自己愛性パーソナリティ障害の人が集団にいると、その集団の全員が扇動されて、たった一人の自己愛性パーソナリティ障害によって集団の全ての人間関係が壊されてしまうことがあります。サークルクラッシャーという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います。クラッシャーという名の通り、彼らは人間関係の破壊者です。
彼らの行動を注意深く観察するとともに、彼らの心理操作の手法を見抜くことが求められます。
手法を知ることは、自分が間違って加害行為に加担しないためにも必要なことです。
トライアンギュレーションとは?
トライアンギュレーションとは、自己愛性パーソナリティ障害の人が使用する心理操作の手法の1つであり、機能不全家庭内でよく起こりますが、友人関係、恋人関係、同僚などほぼすべての人間関係において現れると言われています。自己愛性パーソナリティ障害の人は、あからさまな虐待よりもガスライティングや投影性同一視、トライアンギュレーションといった心理操作の手法をよく使います。
トライアンギュレーションとは、あなたとのコミュニケーションに第三者を巻き込むことです。これにより、自己愛性パーソナリティ障害の人は、嫉妬を煽ったり人同士を競争させることによって、ターゲットと巻き込んだ第三者の両方から自己陶酔的なエネルギーの供給を受けることができます。
トライアンギュレーションの具体例
- 第三者と絶え間なく比較する
- 誰かとの対立にあなたを巻き込む(もしくはその逆)
- 第三者を通じてあなたへのメッセージを伝聞する
- 第三者に自己愛性パーソナリティ障害の人の言動を正当化させる
- あなたと第三者を敵対させるような言葉を吹き込む
何の目的でトライアンギュレーションを使うのか?
トライアンギュレーションは、彼らが優位を示すために使用されます。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、常に自分に注目や注意を集めたいと思っていますが、人が常に誰か一人の人に注目しているという状況を維持することは難しいでしょう。もしあなたからの注目や注意が減ってしまったと感じたとき、彼らは自分に注意を向けるために心理操作を使用します。
1対1の構造を2対1にすることで団結し、数の多い自分たちの方が優れている、正しいと感じることができるのも目的の一つです。
- 自分へ対立や緊張の矛先を逸らす
- 元の問題から注意をそらすために別の問題をつくる
- 自分の正当性の誇示、優越性の維持のため
- ターゲットのコントロールを維持するため
- 自己陶酔的なエネルギーを得るため
- 被害者の弱体化のため
- 彼らに有利になるように議論の力関係を操作する
トライアンギュレーションにおける3つのパターン
スティーブン・B・カープマンはトラアンギュレーションには次のような一貫した役割が現れるとしています。
- 迫害者…脅し、誹謗中傷、個人攻撃などを使用し、誰が「悪者」であるかを誘導します。
- 犠牲者…自己愛性パーソナリティ障害の人が担うことが多いと言われています。自分は誰かに利用されており自分は誰かの助けを必要としていると主張します。自分の言動の責任を誰かに押し付けようとする意図があります。
- 仲裁者…通常は、自己愛性パーソナリティ障害のサポート役がこの役割を担いますが、優越感を得るために自己陶酔的な人がこのポジションにつくこともあります。サポート役がこの役割である場合、彼らは自己愛性パーソナリティ障害の人の負の感情や責任を背負わされます。
親子におけるトライアンギュレーション
夫婦間の対立に第三者を巻き込み問題を大きくすることがあります。たとえば、両親を呼び寄せて3対1という構図を作り上げると言ったことです。また、子どもに「どちらが正しいと思う?」と聞いて対立に巻き込みます。
自己陶酔的な親である場合、親は子どもの愛を買うために次のような手段を取ることがあります。
- もう一人の親が許可しないことを許可する(ゲームやり放題など)
- 自分の責任はもう一人の親にあるという
- 教育のために必要な制限、ルールを無視する(歯磨きをしなくていいなど)
- 子どもを通じてのみメッセージを伝える
- 子どもからもう一人の親についての情報を聞き出す(その情報を後でもう一人の親への攻撃の材料とする)
自己陶酔的な親は、子どもともう一人の親を対立させることがよくあると考えられています。
兄弟におけるトライアンギュレーション
子ども間での分断を招くこともあります。自己陶酔的な親は、何人かいる子どものうちに「ゴールデンチャイルド(お気に入り)」と「スケープゴート」をつくって育てます。いわゆる「愛玩子」と「搾取子」です。
自己陶酔的な親は白黒思考で「いい面」を「愛玩子」に「悪い面」を「搾取子」にそれぞれ投影します。その結果、一方の子どもはすべてがよく、もう一方の子どもはすべてが悪いと見なされます。
スケープゴートである搾取子は親を幸せに保つために献身的に働き続けます。
自己陶酔的な親は、時には搾取子を可愛がって愛玩子の価値を下げ、交互に競わせることもあるかもしれません。
もしくは搾取子に愛玩子のように愛や関心を得たければもっと努力するように言うかもしれません。
いずれの場合においても、差別と競争的な関係は無くなりません。
さらには、自己陶酔的な親は孫の代にもトライアンギュレーションを行う可能性があります。たとえば、愛玩子の子どもは可愛がり、搾取子の子どもは虐げると言ったことが行われます。誕生日プレゼントや節目の祝い、遊び方や態度にもその差が現れる可能性があります。
彼らに子ども(孫)を愛してもらえるように働きかけるのではなく、適切なタイミングで離れることが必要です。
恋人におけるトライアンギュレーション
別れた後、「もうあなたを放っておかない」、「復縁したい」とにおわせるをすることで、元恋人の注意・関心を引こうとするようなことです。これは、現恋人と元恋人を争わせるような方法で自己陶酔的エネルギーを奪うためです。
彼ら自身の母親に対して、(本当はそんな事実もない)恋人やパートナーからひどい仕打ちを受けていると嘘を吹聴することもあります。
議論の場に第三者を介入させ、自分の味方に付くように言うこともあります。
トライアンギュレーションを受けているかもしれない兆候
トライアンギュレーションを受けているときにあらわれる兆候です。
- 1対1の会話や意見の相違が2対1や多対1の構図に変わる
- 突然、仲間外れにされる。
- いつの間にか別の人と対峙している
- 誰かと対峙しているが、その原因が定かではない
- 本来の問題ではないことが問題視されている
- 自分の悪いうわさが流されている
- 誰かを介さなければコミュニケーションを取れない相手がいる
- 自分以外の人の責任を背負わされている
対処法
トライアンギュレーションは被害者の弱体化のため、被害者を粗末に扱うことで優越性を得るために意図的に行われます。
まず、自己愛性パーソナリティ障害の人は自己の脆弱性から逃れるため、防衛機制の一つとして心理操作を行うことを覚えておく必要があります。
意図を見抜きゲームに参加しないと意思表示する
もしトライアンギュレーションを受けていたとしたら、その意図を見抜いてください。彼らはあなたの立場を悪くしたり、あなたに努力をさせることで自分への利益を受け取ろうとしてします。
またこれらの心理操作を理解したら、そのゲームに参加しないことです。
たとえば嫉妬を煽るために誰かとの比較をされた場合には、その比較や評価が何の意味もないことだと表明しましょう。たとえ彼らから良い評価をもらったとしても、それはいずれもしくはすぐに撤回され、評価を受けることに価値がないからです。
被害を無くすためには支配から抜け出すことが必要です。
直接会話する
トライアンギュレーションは、人間関係の分断を煽る戦術として使われることもあり、人と人との仲を破壊します。この時、一人の人が意図的に関係の分断を招いています。
自己愛性パーソナリティ障害の人は人と人との対立を煽るために言ってもいない悪口を言いふらすことがあります。
たとえば、自己愛性パーソナリティ障害の人がAさんとBさんの仲に嫉妬をしていた場合、Aさんには「Bさんがあなたの悪口を言っていた」と言い、Bさんには「Aさんがあなたの悪口を言っていた」と言います。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、仲のいい関係を壊し自分がそのポジションに収まることで両者から自己陶酔的なエネルギーを得ようとします。
もし悪口の伝聞を聞いたのであれば、その場で悪口に対して反応することは避け、真実を確認するために相手と会話をすることです。この際に自分が相手との関係を良好に保ちたいこと、伝聞までのストーリーを詳細に話せると良いでしょう。また伝聞してきた人の名前は出さない方がベターです。
悪口にあおられて自己愛性パーソナリティ障害の人に更なるゴシップを提供しないようにしましょう。誠実に対応することは、あなたの立場を守ることに繋がります。
中にはゴシップが好きな人もいて、完全に噂を払拭することが難しいかもしれません。しかし、同じような被害者は実は声をあげていないだけで周囲にいる可能性があります。話を通じて、その人達と連帯したり、支援や支持を得ることができると私は考えます。
感情的な反応を避ける
トライアンギュレーションは、あなたから自己陶酔的なエネルギーを得るために仕掛けられています。彼らの意図に従わないためにも感情的に反応することは避けましょう。感情的な反応をすれば彼らの欲求を満たしてしまうことに繋がり、彼らが自己陶酔的エネルギーが欲しい時毎に攻撃を仕掛けられるようになるかもしれません。
彼らの心理操作に関与しないことは境界を維持するためにも有効です。
境界を設定し、さらなる操作を受けないようにする
競争に巻き込まれないために個人的な情報を提供しないようにし境界を守りましょう。
自己愛性パーソナリティ障害の人を見抜いたら、彼らと二人きりにならないようにしましょう。親密さを装ってあなたの味方のように近づいてくる人については一層警戒をしておくに越したことはありません。
特にあなたの個人的な情報をやたらと聞き出そうとする人には注意が必要です。
もし「あれ?」と思うことがあれば「話したくない」旨を伝え、それでも相手が引き下がらなければ距離を取ることを考えたほうがいいでしょう。
「もし○○しないなら○○になるよ」というあなたをコントロールしようとする言葉は無視しましょう。無視が難しければ信頼できる人に相談をしましょう。
また、あなたが加害行為を助長したり加担しないために、人の秘密についても守りましょう。
まとめ
毒親の居る機能不全家庭では、親子間の関係だけではなく、兄弟間の関係まで壊されてしまうことがあります。また友人やグループの中に自己愛性パーソナリティ障害の人がいた場合、その関係の全てが破壊されバラバラになってしまうこともあります。特定のグループ内での争いが多い場合、それを扇動する心理操作が行われていないか注視しなければいけません。
自己愛性パーソナリティ障害の人が使うその他の心理操作の手法については、こちらの記事にまとめています。↓
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