自分を守るために無意識で行われる「防衛機制」 心の病気になることも…

自分を守るために無意識で行われる「防衛機制」 心の病気になることも…

心理学用語には「防衛機制」という言葉があります。

防衛機制とは、受け入れがたい状況、または潜在的な危険な状況に晒された時に、それによる不安を軽減しようとする無意識的な心理的メカニズムである。

(引用:wikipedia – 防衛機制

とあるように、自分の心を守るために起きる防衛反応であり、通常は無意識下で行われているとされています。

この防衛機制というのは、人が誰しも行っているものであり、「健康」なものから「不健康」なものまで段階に応じて4つに分類されています。その反応のレベルや状況においては、病的であるといわれるものもあり、無意識であったとしても使っている防衛機制によっては相手を不快にしトラブルに発展していく場合もあります。

また、身の回りの厄介な人の言動がこの防衛機制で説明がつくこともあります。

目次

防衛機制の分類

精神科医であるヴァイラントは、防衛機制を段階に応じて4つに分類しました。

以下、wikipedia(防衛機制)より一部を修正して引用しています。

レベル1 精神病的防衛

もっとも原始的な防衛反応であり、5歳以前によく見られる防衛機制です。この段階の防衛機制は、境界性パーソナリティー障害や自己愛性パーソナリティ障害の症状と関連があります。この段階の防衛機制は、精神療法、心理療法などでは修正が困難であり、強力な介入がなければ改善されることはないと言われています。

  • 転換 - 抑圧された衝動や葛藤が、麻痺や感覚喪失となって表現される。手足が痺れたり、失立失歩(脱力し立ったり歩けなくなる)、声が出なくなる失声症や視野が狭くなる、嚥下困難、不食や嘔吐などの症状が出る。
  • 否認 - 不安や苦痛を生み出すようなある出来事から目をそらし、認めないこと。「抑圧」はその出来事を無意識的に追い払うものだが、「否認」は出来事自体が存在しないかのような言動をとる。特に「原始的否認」は分裂を強化するような性質の否認を指す。理想化や脱価値化は、原始的否認を背景とし、また否認を強化する。
  • 歪曲 - 内面ニーズを満たすよう外部の現実を再構成する。
  • 投影(妄想的投影) - 自分の内面にある受け入れがたい感情や欲動を、自分のものとして認めず、外部に写し出すこと。これは明らかな妄想(迫害されるという被害妄想)の形を取る(精神病性妄想)。妄想的投影…たとえば「私は彼を憎む」が「彼が私を憎む」になる。
  • 分裂 - 対象や自己に対しての良いイメージ・悪いイメージを別のものとして隔離すること。「良い」部分が「悪い」部分によって汚染、破壊されるという被害的な不安があり、両者を分裂させ、分けることで良い部分を守ろうとする。抑圧が「臭いものにフタをする」のに対し、分裂は「それぞれ別の箱に入れて」しまう。分裂させた自己の悪い部分は、しばしば相手の中に「投影」される。
  • 躁的防衛 - 自分の大切な対象を失ったり、傷つけたりしてしまったと感じた時に生じる不安や抑うつなどの不快な感情を意識しなくするために行う。「優越感(征服感)」「支配感」「軽蔑感」の三つの感情に特徴づけられ、自分は万能であり相手を支配できると思い込んだり、逆に相手の価値をおとしめたりする。うつ気分を逆転させた躁の気分で抑うつの痛みを振り払おうとする。
レベル1の防御機制は何が問題なのでしょうか?

否認では、不安を感じる出来事から目を背け「そんなものはない」としています。問題から目を背け続けていては解決には至りません。

また、分裂では自分の欠点を別の箱に入れて、投影でそれを周囲の人に押し付けることで解決しようとしています。躁的防衛では、相手を貶めて、支配欲などを感じることで不安を紛らわそうとしています。周囲の人への攻撃へつながり、対人関係でトラブルが発生する原因になります。

レベル2 未熟な防衛

3~15歳では、通常の防衛反応です。しかしこれらの防衛機制で対人関係に深刻な問題を及ぼすこともあります。対人関係において改善されていく場合がありますが、改善には精神療法や心理療法と長い期間を要します。

  • 行動化 - 抑圧された衝動や葛藤が問題行動として表出すること。具体的には性的逸脱行動、自傷行為、自殺企図、暴言、暴力、過食、拒食、浪費、万引き、薬物依存、アルコール依存などが挙げられる。
  • 遮断 - 感情が意識にのぼらないように遮断すること。
  • 病気不安症 - 深刻な病気への過度の心配や思い込みの状態
  • 取り入れ - 投影と逆で、他者の中にある感情や観念、価値観などを自分のもののように感じたり、受け入れたりすること。特に他者の好ましい部分を取り入れることが多い。発達過程においては道徳心や良心の形成に役立つ。しかし度が過ぎると主体性のなさに繋がったり、他人の業績を自分のことと思い込んで満足する(自我拡大)、自他の区別がつきにくい人間となる。
  • シゾイド幻想 - 内部や外部への葛藤を解消するため、妄想へと退化する 理想化 – 自己と対象が「分裂」している状態で、分裂させた一方を過度に誇大視して「理想化」すること。分裂されたもう一方は「脱価値化」を伴う。高次の「理想化」は、対象の悪い部分を見ないようにすることで自分の攻撃性を否認し、それに伴う罪悪感を取り去るのに対し、「原始的理想化」は、対象の悪い部分に破壊されないようにその部分を認識しないようにする。
  • 受動的攻撃行動 - サボタージュなど。
  • 投影性同一視 - スプリッティングが働いている中で、自分自身の悪い部分を相手の中に写し(投影)、相手を支配している、または傷つけていると感じること。その時に投影されている側の人間に、投影された「悪い部分」(憎しみや怒り、軽蔑など)の感情が生まれるという現象が起こる。
  • 退行 - 耐え難い事態に直面したとき、現在の自分より幼い時期の発達段階に戻ること。以前の未熟な段階の低次な行動をしたり、未分化な思考や表現様式となる。不安な時に他人の話を鵜呑みにしやすくなったりするのも退行の一種だが、これは「取り入れ」をよく用いる発達段階に戻ったことでおこる現象である。退行には「病的退行」以外にも「治療的退行」、「創造的退行(健康的退行)」などがある。病的退行は持続的な機能の低下を起こさせるが、治療的退行は治療を施したことにより表出する、一時的、可逆的な現象である。
  • 身体化 - 抑圧された衝動や葛藤が、様々な身体症状となって表れること。心気化。
レベル2の防御機制は何が問題なのでしょうか?

行動化では、自分の体を傷つけたり、時には命にかかわることもあります。犯罪行為に繋がってしまうことも…。また取り入れなどを繰り返し、自他境界がはっきりしない状態でいると、人の言葉に惑わされやすくなったり、不適切な距離感で相手を傷つけたりします。

レベル3 神経症的防衛

成人にもみられる防衛反応です。行動や思考に規制をかけてしまい、日常に支障をきたすことがあります。精神療法や心理療法が効果的で、改善が期待できます。

  • 統制 - 周囲環境における出来事や対象を、過度に管理・統制しようとする。
  • 置き換え - 欲求を本来のものとは別の対象に置き換えることで充足すること。
  • 解離 - 苦悩を避けるために、自分のパーソナリティの一部を一時的だが徹底的に一部変更すること。遁走など。
  • 外在化 - 自分の内部で起こっていることを、外部でも起こっていることだと認識すること。
  • 阻害・禁止 - 受け入れがたい失敗を避けるため、ゴールや目標に対する意欲を抑制すること。
  • 知性化 - 孤立の形をとる。感情や痛みを難解な専門用語を延々と語るなどして観念化し、情緒から切り離す機制。
  • 隔離 - 思考と感情、または感情と行動が切り離されていること。「本音と建前」。観念とそれに伴う感情とを分離するが、観念は意識において保持し、感情は抑圧することなどである。おかしな行為だと自分では気づいているがその行為が止められない、ある種の強迫行為と関わっていると考えられている。
  • 合理化 - 満たされなかった欲求に対して、理論化して考えることにより自分を納得させること。イソップ寓話『すっぱい葡萄』が例として有名。狐は木になる葡萄を取ろうとするが、上の葡萄が届かないため、「届かない位置にあるのはすっぱい葡萄」だと口実をつける。
  • 反動形成 - 受け入れがたい衝動、観念が抑圧され、無意識的なものとなり、意識や行動レベルでは正反対のものに置き換わること。本心と裏腹なことを言ったり、その思いと正反対の行動をとる。憎んでいるのに愛していると思い込んだり、愛他主義の背後に実は利己心があったりと、性格として固定されることも多い。
  • 抑圧 - 実現困難な欲求や苦痛な体験などを無意識の中に封じ込め忘れようとすることである。その内容には観念、感情、思考、空想、記憶が含まれる。ジークムント・フロイトはこの「抑圧」が最も基本的な防衛機制と考えた。特に心的外傷体験(トラウマ体験)や、性的な欲求などの倫理的に禁止された欲求が抑圧されると考えられている。 否認との違いは、否認は実現困難な欲求や苦痛な体験を一時的に忘れるだけで、他人に指摘されるとその事に気付く。しかし抑圧は意識より深い心の深部(前意識や無意識)にまで押し込められてしまう。そのため基本的には思い出せなくなってしまう。思い出すには努力が必要であり、それほど悪い観念でなければ簡単に思い出せるが(前意識からの思い出し)、強い抑圧は無意識にまで押しやられているので思い出すのは困難である。その代表例としては赤ちゃんの頃の記憶などがある。
  • 性的特徴化 - 自分の価値を保つため性的な特徴を強調すること。
  • 打ち消し - 罪悪感や恥の感情を呼び起こす行為をした後で、それを打ち消すような類似の、またはそれとは逆の行動を取ること。分離と共に用いられることが多い。
  • 逃避 - 困難から逃げたり、意識しないよう避けること。
レベル3の防御機制は何が問題なのでしょうか?

置き換え、解離、反動形成、抑圧などでは、あるがままの自分や、自分の本来の欲求や感情を捻じ曲げたり抑圧することで、自身でも自分の気持ちが分からなくなってしまいます。

反動形成は、本心と裏腹なこと(いわゆる天邪鬼)を言うことで自分を守ろうとしますが、行き過ぎると性格として固定されることもあり、注意が必要です。

レベル4 成熟的防衛

12歳以降に見られる防衛反応です。この段階の防衛機制は意識して行われ、自身で社会的な立場を見据える役割を果たします。また、レベル1~3の防御機制を制御します。

  • 利他主義 - たとえ自分が不利益を被っても、他人に代わって建設的な助けをする。
  • 予想 - 将来の苦痛を予想する。
  • 同一視 - 自分にない名声や権威に自分を近づけることによって自分を高めようとすること。他者の状況などを自分のことのように思い、感じ考え行動すること。この同一視は他人から他人へ伝染する。
  • 昇華 - 反社会的な欲求や感情を、社会に文化的に還元出来得るような価値ある行動へと置き換えること。例えば、性的欲求を詩や小説に表現することなどである。
  • 抑制 - 意識的な衝動を、意識的もしくはほぼ意識的に延期する。

その他、アクセプタンス、禁欲主義、勇気、感情の自己コントロール、感情的レジリエンス、許し、感謝、 謙虚、ユーモア、慈悲 マインドフルネス、節制、忍耐、尊敬、寛容など

まとめ

防衛機制は、精神的に成熟していれば常にレベル4の防衛機制を行うということではなく、状況やストレスの度合いによって防衛機制を使い分けているそうです。たとえば、がんを告知された患者にレベル1の防衛機制が見られるのは一般的なことです。

防衛機制は、何とかその状況に適応しようとする心の生存戦略であり、健全な人であっても下のレベルの防衛機制を使うこともあります。

ただし、未熟な防衛機制を使ってばかりいては、現実に適応していくのは難しくまた、人間関係におけるトラブルにもつながる可能性があります。さらには、防衛機制を使うことで向き合わないといけない問題を先送りにし、問題が膨れ上がることもあります。一時的には問題を見て見ぬ振りができ、ストレスから解放されたかのように見えたとしても、結局は解決するべき課題をため込んだ形になり、それが元で心の病気になることもあります。時には、防御機制を外し、逃げようとしている問題がなんであるのか、自分自身の行動や思考を振り返ってみてもいいかもしれません。

また、周囲に振り回す人がいる場合、その人の行動からどのレベルの防衛機制が働いているのかを理解し、そのレベルによっては改善が難しい場合があることも知っておく必要があります。

防衛機制を知ることは、自分自身が逃げている問題に直面して、ありのままの自分を知ることにも必要ですし、付き合いが難しい人と適切な距離を知るためにも必要なのだと思います。

問題行動を繰り返す人の中には、「相手から先に攻撃された」「相手に先に傷つけられた」「自分から逃げようとしたのが悪い」などといい、自分には非がないように言うことがあります。それはまさに、防御機制という「防御」の意識なのです。しかし防御機制の内容を見てもらえれば分かるように、低次元の防御機制を使ってばかりの人とは関係をうまく続けていくことはできません。また、防御機制は低次元のものほど「無意識」に行っているため彼らの行動を変えることは非常に難しいのです。

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