夫は、何かある度に頻繁に「離婚」という言葉を使っていました。そのたびに何とか離婚にならないように修復を重ねていましたが、「離婚」と言われるたびにだんだんと相手への愛情が減っていくのを感じていました。そして、最終的には愛情が底をつき、修復する気持ちもなくなったため、夫から言われた「離婚」をその通り受け入れることにしました。
夫がケンカの度に「離婚」という言葉を使っていたのには、モラハラ環境で育ったが故の理由があったと考えられます。
私が使う「離婚」と、夫が使う「離婚」は意味が違う
私は、「離婚」と配偶者に言うときは、本当に離婚をする決意があるときだけだと思っています。もし「離婚」という言葉を伝えてしまえば、自分が本気で思っていなくても本当に離婚になってしまうと考えているからです。それほど、「離婚」という単語は私にとって重いワードです。
だからこそ、何かある度に夫が頻繁に離婚と言ってくることが理解できませんでした。
しかし、夫にとっては「離婚」という言葉を出せば、「離婚」にならないように(自分の意見を受け入れるように)妻を変えることができると思っていたようです。
私が離婚にならないように「離婚」という言葉を使わなかった一方で、夫は離婚にならないように「離婚」という言葉を使っていたわけです。夫にとっては、「離婚」は配偶者に言うことを聞かせたり、配偶者をコントロールするための魔法の言葉だという認識だったのだと思います。
愛情があれば、自分の言うとおりに配偶者を変えられるというのは間違い
夫の言葉の裏には、「自分への愛情があるならば離婚を避けようとして、言うとおりにしてくれるはずだ」という思いがあったのでしょう。
しかし、パートナーへの愛情の大きさと、パートナーの思い通りに自分の行動を変えることは全く関係のないことです。
そして、愛情を確認するために「離婚」という言葉を持ち出すのも不適切です。夫がこういう考え方をしていた背景には、突き放すこと以外で愛情を確認する方法を知らなかったのではないかと考えられます。
親や配偶者の愛情を確認するための行動を「試し行動(試し行為)」と言います。夫の「離婚」発言も一種の「試し行動」だったのではないかと考えます。
モラハラ加害者は時に愛情を確認するための「試し行動」をする
試し行動というのは、子どもによくみられる行動で、親や里親に自分がどこまで受け入れてもらえるのかを確認するために、わざと物を投げる、かみつく、「嫌い!」と言ってあまのじゃくな態度を取るなどをすることです。こういう行動の背景には、「大人に自分を見てもらいたい」という子どもの欲求があります。
試し行動の原因となる主な出来事
- 虐待をされている、されていた
- 親の気分に振り回されている
- 親や大人に不信感を持ってる
- 親の思う「理想の子ども」が重荷になっている
- 親が感情的、支配的で子どもが抑圧されている
- 両親が忙しくかまってもらえていない、寂しいと感じている
- 弟や妹が生まれ、親の関心がそちらに向いていることに不満がある
- 自分のことを見てほしい
幼少期にモラハラ環境で育った大人も「ありのままの自分」を見てもらえなかった不満から、大人になってから恋人や配偶者に対して「試し行動」をすることがあります。
こんなことが試し行動に当たる
- 小さな発端からすぐに「離婚だ」という
- 理由を言わずに不機嫌になる、黙り込む
- 相手を無視する
- 相手を否定する、悪口をいう
試し行動は、自分に自信がないために、自分の欲求を正しい方法で相手に伝えることができなかったり、自分が愛されているかどうかを確認するために、わざと相手と離れるような行動をとり、相手が追いかけてきてくれるか、この関係を大事にしてくれるかどうかを試します。傷つけることを言うのも同様です。
また、試し行動をする人は、人に依存、癒着しやすいタイプであり、相手と自分が些細な違いを許すことができません。相手が自分のことを分かって当然だと思い、黙って機嫌を察するように働きかけます。
もし、この試し行動が成功すれば、彼らは一時的に安心感を得ることができます。しかし、その安心感も長くは続かないために、何度も何度も「試し行動」が繰り返されます。
「試し行動」への対処法
「試し行動」への適切な対処法は次の通りです。
- 試し行動は不適切であることを説明する
- 試し行動をした相手の意のままに応じない
- 試し行動以外に愛情を確認できる手段があることを伝える
- 愛情を伝える
「試し行動」をしても何も変わらないよ、それよりももっと適切な方法があるよ、ということを懇々と伝えることです。
しかし大人の「試し行動」は子どもに対処するよりももっと大変です。
大人の「試し行動」の問題点
大人と子どもの「試し行動」で決定的に違うのは、大人の場合は過去に「試し行動」で愛情を確認できた成功体験があるという点です。そしてその成功体験が根強いため、「試し行動」をやめさせるのが容易ではありません。
また、
- 配偶者以外が「試し行動」をしないように適切な対応をしたところで、引き続き、他の人に対して「試し行動」が成功し続けている場合は改善されない
- 親子関係であっても「試し行動」を対処し続けるのはしんどいが、すでに大人同士である恋人や配偶者は更にストレスを感じ、負担が大きい
といった問題点もあります。
「試し行動」に疲れたら、本当に離婚になってしまう
愛情があるうちは「離婚」と言われても何とか離婚にならないように修復しようという気持ちになりますが、「離婚」と言われるたびに相手への愛情は減っていくでしょう。
何回かは「離婚」と言った後も関係を修復できたからと言って、次に言われた時にも同じようにできるとは限りません。その気持ちがもう無くなっているかもしれないからです。
たかが言葉、されど言葉です。
不適切な言葉を多用する関係は不健全な関係になります。そして、不適切な言葉が積もり積もっていくと関係はいずれ破綻します。
試し行動は、一度は相手から愛情をもらうことができるかもしれません。しかし、試し行動でもらった愛情は「相手の愛情ゲージからマイナスされていく可能性がある」ということを覚えておかなくてはいけません。愛情がゼロになった時が関係の破綻の時です。
もし、あなたのパートナーが「離婚だ」と言ってきたのであれば、その言葉が関係を継続する上で不適切なことを伝えてください。もし、それで相手が変わらなければ、いずれ破綻したとしても仕方がないことです。
継続的な人間関係を送りたければ、「試し行動」は使ってはいけません。
まとめ
- 「離婚」は配偶者の愛情を試す「試し行動」の可能性がある
- 「試し行動」には、応じないのが適切な対処法
- 「試し行動」が不適切だということ、別の方法で愛情が確認できることを伝える
- 大人の場合は改善は容易ではなく、「試し行動」の結果、本当に配偶者の愛情がなくなってしまうことがある
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