家庭内でモラハラが行われていた場合、子どもにどのような影響を与えるのでしょうか?モラハラ自体が夫婦間だけで行われていたとしても、その影響は夫婦の問題にとどまりません。
また、近年子どもの虐待の増加が問題視されています。
モラハラ行為は虐待でしょうか?また、その場合どのような行為が虐待に当たるのでしょうか?
子どもへの4つの虐待
子どもへの虐待は、大きく4つのタイプに分けられます。
- 殴る、蹴るといった身体的虐待
- 「できそこない」「お前なんかいなければよかった」「バカ」と言った言葉の暴力を行う心理的虐待
- 性的行為を強要する性的虐待
- 食事を与えない、世話をしないと言った育児放棄(ネグレクト)
です。
そしてこのうち、近年増加しているのは(2)の心理的虐待です。
心理的虐待が5年間で3倍 子の面前でDV通告増加 - 朝日新聞 DIGITAL
記事によると、心理的虐待は、2012年には2万2423件であったのに対し、2017年には7万2197件になっているそうです。2012年から2017年の5年間で3倍へと急増しています。
モラハラは心理的虐待
子どもへのモラハラは、(2)の心理的虐待に当てはまります。
モラハラによる子どもへの暴言に見られるものとしては、「なんてダメな子なんだ」「そんなことで泣くんじゃない」「育て方を間違えたな」「親の言うことにしたがっておけばいいんだ」「いうことが聞けないなら出ていけ」といったものです。
ひとつずつ見ていきましょう。
- 「なんてダメな子なんだ」…自分は何をやってもだめだ、認めてもらえない存在だと自己を否定したり、自分に対してポジティブなイメージを持つことができなくなります。
- 「そんなことで泣くんじゃない」…感情を持つことや感情を表に出すことは悪いことであると学習します。
- 「育て方を間違えたな」…自分という存在を完全否定されたと感じます。
- 「親の言うことに従っておけばいいんだ」…主張することは悪いことだと学習し、周りの顔色を窺って過ごしていくことになります。
- 「言うことが聞けないなら出ていけ」…子どもは、親から突き放されてはひとりで生きていくことはできません。そのためこの石に関係なく強制的に親の言うことに従うしかありません。自分では何も選ぶことができないと学習します。
また、夫から妻、妻から夫へのDVや暴言を見せたり聞かせたりすることも、この心理的虐待に当てはまるのです。つまり、子どもへ直接モラハラが行われていない場合でも、子どもに虐待をしているのと同じく、子どもへ悪影響を及ぼします。
心理的虐待を受けた子どもはどうなる?
(1)強い自己否定感を抱く
子どもは、親からの絶対的な愛情を受けることによって自己肯定感を育んでいきます。
一方、モラハラ親に育てられた場合は親からの愛情は条件付きです。親の意のままに行動したときは褒められるけれど、意に反したことをした場合は強い否定を受けます。
自分自身は無条件に愛される存在であると認められずに、失敗をする自分は価値がないと自己否定をすることになります。失敗を恐れ、失敗を隠すようになります。
幼少期から自分はちっぽけで価値のない存在と思い込み、青年期以降も自己肯定感の低い状態が続きます。
(2)自己主張ができない
モラハラ親は、子どもが自分の思い通りに言っている間はかわいがりますが、子どもが意志を持ち自分の意のままにならないようになると、怒鳴ったり強い否定をしてコントロールしようとします。
時には「親の言うことが聞けないのであれば、もう世話をしない」と切り捨てます。
子どもは、親に逆らうと生きていけなくなると学習し、自分の意見は我慢したり押し殺すようになります。大人になってからも不平不満を抱えたまま、自分の意見が言えない人間に成長します。
(3)不平等な人間関係がすべてだと思い込み、まともな人間関係が築けない
また、人間関係は「支配」か「服従」しか無いと考えて、親以外との人間関係を構築する歳にも、公平で平等な人間関係を築くことが難しくなります。
「支配」であると考えるときは、他人に対して攻撃的で傲慢な態度を取るようになりますし、「服従」であると考えるときは、相手の言うことがすべて正しいと考え、自分の意見を持つことができません。
(4)異性に対しても信頼ができない
また、自分自身に対してモラハラ行為が行われていなくても、両親間が明らかなモラハラ加害者と被害者であった場合は、夫婦間のネガティブなイメージがそのまま焼き付いて離れなくなってしまいます。
そのため、異性に対して肯定的な感情を持つことができなくなり、恋人関係や夫婦関係においても信頼関係を築くことができなくなります。
(5)精神疾患を抱えたり非行に走る可能性が高まる
幼いころからストレスを抱えて育つため、精神的に不安定です。そのため、精神的な疾患を患ったり、非行に走ってしまう可能性が高まります。
まとめ
モラハラ行為は、直接子どもに行われる場合でも、夫婦間でのモラハラ行為を見せる場合でも、子どもの成長に悪影響を与えます。
子どもは生涯にわたって生きづらさを抱えて、多くの場合不幸になってしまうのです。
暴力を伴っていないから大丈夫なわけではありません。モラハラも子どもを不幸にしてしまう立派な虐待です。
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