調停離婚をするときに、気にして欲しいのは「評価の違い」についてです。特に、借金や浮気、DVと違って物的な証拠が残りにくいモラハラは、この「評価の違い」によって大きく印象が左右されてしまいます。そして被害者の言い分と、加害者の言い分が違うのはこの「評価の違い」のせいであると片付けられてしまい、真の被害が伝わらないという問題が起こります。
評価の違いとは何か?また、評価の違いを無くすためにはどのように説明をしたらいいのかをまとめました。
評価の違いとは?
同じできごとに対して、一方はこう思ったけれどもう一方はそうは思わずに違う印象を持ったというようなとき、物事に対する評価が異なる(違う)という言い方をします。たとえば、DVの被害において、被害者側が「殴られた」と主張するのに対し、加害者側が「ツッコミのように軽く叩いただけだった」というのは、同じ行為に対する「評価が違う」ということになります。こういったやり取りは、裁判などでもよく見かけられます。
DVの場合では、被害の程度がハッキリとわかるため、「骨折」など大けがをしているのに「ツッコミのつもりだった」という加害者の言い分は通用しません。明らかに怪我をさせる意図で殴っていなければ、骨が折れるほどの大けがにはつながらないからです。
モラハラでも、被害者側が「日常的に暴言を吐かれた」と主張しても、加害者が「そんなつもりはなかった。相手が悪くとらえられている」と主張することがあります。(まず、暴言自体を認めないことがほとんどですが、暴言があった証拠を出したところで、そんな意図はなかったと事実を捻じ曲げます。)そしてDVと違ってモラハラの場合は、怪我の大きさなどの物的証拠が残らないため、被害の程度がハッキリと分からないのです。もし、加害者側が「そんなつもりではなかった」と主張してくると、明らかにこちらを貶めるためについた暴言であったとしても、相手の悪意を証明するのは難しくなってしまいます。
評価の違いではないことを理解してもらうためには?
調停では、「評価の違い」が原因ではないかと見なされ、調停委員に被害が上手く伝わらないことがあるということをよく覚えておいてください。たとえ調停委員から「あなたも悪くとりすぎたのでは?」と言われても動揺しないことです。そして、その一言でめげてしまい、話すことをやめてしまっては、あなたが被った被害はなかったことになってしまいます。
モラハラ加害者は、自分が行った悪いこともニュアンスを捻じ曲げて正当化します。たとえば、「なにもしないだらしない妻を教育したかった。少し言い過ぎた」のように言ってくることがあります。それを聞いた調停委員も「旦那さんも反省しているし、許してあげては?」とか「お互い様だったのでは?」と歩み寄るようにあなたを説得してくるかもしれません。しかし、本当に反省しているわけではないため、また同じことを繰り返すだけです。そしてお互いが「そんなつもりはなかった」「そうではなかった」と話をしても水掛け論となり、調停は一向に進展していかないでしょう。
評価の違いとして判断されてしまうのは、「俺はこういうつもりだった」「私はこういう風に受け取った」という主観的視点が原因です。
つまり客観的視点を加えて話をすれば、「悪くとらえていたことが原因でない」と伝わり、調停委員の印象が変わる可能性があります。
主観的視点「私はこう思う」という解釈 → 客観的視点「こうだった」という事実
客観的視点での話し方とは?
それは、「私はこう思った」ではなく、「こういうことは良くない行為だ」と言う主張に変えることです。
多くの被害者の人は長期間モラハラを受けてしまっているためにモラハラを「普通のこと」や「夫婦喧嘩の延長」だと誤って認識しています。しかし、モラハラは普通ではありませんし、やってはいけないことです。そして、モラハラが普通でないのは、「頻度、回数、程度、理由」などが普通とは違うからです。
たとえば、怒ることは誰にでもあることですが、モラハラの場合はその怒る基準があまりにも低すぎたり、怒る回数が極端に多かったり、怒る時間が極端に長い、怒り方が普通ではないという特徴があります。
こういう普通とは異なる点をピックアップして「客観的事実」として主張に盛り込みましょう。
たとえば
「夫に料理を捨てられた」
というだけではなく
「食卓にソースが並んでいなかったことに腹を立てた夫に料理を捨てられた」
の方が異常さが伝わりやすいでしょう。普通の人であれば、食卓にソースが並んでいなかったことで料理を捨てるほど怒り出すことはありえないからです。
夫の怒りやモラハラ行為には、普通とは違う異常さがあったことをしっかりと主張の中に盛り込みましょう。
モラハラ相手には証拠を出すのは慎重に!
モラハラ夫は、外面がよく社会的地位も高い人が多いため、自分のモラハラが他の人にバレることを非常に嫌がります。最後まで「あくまでも妻が悪く、自分は正しい行いをしていた」というスタンスを貫き通そうとします。しかし、モラハラをしているときの様子は明らかに表の顔と違うため、その様子を記録した証拠が出てくると自分に不利になることもよく分かっています。なるべく証拠を晒したくないと思っているのです。
「証拠を出す」ことを伝えれば、出されたくないと考えているモラハラ夫の態度が急変し、こちらの言い分を飲んで早期解決につながることもあります。そのため、「証拠」は交渉のカードとして使うことができる可能性が非常に高く、いざというときのために取っておくほうが有利に働きます。
離婚を考えている人は、必ずモラハラの証拠を録音や録画という方法で残しておきましょう。そして、最初から証拠を出すのではなく、相手の出方を見てから証拠を使うかどうかをよく考えてください。
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