モラハラや自己愛性パーソナリティ障害を調べているうちに「愛着障害」という問題にたどり着きました。
この「愛着障害」はまさに夫に当てはまる問題であり、私がずっと抱えていた「なぜ夫は人を信用できないのだろうか」「なぜ人にノーと言えないのだろうか」「なぜ人によく見られたいがために頑張りすぎて病んでしまうのか」という疑問を解決することができました。
そしてこの愛着障害がそもそものモラハラの原因でもあったのです。
発達障害と愛着障害はどう違う?
発達障害とは?
発達障害には大きく分けて3つに分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動性障害)
- 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 限局性学習障害(SLD)
これらは、先天的な脳の機能障害によって引き起こされます。これら障害は脳の働きによるものであることは知られていますが、治療方法などは確立されておらず、根本的に治療する方法は現在のところありません。しかし、日常生活を送る上で困難に感じていることを理解し、対処法を身につけることで生きづらさを解消することができます。
愛着障害とは?
愛着障害とは、0~3歳までの間に親との安定した愛着(人との結びつき)を形成できなかったことによる障害です。
そして生まれた後の家庭環境で愛着スタイルをうまく取得できなかった場合も発達障害と似たような症状がみられることも知られており、後天的に取得するという点で発達障害とは異なるものの、これらも完治することができない(もしくは治療が非常に困難である)ということから愛着障害のことを第4の発達障害とみなす専門家もいます。
また、発達障害と似たような特性や行動がみられることなどからも、クリニックなど専門家も判断を誤り、ADHDや自閉症スペクトラム障害であると診断を下してしまうこともあるようです。
そして愛着障害が第4の発達障害と言われるほど、愛着スタイルは人の一生を決めるほどの大きな役割を果たすのです。
安定した愛着スタイルを獲得できた子どもはどうなる?
親から無条件に愛され、欲しいときには手を差し伸べてもらい、自らがやりたいときには見守ってもらえた子どもは、大きくなるとどのような人間になるのでしょうか。
- 人を信頼し、必要な時に助けを求めることができる
- 安定した人間関係を築くことができる
- 人を尊重し、自分を尊重することができる
- 自分にふさわしい大きさの自信がある
- 自分に何ができるのかなにができないかを分かっており、等身大の自己像を持つ
- 人の価値観を否定しない
- 自分の感情をコントロールできる
このように、安定的な自己や良好な人間関係を構築する上で「愛着スタイル」は重要な役割を果たします。
いっぽうで、愛着スタイルを獲得できなかった子どもは、どうなるのでしょうか?
愛着スタイルを獲得できなかった子どもはどうなる?
1.人が怖い、だれも信じることができない
人は、決して自分を理解してくれない、相容れない存在であると思い、自分をさらけ出したり打ち解けたりしようとしません。人と一緒にいるときは危険を感じ、自分を守るために常に緊張しています。
自己愛性パーソナリティ障害の場合は、この疎外感、孤立感を「自分は特別な存在であるから人から理解されない、人と相容れない」と思っていることがあります。
2.自尊心がない、強い自己否定感
望まぬ自分であれば愛されてこなかったことから、強い自己否定感を抱えて生きています。他人から否定されることをひどく恐れています。批判には強い怒りを感じるタイプと必要以上に落ち込むタイプといます。
自己愛性パーソナリティ障害の場合は、この劣等感の裏返し行動として尊大にふるまうことがあります。本当の自分は偉大であるという思い込みをしなければ自己否定によってつぶされてしまうため、現実を直視できずに理想像を掲げるしかなかったことが原因です。
3.慢性的な空虚感を抱える
たとえば、誰も自分のことを知らず文化も言語も違う土地にいきなり一人でぽつんと立たされてしまったらどう思いますか?きっと、ひどく心細い気持ちになると思います。自分の居場所がなく、居心地の悪い思いをするはずです。
愛着障害の場合は、慢性的にこの思いを抱えています。この世の中には自分の居場所などどこにもないと考え、いつ、どこに、誰と居ても安心できません。
4.相手の望む”いい子”を演じる
ここにいてもいいという安心感がない子どもは、幼いときから自分で自分の居場所を確保しなくてはいけません。
つまり愛着のない子どもにとっては、生き残れるかどうかは自分の能力にかかっています。そして生きる為に、親や教師、友人の機嫌を取る能力を磨いていきます。
周りの人に対して「ノー」と言わず、相手に合わせることで相手に受け入れてもおうとし、居場所を確保しようとします。
こういった特徴のことを「過剰適応性」と呼びます。
自分の感情や意見を押し殺し、相手の望む反応を返すことで、相手に居てもいいと許可をもらわなくては、自分の居場所がないと思っています。
5.体がリラックスできず、慢性的な疲労感を抱える
いつも危険、どこにいても安心できない状態である子どもは、体が緊張しておりリラックスできません。子どものころであれば、座っていても身体の一部のどこかを動かしていたり、体をゆすっていることがあります。そしてADHDの特性と似ているため発達障害であると誤診されることもあります。
野生の草食動物はいつ天敵に襲われるか分からないため、寝ているときも緊張状態にあり、敵が来たらすぐに起きて駆け出せるそうです。またその睡眠時間も短いことも知られています。一方、動物園などで飼育されている動物は、敵に襲われる心配がありません。飼育下にいる動物は野生の場合と比べて、平均で2倍の寿命を生きるそうです。
人間でも、危険に対する警戒感が強い子どもは、大人になってからの様々な病気の発症率が高くなることが研究から分かっています。
6.頑張りすぎる
無条件で愛されない子どもは、なんらかの成果や結果を残すことで自分を受け入れてもらおうとします。無価値な自分では愛されないため、価値のある人間にならなくてはいけないと考えています。
そしてその頑張りには制限がありません。
無価値になってしまえば、無用なものとして捨てられてしまうのではないかということに怯えているからです。
そのため、何かを達成したとしても満足感が得られずに、さらに頑張らなければいけない、これだけでは足りないといつまでも頑張り続けてしまいます。
限界を超えて頑張りすぎ、その結果、うつ病などの病気を発症してしまうこともあります。
7.他人が信用できず「試し行動」が見られる場合も
継続した関係においては、ときに恋人やパートナー、親友から自分が愛されているかどうかが不安になり、愛情を試す「試し行動」が見られることもあります。試し行動には次のようなものが挙げられます。
- 無視をする
- 不機嫌を察してもらおうとする
- すぐに別れなどを切り出す
- 相手を否定する
ひどいケースでは、継続的な人間関係が不安の種になります。試し行動が失敗した場合であっても「やっぱり自分は愛されていなかったのだ」ということが安心につながる場合もあります。
夫の行動と愛着障害
夫は職場の人のことを「職場の人間は誰も信じることができない。俺にあるのは家族だけ」と言っていました。
一度、職場の人から「職場ではいつも険しい表情をしているから、あんなに穏やかな表情の彼を見たのは初めてだ」と言われたことがありました。それを聞いて、夫にとって職場はリラックスができるようなところではないのだと感じていました。
一方で私に対しても「言いたいことも言えない。いつも我慢している」ともよく言っていました。
実際は、職場だけではなく、周りの人間に対して信頼をするということができなかったのだと思います。それは相手が誰であろうと、どんな関係のつながりであろうと、そもそも人を信頼するという経験をしてこなかったことから「基本的信頼感」が欠けていたのでしょう。夫にとっては、あらゆる人がみな信じられず、本心をさらけ出して話ができる人間関係というものは皆無だったのだと思います。
周りの人を信頼していない人が、自分が窮地に陥った時にうまく助けを呼べるでしょうか?
おそらく、できないでしょう。
周りに対して助けを求めることができる人は、周りの人を信頼している人だけです。自分を傷つけ、貶める存在であると思っている相手に対して自分の弱みをさらけ出すことなどできません。
夫が抱えていた生きづらさは恐らく、幼いころに愛着スタイルが形成できなかった、もしくは不安定な愛着スタイルであったため引き起こされたのだと思います。
また、夫は休日の度にどこかに出かけなくては気が済まない人でした。何か予定が入っているということが夫を安心させる材料であったのでは、と思います。いつも何かの予定が入っていて、何らかのタスクをこなしている状態が、価値のある自分になるために必要だったのかもしれません。
愛着障害とモラハラの関係
愛着障害はパーソナリティにも影響を与えます。愛着には安定型のほかに3つのスタイルがあるとされています。それぞれが、どのようなパーソナリティ障害につながると考えられているのかは以下の通りです。
「抵抗/両価型」…不安障害など
「回避型」…自己愛性パーソナリティ、反社会性パーソナリティ、シゾイドパーソナリティなど
「混乱型」…境界性パーソナリティーなど
この中の自己愛性パーソナリティ障害がモラハラに当たります。
幼いころに愛着を形成できなかった場合はどうする?
愛着を形成するのは3歳までの過程であると言われています。3歳までに愛着が形成されないと、それは呪縛となってのちの長い人生で生きづらさを抱えることになります。
しかしながらそれで人生のすべてが決まってしまうわけではありません。3歳までに獲得した愛着は6~7割ほどが人生において変わらないとされていますが、大人になってからも人との信頼を気づいていく中で愛着を獲得することもできるとされています。これを獲得型の愛着と呼びます。自分のことを何でも話せる人との出会いが愛着獲得につながるそうです。
友人がモラハラを治す事に成功した背景には、年上の人から可愛がられたことが関係しているのではないかと私は考えます。そして友人自身も先輩方を信頼することができたことが愛着獲得につながり、モラハラを治すことができたのではないでしょうか。(もっとも、一番の治療薬は本人自身がモラハラ行為に気づき、治すために努力をしたからです。)
人を信頼できない、
どこにも自分の居場所がないような気がする、
人に頼ることができない、
など、人間関係や社会とのかかわりで生きづらさを抱えている場合は、愛着スタイルに問題を抱えている場合があります。
しかしながら、3歳以前の記憶はほとんど残っていないため、その原因が愛着障害であると本人も気づかないことが多いのです。しかし、本人の自覚のあるなしにかかわらず、幼い時の愛着は体に記憶され、長期間にわたって影響を与えます。
友人、恋人、職場などあらゆる人間関係で悩みを抱えている場合は一度こちらの本を読んでみることをオススメします。
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