自己愛性パーソナリティ障害は人に嫉妬を抱きやすいと言われています。
何が彼らの嫉妬を引き起こすのか、また嫉妬の感情が彼らにどんな行動を起こさせるのかについてまとめました。
自己愛性パーソナリティ障害は嫉妬しやすい
彼らの傲慢な態度は低い自尊心と表裏一体です。自信は不安を覆い隠すことを目的としています。
彼らは低い自尊心から身を守るため、他人から自己愛的供給を受け続けなくてはいけません。
嫉妬は持っているものを失う、奪われると感じることにより引き起こされます。自分よりも注目を集める人がいると自己愛的な供給を他人に奪われると思い、嫉妬の感情が沸き上がります。
また、自己愛性パーソナリティ障害の人の感情は不安定で波があります。彼らは、相手を傷つける意図がない場合でも暴言を吐くことがあります。たとえば、彼らが言う誇大な自己像が嘘であるということがバレたときなどです。
これは自己愛的傷つきと呼ばれ、自己愛性パーソナリティ障害の人の自尊心を傷つけます。
そしてこの傷つきの後、彼らは人に嫉妬しやすい状態になります。
2つの異なるナルシスト
自己愛性パーソナリティ障害には様々なタイプがあると考えられています。ここでは、2010年の研究により報告された2つのタイプを見ていきます。
- 尊大型ナルシスト…私たちが考える典型的なナルシストで、恐れを知らず、傲慢で外交的、自信に満ちているタイプ。ナルシストのように見える。
- 脆弱型ナルシスト…自尊心が低く、不安や落ち込みを感じやすいタイプ。控えめな性質を持っているためナルシストだと気がつきにくい。しばらく過ごすうちにナルシストの部分が現れる。
2020年に行われた「夫婦間における心理的虐待にかかわる脆弱型ナルシシズムと尊大型ナルシシズムの役割」の研究では、これら2つのタイプのナルシストが嫉妬を経験する傾向に与える影響も調査し、これが心理的虐待にどのように結びついているかについても調べました。
その結果、どちらのタイプもパートナーを心理的に虐待する傾向にありましたが、脆弱型ナルシストの方が尊大型ナルシストよりも嫉妬を経験していることが分かりました。さらに、脆弱型ナルシストにとって「嫉妬」が虐待をする主な原因となることも分かったのです。
嫉妬と虐待は関係がある
引き金①他人の成功や幸福
自己愛性パーソナリティ障害の人のある人に対する嫉妬がその人への虐待に繋がることは、パートナーとの関係でも同様で、パートナーの成功が自己愛性パーソナリティ障害の自己愛的傷つきを引き起こす可能性があります。たとえば、
- 妻が仕事で成功や昇進したとき
- パートナーが自分が以外の異性と連絡をしているとき、話しているとき
- 自分よりもパートナーが注目を集めていると感じたとき
- パートナーが自分より幸せであるとき
などに引き起こされます。
パートナー以外との関係では次のようなことです。
- 仕事のチームメンバーが上司から褒められたとき
- 子どもが自分が失った青春を謳歌しているとき
共感性が低く、周囲の人の喜びを分かち合うことが難しいことも嫉妬感情を悪化させます。
彼らは、自己陶酔的傷つきから身を守るために、他人の成功を無視したり無価値化します。
- 被害者の成功について興味を示さない、それについて話そうとしない
- 成功がそれほど素晴らしいものだと思わないという
- ただ運が良かっただけと言う
- 成功の努力をさりげなく台無しにするための策略を練る
例えば、親子の関係においては、子どもに対し高い成果を求めるのにもかかわらず、子が努力をし何かを成し遂げようとする(成し遂げた)ときに、それを台無しにするようなことをする可能性があります。自己愛性パーソナリティ障害の親を持つ場合、子どもは人生の成功や経歴を積み重ねていくことが難しいかもしれません。
引き金②恋愛関係の不安
自己愛性パーソナリティ障害は愛着障害との関連性が指摘されており、人との密な関係を築くことに困難があります。そのため、恋愛関係に対する潜在的な脅威(浮気、別れ)に対する警戒心が強く、パートナーに対して嫉妬の感情を抱きやすい可能性があります。
そうした脅威から自分を守ろうとして、パートナーとの関係では、より支配的になり、より孤立し、より批判的になる可能性が高いと考えられます。
彼らの一部の人がパートナーが離れていく理由に(真偽定かでない)浮気を挙げることからも、恋愛関係の潜在的な脅威に対しての不安の強さが読み取れます。
これらの結果は、脆弱型ナルシストが対人関係において高い不安を経験し、分離シグナルに非常に敏感で、分離時に大きな苦痛を感じることを強調した先行研究を考慮することで理解できる。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31652110/
自己愛性パーソナリティ障害はパートナーへ嫉妬を煽るような行動をする
また彼らは、自分が相手に嫉妬するだけではなく、相手から自分への嫉妬を煽るような行動をとることがあります。
たとえば、浮気や不倫、他の人との関係をほのめかすなどです。パートナーに対しわざと関係を脅かすような行動をとります。
その大きな理由は次のようであると考えられています。
- 嫉妬を受けることにより自尊感情を高める
- 自分を嫉妬させるような行動をとったことによるパートナーへの復讐
- パートナーからの愛情のテスト
- 試し行動
まとめ
彼らは関係への脅威に非常に敏感で、嫉妬の感情が簡単に沸き上がります。そしてその時に、パートナーを激しく攻撃することが分かりました。嫉妬は心理的虐待の引き金になります。
彼らにとって自尊心を高めてくれたり、アクセサリーとして見栄えが良いと思っていたパートナーの魅力でさえもいずれ彼らの嫉妬の原因に代わる可能性も考えられます。
自己愛性パーソナリティ障害の攻撃は、基本的に自己愛が傷ついた時の反応の「巻き添え」です。 被害者は彼らの負の感情への反応をするときに「たまたま側にいた」ために攻撃を受けることになったと考えられます。
彼らの心のうちに真の原因があります。
私は、自己愛性パーソナリティ障害とパートナーの関係は、彼らが本性を表しただけではなく、次第にひどく敵対視する関係に陥っていくと考えています。下記の記事では依存の方向から攻撃のエスカレートを分析しています。
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