モラハラ夫から離れ別居しても、すぐに心が回復するわけではありません。
モラハラは魂の殺人とも言えるような行為で、時には加害者から離れられてもその後何年、何十年と苦しみが続くこともあります。病んでしまい、健康な状態に戻れなくなることもあります。
しかし、被害の程度が軽いうちに離れることができた場合、時間はかかるけれども次第に回復し、苦しみが徐々に消えていきます。
私が、モラハラ被害の結果どういうことに苦しんだのか、そして、今はどういう精神状態なのか。心が回復したということがどういうことから分かるのか、その兆候は?
ここでは私の実体験を元に、モラハラ被害から心が回復してきたときの変化をまとめました。
1.モラハラ被害者であるという自覚ができるようになる
別居してすぐは、夫がモラハラ加害者であるということを分かっていませんでした。夫はうつ病だと思っていたので、「病気なのに受け止めてあげられなかった自分」「病気なのに夫を見捨ててしまった自分」に罪悪感を抱いていました。
しかし、別居してインターネットでいろいろな人のサイトやブログを読んでいるうちに、自分と同じような経験をしている人が他にも大勢いらっしゃることに気が付きました。
そして、夫のしていたことは「モラハラ」で私は加害者ではなく被害者であったということが分かったのです。
モラハラ被害者の多くが、「自分が加害者である」という誤った思い込みをしていることがあります。罪悪感に苦しみ、被害者であるにもかかわらず背負わなくてもいい罪を背負わされているのです。
モラハラ被害から抜け出すためには、この間違った認識を正さなくてはいけません。
モラハラ被害を抜け出す第一歩目が、「自分が被害者であることを自覚する」ことです。
2.モラハラ被害の苦しみを受け止め、飲み込み、消化することができるようになる
自分が被害者だと気が付いた後、私は何度もいろいろな人のサイトを周り、モラハラ被害の体験談を読み漁りました。また、モラハラに関する本も読みました。
この作業はとてもつらく、同じような体験談を目にするたびに、心が苦しくなり、動悸がし、自然と涙があふれてきました。
それでもなぜか、読むのをやめられませんでした。
私がモラハラ被害から回復できたのは、この一連の作業があったからではないかと思っています。
他の人の体験談を読むことで自分の被害を追体験し、自分の中で徐々にその時の感情を整理、消化することができたからです。
たとえば、友人には恥ずかしさでなかなか相談できない経済的DVの被害に遭っていたことも、同じような被害に遭われていた方のブログを読み消化しました。
親しい友人には、とても「生活費を1円ももらえなかった」とはいい出しづらかったからです。
そして、夫がいくら「子どもの将来のために節約する」と口では言っていても自分にはたんまり小遣いがあり、好きなものを好きなように買えていたという事実を直視でき、私が虐げられていただけだったということがハッキリとわかりました。
その現実を受け止めるのは非常につらいことでもありましたが、だからこそ相手の虐待行為に対してNOを突きつけなくてはいけないことも学びました。
他にも、夫から暴言をさんざん言われたことに対し、言い返せなかった自分自身が嫌でした。なんと言い返せばよかったのか、同じような場面を想像しては、夫を非難する言葉を無数に考えていました。
しかし、言い返せない自分が無力で無能だったわけではなく、むしろ夫のような人間に成り下がらずに済んだことが分かったことで、肯定的に過去のやりとりを受け入れることができるようになりました。
モラハラ被害に遭われた方のサイトやブログは、私に自分のモラハラ被害と向き合うきっかけをくれました。
自分の過去の体験に、他の人が語った体験談を通して向き合ったことで、自分の気持ちを消化する方法を見つけられたのです。
私がオススメしたいのは、モラハラ被害者同盟というサイトです。管理人の方だけではなく多くの人の体験談が寄せられており、きっと似たような経験をされている方を見つけることができると思います。
3.自分からモラハラ被害を告白できるようになる
初めは自分がモラハラ被害を受けていたということがとても恥ずかしく、またその話を周囲にすることで自分が惨めな人間になると思い、話すことをためらっていました。
特に、結婚生活がうまくいっている友人と、夫からゴミのように捨てられた自分を比べて、自分が夫から大切にされない人間であるということを情けなく思っていました。
しかし、
「自分が悪いところがあったから被害に遭ったわけじゃない」
「被害から抜け出せた今となっては、被害者だったのは過去のこと」
だと自分のことを肯定的に捉えることができるようになりました。
そして、私が他の人の体験談から自らの傷を癒すことができたのと同じように、自分の体験談を発信していけば、誰かの心に届くかもしれないとブログを立ち上げることにしました。
かつて、毒親の被害に遭った人たちはみな、自らの体験を恥ずかしいこと、秘密にしなければいけないことだと胸にしまい込み、発信することはありませんでした。しかし、毒親に関するマンガが出版され、それがメディアに取り上げられたことで一気にその存在が知られることになりました。同じような被害に遭った人たちは「恥ずかしい経験だと思っていたことを、世間に訴えてもいいのだ」と勇気をもらい、毒親に関するエピソードを告白する人が後を絶たなくなりました。
同じようにモラハラの被害を告白することで、同じような被害に遭った人たちも声を上げ、また苦しみを分かち合い、癒すことができると考えています。
4.自分で自分の未来を決めることができるようになる
結婚生活で、私は自分の意思や自由がどんどんと奪われて、最終的には、自分のことも自分で選べないような心理状況に陥っていました。
しかし、モラハラ被害から回復するにつれて、「〇○しなければならない」「こういう人間でなければいけない」という考え方がいかにおかしいのかに気が付くことができるようになりました。
夫から呪いのようにつぶやかれていた「母親はかくあるべき」「妻はかくあるべき」という言葉をはねのける力が出てきたからです。
他人に自分の性格や振る舞いを強要されることは、自分自身の意思や決定権を奪われることです。その時の私は、自分の未来も自分で決めることができずに、「人生は非常につまらないもの」だと思っていました。
今では、自分の行動によって自分の未来が変わっていく、自分で未来をつくることができる喜びを感じることができています。
5.もう体験ブログを読んでも胸が苦しくない!
私は、モラハラ被害の後遺症はややあるものの、モラハラ被害からは回復できたと思っています。
それは、もう他の人の体験談を読んでもあの時のような動悸や胸の締め付けを感じなくなったからです。
それが私を苦しめていた夫のモラハラから決別できた証ではないかと思っています。
しかし、モラハラ被害を忘れたわけではありません。今でも夫から受けたことは許すことができませんし、これからも許せる日が来ることはないと思っています。
ですが、自分自身が前向きに人生を歩んでいくその先に、モラハラの足かせはありません。
モラハラ被害に苦しんでいる方へ
モラハラ被害に遭われている方、また被害からは抜け出したけれどまだ後遺症に苦しんでいる方、どうか心の傷を見てみぬフリをしないでください。
悲しさや苦しさ、怒り、苛立ち、そこにはあなたの心のSOSが隠されています。
自分の心の傷と向き合い、時には思いっきり泣き、時には怒り、モラハラ加害者へと感情をぶつけてください。いまだにムカつくことがあれば、日記にしたり、ブログで気持ちを発信してもいいでしょう。そうやって感情を殺すことなく、ありのままの気持ちを表現してください。
そうすれば、癒されることを求めて暴走した心の傷が、あなたの大切な人を傷つけることはなくなるでしょう。
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