HSPとは、人いちばい繊細な人たちのことを言います。
そして、このHSPという気質を持ち合わせている人は、モラハラ加害者からターゲットに選ばれやすく、さらに被害に遭ったときにはより深刻な被害を受けやすいと考えられます。
HSPとは何か、そしてなぜHSPがモラハラ被害者に選ばれやすいのか、被害が大きくなりやすいのか、どうしたらいいのかをまとめました。
HSPとは?
HSP(ひといちばい敏感な人)とは、Highly Sensitive Personの頭文字を合わせた言葉です。子どもの場合は、Highly Sensitive ChildでHSCと表記します。
人口のおよそ2割ほどいるといわれており、人よりも繊細で過敏な気質を持ち合わせています。よくいう「感受性が高い」人はこれに当てはまると考えられます。面白いことに、HSPは、人間以外の生物にも存在する気質だそうです。
また、HSPの中でも70%は内向的であるのに対し、30%は外交的であるという研究結果もあるそうです。つまり、HSPは内向的なことを指しているわけではありません。
HSPはその繊細な気質が残りの8割の人に理解されにくく、生きづらさを抱えやすいと言われています。
HSP(HSC)はどんな性格なの?特徴は?
HSPの人は、どんな性格を持っているのでしょうか。その特徴を見てみましょう。
- 人の気持ちを察する能力が高く、気配り上手である
- テレビドラマや小説などに感情移入しやすく、涙もろい
- 想像力が高く、空想の世界で遊ぶことができる
- 周囲の些細な変化(匂い、音、光)によく気がつく
- 刺激に敏感に反応するため、疲れやすい
- じっくりと観察、武関することができ、鋭い観察力や思考力を持つ
- 静かな環境を好む
- 念密なスケジュールを立て、それを実行することができる
- 集団になかなか入っていけない、しばらく様子をうかがっている
- 公平であり、人の気持ちを汲んで行動する
- 競争が苦手であり、緊張する場面では本来の実力を発揮できないことがある
- 多彩で多趣味な人が多い
- 危険をいち早く察知する
なぜHSPになるの?
HSPになる原因は、遺伝が関係しています。両親のうちのどちらか(もしくは両方)がHSPである場合、それ以外にも遺伝子が組み合わさってHSPになると考えられています。
親の育て方ではなく、生まれ持った気質でHSPかどうかが決まります。つまり、HSPの子ども(HSC)は赤ちゃんの内からひといちばい敏感で、繊細です。
そして、HSPの人は脳のセロトニンとドーパミンにかかわる遺伝子の変異が知られています。また、脳の中の扁桃体という部分の動きが活発であり、不安を感じやすいことや神経を高ぶらせる「ノルエピネフリン」というホルモンの分泌が多いということも分かっています。
HSPはいわゆる高性能のセンサーを搭載した脳と言えるでしょう。そのため、周囲の変化や周囲からの影響を受けやすく、過敏になったり不安や警戒を抱えやすいのです。
うちの子はもしかしたらHSC(HSP)?
HSPやHSCは、遺伝的な脳の働きの特徴によるもののため、この特性は赤ちゃんの頃から見られます。たとえば、HSCの赤ちゃんは、音のうるさい場所に行くと泣き止まなかったり、人が多い場所を嫌ったり、寝つきが悪いといった特徴を持っています。
家の中では普通なのに、外出するのが大変である、人見知りが強い、音や光に過剰に反応する、環境が変化すると泣くといった赤ちゃんはHSCの可能性があります。
HSPは医学用語ではありません。そのためクリニックなどでHSPという診断が下ることはありません。
自分がHSPかどうか知りたいと思った方は、基本的には自己判断になります。
HSPは生まれ持った性質のため、まず幼少期から繊細さを持ち合わせていて変わらないということ、また上記について当てはまっているかどうかをチェックしてみてご自身で判断してください。
またHSPに関する書籍などを参考にされるのも良いでしょう。
HSPがモラハラのターゲットとなるのはなぜ?
さて、なぜ上で述べたようなHSPの気質の人がモラハラのターゲットとして選ばれやすいのでしょうか。
1.気遣いができるためモラハラ加害者の要求を叶えてしまう
HSPの人は直観力が高いため、周囲の雰囲気を読むことに長けています。また自分の気持ちよりも相手の心地よさを優先し、行動する傾向にあります。
モラハラ加害者が不機嫌なことに気が付くと、その不機嫌の原因を取り除こうと気遣ったり、自らの振る舞いを変えたり、モラハラ加害者の言うとおりにふるまおうと努力してしまうのです。モラハラ加害者はモラハラによって自分の要求が叶うことを学習すると次第にモラハラがエスカレートしていきます。
2.モラハラ行為に動揺してしまうため、モラハラ加害者を喜ばせる
本当は、モラハラ行為を受けた時は感情を表に出さずに冷静に対処することが一番望ましい方法です。モラハラ加害者の中には、被害者の苦痛や悲しみと言った感情を好み、その姿を見て支配欲や所有欲を満たすために繰り返しモラハラをする人がいます。
HSPの人の感情は表に出やすく、すぐに涙を流したり、悲しさを表現してしまいます。さらに、モラハラ行為によって苦痛を受けているHSPの人にとって、動揺せずにモラハラ加害者と対峙することは難しいといえます。
そのため、モラハラ加害者にとって格好のターゲットになりやすいのです。
3.モラハラ夫が怖い、逆らえない
モラハラ加害者の不機嫌アピールやモラハラ行為をスルーすることがモラハラ対策として有効であることはよく知られています。しかし、HSPの人は、普通の人よりも強くモラハラ加害者への恐怖心を持つために、モラハラ加害者の言動をスルーすることが難しくなります。
4.モラハラにひどく傷つく
また、公平公正を愛するHSPの人は、自分も人を公平に扱いますが、人からも自分を公平に扱ってほしいと望んでいます。しかし、モラハラ加害者は自分は良くても他人はダメ、といったダブルスタンダードの持ち主です。公平に扱われないことでHSPの人は深く傷つき、モラハラにより深刻なダメージを受けます。
5.加害者に同情しやすい
モラハラ加害者は、常に「自分は被害者である」と思っています。モラハラをすることすら被害者の責任だと思っています。共感性が高く、人の気持ちを汲むことが上手なHSPの人はモラハラ加害者に同情しやすく、その結果、「モラハラ加害者は悪くない」と誤った認識をしてしまいがちです。被害に遭っているのは自分なのにそのことに気づかないまま、長いこと被害者になってしまう可能性があります。
さらに、モラハラ加害者は自分に同情してくれる人を好むため、モラハラをするターゲットに選ばれやすいと言えます。
6.相手の弱点を好むモラハラ加害者に生きづらさを攻撃されやすい
また、HSPの人はその過敏さから生きづらさを抱えやすいと言われています。モラハラ加害者は被害者の欠点を執拗に攻撃するため、弱点が分かりやすい人はターゲットにされやすくなります。
もちろん、HSPは欠点であるとは言えません。多数派ではないため、その過敏性が人に理解されないことが生きづらさにつながるというだけです。しかし、本人はその生きづらさを自分の弱点だと思っていることがあります。そしてこの特性は生まれつきであり、本人が苦しんでいたとしても変えることができるものではありません。
モラハラ加害者は、その苦しみを「努力が足りないせい」だとか「しつけが悪い」とか「おかしい」という理由をでっちあげ、執拗に責める材料にするのです。
7.人に対して攻撃的になれず、攻撃ばかりを受け続ける
HSPの人は、人に暴言を吐いてしまうとそれが罪悪感に繋がり、かえって自分を苦しめてしまう人です。普段からうっかりと失言をしてしまい、相手を傷つけてしまわないように気を付けています。
そのため、モラハラ加害者から暴言を受けても相手に言い返すことができません。一方的に言われっぱなしになってしまいます。
モラハラ加害者は何も言い返さず、自分を傷つけることがないHSPの人を、自分の支配欲のために利用するだけ利用しようとします。
8.親子間でモラハラが行われる場合、HSCの子がターゲットになりやすい
子どもが複数人いる場合、モラハラのターゲットとなりやすいのは、HSCの子であると考えられます。それは、HSCの子ほどモラハラ親にとって支配欲や自尊心を刺激してくれる好みの反応を返してくれるからです。
また、HSCの子は、過敏で傷つきやすいため、モラハラ親からの不適切な育児の影響を強く引き継ぎやすい性質でもあると言えます。子どもがHSCの場合は、特に注意をしてあげる必要があるでしょう。
被害に遭ってしまったときの対処法
自分の気質が相手を怒らせているわけではないことを理解する
HSPは気質からターゲットに選ばれやすいと考えられていますが、決して、HSP気質の人の言動が相手のモラハラを引き出しているわけではありません。
モラハラ加害者は、どんな人であったとしても一定以上の関係ではモラハラが発動することが分かっています。
自分を責めやすいHSPの人は、まずはこの認識を正しくして、自己否定に陥らないようにしましょう。
無理に戦おうとしない
HSPの気質を持っている人は、人と争うことを苦手とします。モラハラ加害者に対しても同じであり、戦おうとすること、争いの中に入っていくことが本人を疲労させてしまいます。
まず自分が安心安全に過ごせる場所を見つけて、そこに移動することが先決です。
自分の中でルールを決めておく
ルールを守ること、秩序があることに安心を覚えるHSPの人は、相手からモラハラを受けた時の自分ルールをあらかじめて決めておくと良いでしょう。
たとえば、
相手の言動がHSPの人をひどく刺激するときなど、動揺が大きい時は、その場から離れることを優先させる。
気持ちがまとまらないときは、相手と対話しない。
同じモラハラを2回連続で受けたら偶然ではないと考えて人に相談する。
行動してもモラハラが止まないのであれば離れる。
と言ったことをあらかじめ決めておくことで、被害をなあなあにせずに行動に移すことができると考えられます。
まとめ
HSPの人は、モラハラ加害者の格好の餌食となりやすいことをあらかじめ理解しておくと良いでしょう。
そして、HSPの人はその過敏な気質から、より深刻な被害を受けやすいと考えられます。
被害が大きくなる前に被害を相談し、早めに自分を守るための手を打ってくださいね。
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