私自身、実体験から、モラハラ被害を相談したときに、人に理解してもらうことがいかに難しいかを知っています。また調停の場では、暴力や借金、浮気などと比べられ、モラハラでは「あなたの被害は軽い」とさえ思われてしまいます。
どうしたら、モラハラ被害が伝わるのか、私なりに考えてまとめてみました。
モラハラ被害が伝わらない原因は
恐怖感を与える相手の言動を再現することが難しい
私は、モラハラ被害が伝わりにくい原因の一つに、被害者側が話をするからというものが挙げられると考えています。
被害者が話すことによって、それは被害者の口調で被害者の声色で相手に伝わることになります。特に、加害者当人と会ったことのない人は、被害者が話した情報だけを元に想像します。そして、被害者が話すことによって、やわらかい口調や、優しい声色に変換されてしまうことになります。
もし、加害者が低いドスをきかせた声で大声で怒鳴りながら「お前は本当にバカだな!」というのと、被害者が「夫から『お前はほんとにバカだな!』と言われたの」というときの伝わり方は全く違います。前者では強い恐怖を感じますが、後者では被害者のやさしい声色がその恐怖感を相手に伝えることを難しくさせます。
被害を言葉だけで伝えることが難しい
私の夫は、クレーマーでもあり、窓口の人など私以外の人間も怒鳴ることでコントロールしていました。モラハラ加害者の中には、本当に怒りで人を支配することができる人がいます。おそらく、表情、怒気、声色など言語化しにくい部分が人をコントロールする材料になっていると思います。
私は同じことを真似することはできそうにもありません。ある意味、人に強い恐怖を与えるのは、夫の能力なのです。
しゃべっている言葉自体は暴言や罵倒にはあたらないものであっても、非言語メッセージによって人は恐怖に陥ります。この被害は、言語化しにくい部分です。
また、物を破壊する、大きな音を立てる、暴れるといったモラハラがあった場合、言葉以外の部分の恐怖を伝えることはますます難しくなります。
スキルや知識が必要
また、記憶や感覚を伝えようとするとき、どんな言葉を選ぶかによって印象が大きく変わってしまいます。自分の記憶や感覚を言語化するにはスキルが求められますし、モラハラ被害である場合、モラハラの知識も必要です。
しかし、多くの被害者はモラハラを受けるまでモラハラについて知識がないことの方が多く、受けた被害を適切に言語化できるかと言えば必ずしもそうではありません。
さらにモラハラ被害は、被害者だけではなく相談を受ける側にも知識がないと、正しい理解から遠ざかることがあります。
たとえば、やられっぱなしになる被害者に対して、「何故言い返さないの?」「なぜ言いなりになるの?」という言葉が投げかけられることがあります。モラハラがどんなものかを理解していない場合、被害者の言動が加害を招いていると誤解されてしまうことがあります。
では、相談者にモラハラ被害を理解してもらうためには、どうしたらいいのでしょうか?
録音した生の声、生の映像は真の理解を呼ぶ
モラハラ被害を真に理解してもらうためには、録音、録画を使い、相手がどんな様子でどんな声色でそのセリフを言っていたかを聞かせたり、見せることが有効であると私は、考えます。
いま、ボイスレコーダーはドライブレコーダーのように音声感知で録音が可能なものもあり、見つからない場所に隠しておくだけで証拠を確保できるものもあります。
特にモラハラの場合は、モラハラ加害者の外の顔と家庭内で見せる顔のギャップが大きすぎます。外のいい印象を持っている人たちにとっては、外の顔のままそのセリフを言っていることを想像することになります。その時点で、すでに被害者側と相談を受けた側に大きなギャップができてしまっています。
しかし、普通の人が小説の地の文のように修飾語を使ってモラハラ夫の様子まで伝えることは容易ではありません。非言語情報(言葉以外の相手の様子)を言葉で伝えるのは難しく、「セリフのみ」を伝えようとすればするほど、理解から遠ざかってしまいます。
生の映像や生の音声を使うことで、被害者のあなたが感じたことをそのまま疑似体験してもらうことができます。
私の夫は、二面性があり、表の顔をしているときはとても人から好かれる人でした。特に初対面での印象は抜群に良く、夫の様子から調停委員にモラハラ被害が理解してもらえないのではないかということを危惧していました。私の予想通りになり、調停は夫寄りに進行していました。調停委員も夫のことを「うつ病になった可哀そうな被害者」だと思っていたのだと思います。
しかしある時、なかなか思い通りに進まない調停に腹を立てた夫が、調停の場で怒鳴り散らしました。(私はその姿を見ることはありませんでしたが、そのあまりにも興奮した姿を調停委員から伝えられました。)
そして、調停委員も今までは「人当たりの良く、被害者である旦那さん」だと思っていた人物が、私の言うとおりに怒鳴り散らす短気な人物であることを目の当たりにし、評価が変わったのだと思います。最終的には、私の要求が認められ、その通り合意することができました。
自分で見て聞いたものは、どんな言葉よりも説得力があるのだとその時に実感しました。私の場合は、私が用意した証拠ではなく、夫自らの自爆だったわけですが、モラハラを記録した音声や映像も同じ効果があると感じています。
まとめ
- 被害者側が話すことによってフィルタがかかり、雰囲気が変わって伝わってしまう
- 良い人を演じている夫であればあるほど、外向きの姿の夫が言ったセリフとしてとらえられ真のモラハラ被害が伝わらない
- 映像や音声は、言葉以上に自分の被害状況を伝えることが可能
映像や音声は、証拠になるだけではなく、人を説得する強固な材料になります。調停や裁判を利用するときだけでなく、人に相談するときにもあると良いでしょう。
モラハラの証拠はあれば周囲に理解をしてもらう大きな助けとなりますが、最も重要なことは被害者の心身を守ることです。証拠を確保しようとしていることがバレると、加害者から更なる攻撃を受けることが予想されます。
何よりもまず安全性を確保することを最優先にしてください。
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