モラハラ加害者の考え方は、一般的な考え方から著しく外れているために社会的な障害をもたらします。対人関係がうまくいかなかったり、頻繁に人と衝突したり、集団から孤立します。
モラハラ加害者は、モラハラ環境に適応した人だと私は考えています。彼らは、幼少期からモラハラやネグレクト、虐待、トラウマ体験、過保護・過干渉などを受けてきて、そのつらい環境に適応するために「モラハラ」を取得しなくてはならなかったのです。
モラハラや虐待、ネグレクトと言った環境では、親から適切な愛情を得ることができません。過保護・過干渉でも、子どもに対して親から過度な期待を押し付けられているのと同じです。どちらも大きな力によって、子どもの本来の成長を抑えつけようとするものです。
子どもは、自分を押し込め、親の望むように「自らを変えよう」とします。
その時にあるがままの心の発達はストップしてしまいます。
モラハラ加害者たちの心が未発達な理由と、再び発達を促すには何をすればいいのかをまとめました。
モラハラを受けると心の発達が止まり、精神年齢が幼くなる?
心の発達を促すのは周囲から「ありのままを認めてもらえる」という環境
カウンセラーの人の話によれば、心の発達は「ありのままの自分」を受け入れてもらえて初めて発達をしていくそうです。
親や周囲から「こうしなさい」「ああしなさい」と強い力を加えられると、発達はその強い力によって抑えられてしまい、そこで成長がストップしてしまいます。例えるのならば、足のサイズよりも小さい靴を履き続けていたら、足が成長していかないようなものです。
力が加えられた時の年齢から発達していかない
モラハラ夫の振る舞いを見ているときに、イヤイヤ期の子どものような振る舞いに似ているのではないかと思うことがありませんか?
イヤイヤ期のころは、機嫌を損ねる出来事があると、どんな言葉も耳には届かず、一方的に自分の「嫌だ」という気持ちだけを繰り返します。そして、物に当たる、叩く、寝転がる、大きな声を出すと言った言葉以外の方法で、自分のイライラを伝えようとします。周囲に自分の機嫌を取ってもらおうと働きかけます。
しかし、母親や養育者から適切な働きかけをしてもらうことで、発達課題を乗り越え、次第に自分の「嫌だ」という気持ちを言葉にして伝えられるようになっていきます。
この時に、発達課題をクリアできない、圧力によって抑圧されてしまうと、本来成長していく心の発達を止め、未発達のままになります。
その結果、大人になっても2歳児のような振る舞いをしてしまうのです。
子どものころにモラハラを受けるのと、大人になってからモラハラを受けるのでは影響力が違う
原因をモラハラだけに絞って考えるのであれば、発達途中においてモラハラを受けるのと、発達が終わってからモラハラを受けるのとでは、のち人生に与える影響は異なってきます。
すでに発達を終えている大人であれば、モラハラ環境から抜け出すことができ、心が回復していけばまた以前のように戻るでしょう。(脳への影響がある場合はその限りではありません。)
しかし、子どもの場合は発達が止まってしまうことがあるため、未発達の心を成長させる働きかけが必要になります。
自己主張・自己表現は2歳から 我慢ができるのが4、5歳から ではモラハラ夫は何歳?
イヤイヤ期は、第一次反抗期とも呼ばれ、親と自分は別の人間であることを理解し、自己主張を始める時期です。
もし、この時期に親から「反抗するなんてかわいくない子ね!」とか「親に逆らうのか!」「そんな態度だったらもう知らない!勝手にしなさい!」と言われたらどうなるのでしょうか?
イヤイヤ期が過ぎれば、多くの子どもは自分の気持ちをコントロールできるようになり、親と意見が違ったときにでも「イヤイヤ」ではなく言葉で伝えればいいことを理解し、そのように行動できるようになります。
一方で、親から反抗を押さえつけられた子どもは、心の奥底で自らの気持ちを我慢するようになります。我慢をするので、一見してイヤイヤ期は過ぎ去ったかのように見えます。しかし、心の奥底には消化されない怒りや悲しみが蓄積していっているのです。
そして、我慢ができるようになり、友だちや集団で遊んだり、協力ができるようになるなど社会性が身についてくるのが4、5歳ごろからと言われています。
この時には、自分の「あれやりたい!」「これやりたい!」という気持ちと、社会との折り合いを自分の中でつけていくことができるようになったということです。
たとえば、「私が持っているおもちゃを貸すから(譲歩)、あなたのおもちゃを貸して(依頼)」というギブアンドテイクのようなかかわり方もできるようになります。
これは、
1.相手の気持ちを理解でき、
2.なおかつ相手の心を動かすにはどういった働きかけをしなくてはいけないのかを推論し、
4.そしてそのために自分が多少の損をしても良いと思える、
3つの心の発達が必要です。
共感と自己コントロールができないとすることはできません。
多くのモラハラ加害者は、交渉ができません。友達のおもちゃを借りるために、「自分が損をする」ということができないのです。
なにがなんでも自分が勝つことにこだわり、一歩も譲ることがない、それは4、5歳の発達段階をクリアしていないということです。
モラハラ夫は、夫婦喧嘩や離婚においても、自分にばかり都合のいい条件を提示する傾向にあります。自分が譲るという発達段階をクリアしていないために、そもそも「交渉」の能力がありません。イヤイヤ期の2歳児に話しても分かってもらえないのと同じであると考えてもらえば、理解できると思います。話せばわかってもらえると考えては捨て、未発達の段階がどのくらいであるのかを慎重に見極めることが必要です。
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未発達の心を成長させるためには?
大きな力で押さえつけられて発達できなかった心は、未熟なままもう成長することができないのでしょうか?
いいえ、そうではありません。
心理学には、「インナーチャイルド」という言葉があります。これは、そのままでは「内なる子ども」という意味ですが、傷ついた子どもの頃の心のことを指すとも言われています。
ステップ①インナーチャイルドを知る、自覚する
まずは、この「インナーチャイルド」を知ることが重要です。特に、モラハラ加害者の中には、親との関係が良好であると思っている人がおり、自分が傷つけられてきた現実に目を背けている場合があります。この場合は、「インナーチャイルド」に無自覚で、さらには自分で自分の傷ついた心を否定しています。
自分の気持ちを無視し続けている限り、心の発達は望めません。
ステップ②傷ついた過去のできごとを振り返る
思い出をできる限り振り返りましょう。もし、本当に思い出せないのであれば、インナーチャイルドに固執することなく諦めたほうがいいかもしれません。そこには思い出さないほうがいいような過去が眠っている可能性もあります。
傷ついた過去の出来事を振り返ってみたとき、その時の自分がどんな気持ちでいたかを思い出してみてください。
泣いていましたか?
苦しんでいましたか?
なにかを訴えていましたか?
その声に、耳を傾けてみましょう。
ステップ③傷ついた気持ちを代弁する
ステップ②で幼いころの自分自身の気持ちを振り返りました。その気持ちをそのまま、受け止めてあげてください。そして、大人になった今はその時抑えていた気持ちを表現できるようになっているはずです。
幼く、気持ちを押し込めてしまった子ども時代の自分の代わりに、今のあなたがその気持ちを代弁してあげてください。
子どものころに親に「愛している」と言ってほしかった
良いことをした時には褒めてほしかった
お母さんと呼んだ時に、振り返ってほしかった
傷ついたときには抱きしめてほしかった
本当のことを言ったのに「嘘つき!」だと言われて悲しかった
このように思う存分、その当時の気持ちを吐き出してください。
涙が流れるのであれば、流れるままにしておきましょう。
ステップ④傷ついた気持ちをありのまま受け止める
ステップ③で吐き出した気持ちを受け止めてあげてください。
自分のことを大切に想ってください。時には、「愛している」と言葉にしてもいいでしょう。
良いことをした時には、自分自身のことを褒めてあげてください。
自分の気持ちに向き合う時間を作ってあげてください。
傷ついた子どもの頃の自分と、そして今の自分を抱きしめてあげてください。
悲しいことがあったのであれば、悲しいままにしておいてあげてください。そして、「あなたは悪くない」と子どもの頃の自分に声をかけてあげてください。
ステップ⑤自分がどう成長していきたいのかを知る
子どものころに押さえつけられていた自分の気持ちが解放されたのであれば、本来の自分の気持ちを言えるようになっていくはずです。その時に、自分自身が本当は何をしたいのかを聞いてみてください。
どういうことが好きなのか
本当はやりたくなかったことは何か(モラハラも本当はやりたくなかったかもしれません)
本当は何になりたいのか
そこには、自分自身も知らなかった気持ちもあるかもしれません。
ステップ⑥もう自分を傷つけないためには今の自分が何をすればいいのかを知る
幼いころに傷つけられていた心を見てみぬフリをし続ければ、今度は自分で自分自身を傷つけることになります。しかし、子どもの頃の傷に気づき、癒してあげられたのだったとしたら、あなたは人を傷つける人ではなく、癒す人に変化したわけです。
過去の自分を癒したら、今度は、未来の自分を傷つけないためには何をすればいいのかを考えてみてください。
モラハラはしていいのでしょうか?
暴言を吐いてもいいのでしょうか?
パートナーを傷つけて離婚になってもいいのでしょうか?
何をすればいいのか、何をしてはいけないのか、自ら答えを出せたとき、心は再び発達していくでしょう。
まとめ
自らの心と向き合い、正直な気持ちを知るということは、意外と人間だれしもできてはいないことなのかもしれません。
周囲に合わせすぎて自分の気持ちを押し殺したり、
人の意見を自分の意見だと思い込んだり、
多数派の意見に迎合したり、
そうやって本来の気持ちを見失っていると感じたときには、一度孤独になって、自分と向き合ってみるのもいいかもしれません。
ここではモラハラ加害者を例に上げてはいますがインナーチャイルドを癒すステップはいろいろな方に使えます。
モラハラ被害者の方も、ぜひ「モラハラ加害者に自分の意見を殺されていないか」よく考えて、「未来の自分を傷つけない」選択肢を導き出してみてくださいね。
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