「共同親権」の導入が検討されているらしい 共同親権になったらどうなる?

共同親権とは

2018年7月15日に政府が共同親権を選べる新制度導入を進めるというニュースが飛び込んできました。

以下、ニュースより引用です。

政府が、離婚後に父母のいずれか一方が親権を持つ「単独親権」制度の見直しを検討していることがわかった。離婚後も双方に親権が残る「共同親権」を選べる制度の導入が浮上している。父母とも子育てに責任を持ち、親子の面会交流を促すことで、子どもの健全な育成を目指す。

法務省は親権制度を見直す民法改正について、2019年にも法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する見通しだ。

1896年(明治29年)制定の民法は、家制度を色濃く反映している。親権が子どもに対する支配権のように誤解され、児童虐待につながっているとの指摘もある。親権は2012年施行の改正民法で「子の利益のため」と明記されており、政府はこの観点から更なる法改正に着手する方向だ。

(引用:ニフティニュース https://news.nifty.com/article/domestic/society/12213-20180714-50133/)

もし、共同親権が選択できるようになるとどうなるのでしょうか?

目次

親権とは?

子どもが成人するまでは、親権者である親が、子どもの財産を管理したり(財産上の保護監督)、子どもを保護したり(身分上の保護監督)、教育の在り方を決める権利や義務のこと(教育に関する権利・義務)です。

共同親権と単独親権の違い

まず、共同親権と単独親権の違いについて説明しましょう。今の日本は、離婚と同時に片方の親のみが親権を持つ「単独親権」です。共同親権は婚姻期間のみしか認められておらず、親権者を決めなければ離婚はできません。

単独親権では、子どもが通う学校、住む場所、子どもの財産の管理などはすべて親権を持った親が決めることができます。

一方、共同親権の場合は、離婚した後も両親が親権を持ち、子どものことを決める際には双方で話し合いをし合意をしてから親権を行使することになります。

共同親権のメリット

離婚をしてしまうと、縁がすっぱりと切れてしまい、別居親が望んでも我が子に会えないケースが多くあります。共同親権は、離婚後も親子の絆を保つための制度であり、離婚後に別居親が子どもと会えなくなる「別居親との引き離し」がなくなります。

また、双方の話し合いでのみ親権が行使できることで、別居親も引き続き子育てにかかわっていくことができます。親子の絆を法的に保護し、その結果子どもを貧困や精神的不安定から守る狙いがあります。

共同親権のデメリット

DVやモラハラの被害が続く可能性がある

DV被害など、本来であれば元配偶者と接触を禁じられるべきケースにもかかわらず、共同親権であるがゆえに関係を断ちきれず、子どもを利用して接触をしてくることも考えられます。その結果、離婚後も元配偶者からDVやモラハラの被害を受け続ける可能性が上がります。

居住の制限が発生する

また、監護親と別居親の住む場所が同じ地区でなければならないなど、親権を行使できるよう居住場所に制限が課せられる可能性もあります。

面会交流を強制することが果たしていいことなのかどうか

すべての離婚家庭で面会交流を強制することになり、子どもが別居親と会うことを拒否している場合など個々のケースで問題が出てくるでしょう。

————-(2019年2月追記)————-

面会交流を続けざるを得なかった家庭で、DV夫との縁が切れず痛ましい事件につながってしまいました。

この事件では、一度は夫婦が離婚をしたものの、父親と娘の面会交流を通じて夫婦間の縁を切ることができずに復縁し、ついには娘を虐待死させてしまうに至りました。

親子が公的機関へDVや虐待を訴えていたのにもかかわらず、学校も市教委も児相も事件を防ぐことができませんでした。日本社会のDV・虐待への脆弱さも浮き彫りになった事件でもあります。

子どものためにならなかった面会交流。そして危険度が高くてもその時点で実害を証明できなければ面会交流を制限できないという現実。共同親権を導入する前にDV・虐待への対策をすすめなくては、こういう事件は繰り返し起きてしまうでしょう。

—————————————————-

日本と外国の違い

日本は親権の強い国

海外では、親の権利である「親権」の在り方が疑問視され、子を育てるのは親の責任であることを明確にする意図から親権が「親責任」という言葉に変わった国もあります。

日本では、未だに「親権」の考え方が強く、親権を停止する制度もありますが、停止の期間は最長2年です。令和元年では、親権停止を求められた223件のうち、認められたのは89件でした。親権を喪失させる制度は年間に100件前後で推移しており、令和元年では134件の申し立てのうち、認められたのは39件でした。(参考:親権制限事件及び児童福祉法に規定する事件の概要)

一方で諸外国では、

ドイツは1万5千件から2万件、イギリスは2〜5万件親権停止

虐待による親権停止は年間17件 軽視される子どもの人権と強すぎる親の権利

をするそうです。

日本は外国に比べて親権が強い国でもあります。

日本の離婚に関する考え方の違い

離婚率が上昇中の日本でも、離婚は良くないことだと考えられていて、世間体や子どものことを考慮し、離婚を避ける傾向にあります。そのため、離婚に至るカップルは、よほど関係がこじれた場合であり、対話することも難しいことが多いと考えられます。このような状態では「子どものためであっても話し合いをする」ことが難しく、合意が得られなければ親権が行使できない共同親権となると、結果的には子どもはどちらの権利も得ることができなくなり不利益を被ります。

再婚相手との養子縁組の制限

日本の場合、再婚すると再婚相手と連れ子を養子縁組することが一般的に行われています。これは再婚相手と連れ子を養子縁組をする際に厳しい審査がある海外と大きく異なる点です。日本で再婚相手との養子縁組が一般的なのは、母親と子どもの氏が異なると生活する上で不便だからです。共同親権では、再婚に制限がかかったり、離婚して新しい人生を歩もうとしているのに、制度がその足かせになってしまう可能性があります。

「子どものために話し合える夫婦」であれば、そもそも離婚しない

例えば、子どものことを話し合うのであれば元夫婦もお互いに協力し合い、対話を持つことができる場合ではそもそも離婚に至らないことがほとんどです。

制度だけ共同親権にしたところで、元夫婦間の感情や思想が変わるわけではありません。共同親権にしさえすれば、養育費を必ず支払うとか、シングル家庭の貧困率が下がるとか、そういった本質的な解決に果たしてつながるかどうかは疑問が残ります

離婚することによって、夫婦間のいざこざがなくなり、子どもにとっては安定した環境が手に入る場合もあります。離婚後も元配偶者との関係を強制的に続けなければならないことで、かえって両親のいざこざを引き続き目の当たりにしなくてはならず「単独親権」と比べて環境が悪化することも考えられます

私の場合は、元夫から別居後も嫌がらせを受け続けましたが、離婚が成立して戸籍上でも距離を取れるようになったことで環境が安定しました。そして、離婚に至るまでの調停では毎回嫌な思いをさせられました。出来ればこの先も元夫とは連絡を取りたくない、と言うのが本音です。「俺が帰ってくるまで子どもにご飯を食べさせるな」「子どもの寝かしつけをするな」と子どものことを考えない発言を繰り返していた夫と、いくら子どものことを話し合ったとしてもいい結果になるとは到底思えません。子どものことに関する建設的な話し合いができないばかりか、連絡をすることで相手からの嫌がらせや「母親失格だ」などといった暴言を吐かれる可能性におびえてしまいます。

これからの展開を見守る

まだ、「共同親権」の詳しい内容は今の段階では分かりません。気になるのはすでに離婚が成立していており「単独親権」になっている場合でも相手からの訴えがあれば「共同親権」に変更することができるのか、と言う点です。(先に、共同親権が導入されたブラジルでは、すでに離婚済みのカップルでも申し立てをすれば共同親権への変更もできます。)

もし、政府が共同親権を推進したい考えがあれば、裁判などになった時に否応なしに「共同親権」が認められてしまうことも考えられます。

ここにあげた問題点がいかに解決された内容になるのか、今後の展開を見守っていきたいと思います。

共同親権とは

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