかったのに我が子はかばわれたことなどから強い劣等感や嫉妬心を抱えてしまいます。
そして親は良かったのに自分はダメだという矛盾や、今更どうにもならない過去の可哀そうな自分をどうすることもできずに混乱し、心を病んでしまう場合こともあるのです。さらには、怒りの矛先を誤り、我が子へのモラハラが加速してしまうことさえも。
つまり、モラハラ加害者にとって子育てが癒しになるかどうかは賭けであり、もしその賭けに負けてしまえば、モラハラ夫も我が子もどちらも辛い目に遭ってしまいます。
特に、「強くあらなければならない」と親から育てられた場合は、自分自身の弱い点であるインナーチャイルドをそもそも認めることができませんし、また人に弱みをさらけ出すこともできません。その場合、悲しみの感情は怒りに変換され、自分より弱い立場の人に向かってしまうのです。
離婚を機にモラハラが終息する場合もある
インナーチャイルドを癒すことができなかったモラハラ加害者は、新しい家庭に対してうまく順応できない場合があります。
家庭内ではインナーチャイルドが癒しを求めて騒ぎ立てていたのに対し、離婚をして一人になった途端、満たされなかった想いが噴出することがなくなり、落ち着きを取り戻すこともあります。家庭から抜けることで、自分の幼少期の辛い体験を思い出す機会が減るからです。
モラハラ加害者にとっては、家庭を持って幼少期の辛い体験を思い出すことよりも、仕事などに邁進したほうが幸せな場合もあります。
パートナーがやるべきことは?
パートナー(妻)は「あなたは可哀そうな人」というレッテルを貼らないようにしましょう。弱い自分を認められないモラハラ加害者は、「可哀そうだ」と思われたくないためにより強く反発しようとし、自分の体験を心の奥底にしまい込んでしまいます。
また、問題は家庭内にあるのではなく、別のところにあるとハッキリと伝えることも必要です。モラハラ被害によって家庭内がズタボロにならないためにも問題の線引きは必ずしておきましょう。そしてあなた自身も、あなたが原因でモラハラが始まったわけではないことをよく覚えておきましょう。
まとめ
モラハラ夫が家庭内に癒し(または機嫌のいい妻)を求める理由
- 幼少期から親の機嫌を取って生きてきたことで、「家庭には上下関係があり、下のものは上のものの機嫌を取らなければいけない」と学んでいる
- 幼少期に押さえつけられた幼い自分がインナーチャイルドとして無意識化にあり癒しを求めている
- 自分が家庭の中で上の立場になった時に、押さえつけられたインナーチャイルドが爆発し、辛かった体験を下の立場のものにやり返すようになるため、結婚や家族が増えたことを機にモラハラが始まることが多い
- 本人は自分がつらかった体験をしてきたことに無自覚で、インナーチャイルドがあると認めない場合が多い
- 満たされなかった想いを自覚し、子ども時代の気持ちを認めてあげる体験が必要
- 中には、家庭や子どもを持つことでより傷つき、混乱する場合もある
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