2020年4月に改正される「民事執行法」で養育費を受け取れる子どもが増える?

2020年4月に改正される「民事執行法」で養育費を受け取れる子どもが増える?

養育費の支払いがされているのは約2割で、8割は支払いが一度もされなかったり、途中で支払いがストップしてしまうといった状況が続いています。

調停や審判、裁判で養育費の取り決めを行ったとしても、相手の勤務先や、お金が入っている預貯金口座が分からなければ、強制執行ができないという問題点がありました。

2020年4月に改正される「民事執行法」で、今よりも財産開示の手続きが容易になり、養育費の取り立てが現実的なものへとなる可能性が高まってきました。

それでは詳しく見ていきましょう。

目次

民事執行法とは?

民事執行法とは、wikipediaにこうあります。

強制執行、担保権の実行としての競売、換価のための競売、債務者の財産開示に関する手続について規定した日本の法律である

(参照:民事執行法-Wikipedia

強制執行を行うための手続きを定めた法律です。

この中の財産開示について手続きが改正され、裁判所が市町村などに照会して、債務者の勤務先情報が開示できる、銀行に照会して口座のある支店名が開示できるようになります。

今までとの変更点は?-第三者からの情報取得手続きの新設-

2003年に財産開示手続きが定められましたが、改正前(2020年4月改正)の手続きは、債務者を裁判所に呼び出して「あなたの勤務先はどこですか?」「あなたの財産はどこにありますか?」と聞くことができるというものでした。

もちろん、これで財産情報を開示してもらえる場合もありますが、強制的に財産を開示させるのではなく本人の意思によるところが大きいため、本人が拒んだり嘘をつけば正しい情報を得ることができません。そのため、あまり活用されてきていませんでした。

さらには、正しい財産を開示したとしても、その日のうちに預貯金を下ろしてしまえば残高はゼロ。口座にお金がない状態では、強制執行をすることができません。実行力にかけるという欠点がありました。

また、転職などで勤務先が変わってしまった場合は、勤務先が分からなければ強制執行ができませんでした。

1.勤務先を開示できる

「第三者からの情報取得手続」によって、裁判所から市町村や年金事務所に照会をして、相手の勤務先を調べることができるようになります。

これにより、今まで転職などで勤務先が分からなくなり、強制執行ができなくなってしまったケースでも、勤務先照会により取り立てが可能になります。

※勤務先を照会するためには、まず先に「財産開示手続の申立て」をする必要があります。

2.預金の差し押さえに必要な情報を開示できる

今までは、債権者側で債務者の銀行の支店名までを特定できなければ、預金の差し押さえをすることができませんでした。しかし法改正後は、「第三者からの情報取得手続」を利用すれば、各銀行に照会をすることで、債務者の支店名を調べることができるようになりました。

3.迅速に差し押さえをすることで口座からお金をおろすことを防げる

銀行の支店名を開示したことは債務者にも通知が行きますが、その前に裁判所から情報が提示されます。通知が行く前に急いで差し押さえをすれば、お金を下ろして財産を隠すリスクを回避できます。

4.公正証書についても財産開示の手続きができるようになる

今までは、調停調書、審判、判決による場合にのみ財産開示手続きをすることが可能でしたが、改正後は公正証書についても手続きが可能になります。

5.財産を隠したときの罰則が重くなる

財産開示の際に嘘をついたり、裁判所に出頭しなかった場合に今までは、30万円以下の過料だった罰則が、法改正後は6ヶ月以上の懲役または50万円以下の罰金になります。

30万円以下の過料 → 6ヶ月以上の懲役または50万円以下の罰金

これにより、今まで故意に隠していた場合でも嘘をつきづらくなり、財産開示がスムーズにいく可能性が高まります。

養育費の取り立て方法

養育費は、未来に渡って支払いがあるもので、未払いの債務とこれから発生する債務の両方があります。養育費の強制執行では、過去の未払い分に加え、未来に渡る支払いについても同時に執行することができます。

勤務先が分かれば、給料から自動的に天引きという形で将来にわたっての支払い分も強制的に取り立てることができます。

強制執行の手続き及び、必要書類等については、東京裁判所のHPをご確認ください。

債権執行に関する申立ての書式一覧表

いつまでさかのぼって請求できる?

家庭裁判所の審判や調停により養育費を取り決めた場合には、養育費の請求権の消滅時効は10年となります。つまり、10年前の未払い分にさかのぼって請求することができます。

未払いが続いていて、子どもが成人してしまったから支払いを諦めている方。10年前までのものについては請求が可能です。

一方、話し合いで養育費を取り決めた場合には、5年で時効消滅してしまいます。公正証書の場合も同様です。

養育費は、できれば離婚時に調停や審判などの家庭裁判所の制度を利用して決めるのが良いでしょう。もちろん、離婚後に改めて調停をして養育費を取り決めることも可能です。

未払いについては消滅時効があるため、できるだけ早めに請求しましょう。

まとめ

養育費未払いは、実に8割と母子・父子家庭全体の問題になっていました。

今回の法改正で、多くの母子・父子家庭の子どもたちが養育費を受け取れるようになることを願っています。

2020年4月に改正される「民事執行法」で養育費を受け取れる子どもが増える?

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