「養育費を支払ってもらうために、本当は嫌な面会交流を続けています。」
「面会を断ったら養育費の支払いが途切れるのではないかとビクビクして、断ることができません。」
お金を支払ってもらう立場とお金をもらう立場。
離婚後もこの関係に悩まされることは少なくはありません。
実際に、「養育費」と「面会交流」にはどのような関係があるのでしょうか?
1.国は子どもがいる場合の離婚では「養育費」と「面会交流」を話し合うように勧めている
養育費と面会交流については、現在調停で離婚をする場合、必ず調停員から話し合いをすすめられます。
それだけでなくこれから離婚をするカップルに「養育費」と「面会交流」の取り決めを周知できるように離婚届けにも変化が表われています。
1-1.新しくなった離婚届には「養育費」と「面会交流」のアンケートが記載されている
離婚届けに「面会交流」「養育費の分担」について取り決めをしているかどうかを記入する項目が平成24年4月から追加されるようになりました。
このように、国が養育費の支払いと面会交流の実施を推進する方向で進んでいます。
1-2.養育費や面会交流の相談先も案内される
離婚届けを出すときに上の二項目で「まだ決めていない」にチェックをした場合、役所から養育費相談の案内が渡されます。養育費に関する相談のほか、面会交流等の問題も含めた相談ができます。
また、厚生労働省の委託事業「養育費支援センター」という機関があります。
こちらはサイト上でも養育費や面会交流に関するQ&Aをまとめていますので、一度ご覧になると良いと思います。
厚生労働省の委託事業「養育費支援センター」:http://www.youikuhi-soudan.jp/
2.養育費の現状はほとんど支払われていない!
養育費の支払いは年収に関わらず支払われていない割合が実に全体の半分以上占めています。
2-1.平成28年 シングルマザーの養育費受給状況は?
下記のデータは平成28年に厚生労働省が行ったアンケートの結果です。
養育費を受け続けているのは、全体の約2割にとどまり、過去に養育費を受けたが、現在は受けていない「養育費を受けたことがある」が15.5%、一度も養育費を受け取ったことがない「養育費を受けたことがない」人は何と56%にも上ります。
平成23年の調査と比較すると、
「現在も養育費を受けている」 19.7% → 24.3%
「養育費を受けたことがある」 15.8% → 15.5%
「養育費を受けたことない」 60.7% → 56.0%
と数値を見ると受け取っている人はやや増加しているものの依然として低い状態が続いています。
2-2.全体の8割弱が3年以内に支払われなくなる。
また、こちらは別のデータですが、平成23年に養育費支援センターが実施したアンケート結果です。
「1年未満」34.6%、「3年未満」43.6%を合計すると、78.2%。
約8割弱が決めた養育費を3年以内に支払わなくなるという結果が出ています。
取り決めをしても、支払われなくなるパターンは約8割。ほとんどの人が支払わなくなるという驚異的な数字が出ています。
3.面会交流はどのくらい実施されているの?
3-1.シングルマザーの面会交流の実施状況は?
平成28年に厚生労働省が行ったアンケートの結果です。
面会交流の実施が続いているのは、29.8%で約3割にとどまり、面会交流を行っていたこともあったが現在は行われていない「面会交流を行ったことがある」が19.1%、一度も面会交流を行ったことがない人は46.3%と高い数値になりました。
離婚後、一度も別居親に会えない子どもは約半数もいるということが分かります。
4.離婚後に親の責務を果たす人は約3割
面会交流を行っている、養育費を受け取っているのはそれぞれ約3割であるということがアンケート結果から分かりました。
夫婦として別れた後も、お互いが親であるという意識を持ち続けることができる関係であれば、養育費、面会交流ともどちらも途切れることなく続いていくのかもしれません。
ただ、中には養育費は同居親が負担するべき、別れたのだから面会は一切拒否するという考え方の人もおり、離婚後の関係はそれぞれの(元)カップルで大きく違います。養育費を払うどころか、金の無心に来るケースさえもあります。
5.離婚後も「面会交流」と「養育費」は要求ができる
5-1.平成28年 シングルマザーの養育費の取り決め状況は?
「養育費の取り決めをしている」人は42.9%、「養育費の取り決めをしていない」人は54.2%と言う結果になりました。
5-2.平成28年 シングルマザーの面会交流の取り決め状況は?
「面会交流の取り決めをしている」人は24.1%、「面会交流の取り決めをしていない」人は70.3%と言う結果になりました。
離婚に当たって、面会交流と養育費の取り決めをしていないカップルは半数以上ということが分かります。面会交流においては、約7割が取り決めをしていません。
話し合いができなかったり、まずは離婚と言うことで条件を話し合わないまま離婚に至るカップルは多いようです。
離婚した後でも、面会交流と養育費は相手に請求することができます。
相手との話し合いが困難である場合には、調停制度や相談窓口を上手に活用してみましょう。
6.子どもの気持ちを優先させよう
養育費の支払いと面会交流の実施は別問題です。
養育費を支払わないからと言って面会交流を制限することはできませんし、子どもに会わせてもらえないからと言って養育費の支払いが免除になることはありません。
養育費と面会交流は、どちらも子どもの権利であり、子ども自身の考え方がまず一番に優先されるべきものです。子どもが別居親に会いたいと思うのであれば、子どもの気持ちを優先し、面会交流が行える環境を整えるのがいいでしょう。そして、貧困で育つ子どもがどのような思いをするのかも、親であれば考えなくてはいけません。
大切なのは、「子どもが健全に成長していくために親として何をするべきか」という視点を持って考えることではないでしょうか。
7.養育費の請求が今まで以上に確実に!
2020年4月から「民事執行法」が改正され、財産情報開示の幅が広がり、また迅速に差し押さえをすることができるようになりました。
詳しくはこちらの記事にまとめてあります。
8.海外では「親の責任」が重視されている
離婚後の養育費の支払いが全体の2割にとどまるという現状を皆さんはどう思われますでしょうか?
海外では公的な支援よりも親が我が子への養育義務を果たすことが求められており、何よりもまず親が養育費を支払うべきという考えが優先されています。
多くの国では「養育費立替制度」もしくは「養育費強制履行制度」が導入されています。
「養育費立替制度」では、別居親の養育費の支払いの有無にかかわらず国が養育費相当額を同居親に支払うという制度です。ドイツは「養育費立替制度」により養育費が支払われない場合だけではなく、最低金額未満の支払いの場合であっても養育費相当額が、満18歳まで支給されます。制度利用の給付期間制限はありません。
「養育費強制履行制度」は主にアメリカなどで導入されており、国が非居住者である親の居場所の特定、実親の確定、養育費の徴収を執行します。
日本でも親の養育責任を国の制度で保証し、多くの子どもが必要な養育費を受け取れるようになっていってほしいと思います。
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