今回は、離婚における財産分与、動産の場合です。
動産も財産分与の対象になります。
動産は一般的にどのように財産分与を行うのか、また、調停の場合と裁判の場合で動産の扱われ方がどのように異なるのかもあわせて解説します。
1.動産とは?
動産とは、車、家具や家電など動かすことができる物の財産のことです。
一方で、土地や家などは動かすことができませんので、不動産に分類されます。
2.動産の中で財産分与の対象となるものは?
財産分与の対象となるのは「共有財産」のみです。
夫のみの財産、妻のみの財産は「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象から外れます。
例えば、結婚前にそれぞれが用意した家具・家電、結婚前にすでに所有していた車などは財産分与の対象から外れます。結婚後、二人で使っていたかどうかは関係ありません。
また、相手から譲渡されたものも財産分与の対象から外れます。
相手に用意してもらった婚約指輪や、誕生日や記念日にプレゼントされた家電などです。
これらは譲渡されたものとして、自分の「特有財産」であると主張できます。
3.動産の財産分与の方法
動産はお金と違って綺麗に二等分として分けることが難しいものです。
そこで、一般的には協議のうえ、双方の合意が得られた方法で財産分与されます。
よくある方法としては、
①すべて現金化し、半分ずつに分ける。
家具家電を売り払い、お金に変えた上で二等分する方法です。一番すっきりとする方法でもあります。この方法では、綺麗に二等分できますが、家具家電は中古で売ると二束三文です。半年前に購入した最新家電であったとしても、大した金額にはなりません。
②購入金額や使用年数をもとに、だいたい半分になるように動産を分け、引き取る
それぞれが別に暮らし始めると家具家電は個々に必要となります。売ってしまうと二束三文のものでも、使用すれば購入金額に応じた価値があります。一から揃えようとするとそれなりに大きい金額がかかるため、新生活でお金もかかることを考えると、できるだけ使えるものは使ったほうが経済的には助かります。
しかし、金銭や養育費などのように明確な基準がないため、話し合いで解決に至らず紛争が長引く可能性があります。また、荷物を取り行き、お互いが顔を合わせることで、関係が悪化する場合もあります。
4.調停離婚(協議離婚)の場合
上記の方法で決めます。
まずは、すべての共有財産分の動産のリスト化し、できれば購入年月日や購入金額なども分かるうえでリストに盛り込みます。
それぞれ必要なものの希望を出し、協議の上で、どれをどちらの持ち物にするかを決定します。
すでに別居している場合は、引き取り日や引き取り方法なども協議をしたほうが良いでしょう。
5.裁判離婚の場合
離婚裁判の場合、裁判では「動産は評価しない」とされ、財産分与の金額上ではゼロです。
つまり実質の所有権は、現在所有している人になります。
6.家を出るときの注意点
離婚をする前に別居をするケースも一般的ですが、引っ越しの際に気を付けておかなければならないのは、動産は裁判では財産分与の対象とならないということです。
モラハラ離婚では、協議が難航し、裁判離婚になることも少なくありません。
その際に、家具家電はすべて夫のもの、ということになってしまえば、出て行った妻はさらに家具家電をそろえるための出費を強いらざるを得ません。
なるべく、別居の際に必要な家具家電は持ち出せるだけ持ち出せた方がいいです。
黙って持っていったからと言って、罪には問われません。
離婚にかかる費用、引っ越しにかかる費用、新生活にかかる費用を考えると少しでも出費を少なくするのが得策です。
7.勝手に動産を処分された場合
モラハラ加害者の場合、勝手に共有財産を処分するというケースもかなり多くあります。モラハラ加害者は、「自分の稼ぎで買ったから自分の持ち物だ」と思っています。
私の場合でも、別居中に勝手に共有財産を夫に処分されてしまいました。
しかし、裁判では動産は評価されないため、金額的にはゼロ。勝手に処分しても慰謝料や金銭的な補償は一切無しです。
調停では、勝手に処分された動産の中古金額の半値、もしくは減価償却を行った金額の半値を相手に請求することはできます。
調停で主張することはもちろん可能ですが、相手はモラハラ加害者。簡単には払おうとしません。
8.まとめ
もしお金に余裕がある場合、すぐに働ける場合など、お金で解決できるのであれば、動産の財産分与にこだわる必要はありません。
こだわことでかえって紛争が長期化し、デメリットの方が大きくなることが考えられます。
しかし、家具家電をそろえるのも大きな金額がかかるため、経済的に不安のある場合は前もって移動できるといいでしょう。夫婦間では窃盗罪は成立しないため、共有財産を持っていったからと言って罪には問われません。
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