モラハラの原因と言われている「自己愛性パーソナリティ障害」は、医師をも見下し、適切な治療にかかるケースがほとんどないため、臨床現場での研究が進んでいないのが現状です。
しかし、その他のパーソナリティ障害については、さまざまなことが分かるようになってきました。そして、パーソナリティ障害の原因は、生育環境だけではなく、遺伝によっても「なりやすい人」がいるということも分かってきたのです。
同じような親に育てられても「モラハラになりにくい人」と「モラハラになりやすい人」がいて、それは生まれ持った気質や性格によるのだと考えられます。
パーソナリティ障害になりやすい人とは?
生まれ持った気質はパーソナリティの基盤になるものです。
では、パーソナリティ障害になりやすい人とはどういった人なのでしょうか?
パーソナリティ障害には遺伝的な要因も関係していると言われていますが、詳しくはまだ研究段階でよくわかっていません。
しかし、一卵性双生児の方が二卵性双生児よりもパーソナリティ障害の発症が一致しやすい、同じ家系の人に見出だされる確率が高いことなどから遺伝的な要因が指摘されています。
また反社会性パーソナリティ障害や境界性パーソナリティ障害は、衝動性が心の安定を図る脳内物質セロトニンの機能低下と関連していると言われています。境界性パーソナリティ障害は、生まれ持った気質に「気が変わりやすい」タイプが多いとも言われています。
境界性パーソナリティ障害の人の親もまた境界性パーソナリティ障害だったケースは、親がそうでないケースよりも5倍多かったという結果もあります。
ある研究では一親等がBPDである場合が、一般母集団より5倍高かった。
(参照:wikipdia – 境界性パーソナリティ障害)
遺伝的な要因が指摘されている。
親がパーソナリティ障害の場合、パーソナリティ障害になる確率が上がることが分かっている。
パーソナリティ障害になるかどうかは遺伝子5割、環境5割
MSDマニュアルというサイトでは、各分野の専門家による医療や健康に関する情報を発信しています。このサイトでは以下のように書かれています。
パーソナリティ障害は遺伝子と環境の相互作用によって起こります。すなわち、一部の人はパーソナリティ障害になりやすい遺伝的な傾向を生まれつきもっていて、その傾向が環境的な要因によって抑えられたり、強められたりするということです。一般に、遺伝子と環境はパーソナリティ障害の発症にほぼ同じくらい寄与しています。
パーソナリティ障害なるかどうかは、このサイトによれば、どちらの役割がより強いということではなく「同じくらい」だとしています。遺伝的な原因が半分、環境的な原因が半分あるということです。
遺伝5割は、環境要因が強いという意味
遺伝が5割というのは、他の遺伝的疾患と比べ低い数値なのだそうです。言い換えれば、遺伝があったとしても環境によっていくらでも変わるというのが「遺伝5割」の意味です。
元々遺伝的にパーソナリティ障害になりやすい素質を持っていたとしても、生育環境により抑えられ発症しなくなるケースもあります。
反対に、なりやすい素質が環境によって強められることもあるのです。
その環境というのは生育環境はもちろんのこと、生育環境以外の環境も関係しています。
モラハラになるかどうかは環境的要因が強い!
パーソナリティ障害になりやすい遺伝子を持っていても、発症には環境が大きくかかわる
我が子がモラハラ?ちょっと待って!
さて、我が子の様子を見ていて、「もしかしてモラハラ傾向がある?」と思われた方、少し待ってください。
パーソナリティ障害は、「青年期から成人期の初めまで」にその傾向が現れると言われています。
特に自己愛傾向というのは、幼いころ誰しもがその傾向があります。等身大の自分は、心の成長とともに手に入れることができるものです。幼いころにモラハラのような言動が見られるからと言って、脳や心がまだ未発達なためにモラハラ(のように見える言動)をしている可能性もあります。
注意しなくてはいけないのは、思春期以降に急激に性格が変わり突如としてモラハラ傾向の強いタイプに変わるケース。
自己愛パーソナリティ障害の人は、幼いころは「いい子」であったタイプが多いといわれています。
幼少期には問題がなかったのに、思春期以降に突如として攻撃的で不安定になった場合は、それまでは強い大人からの支配により大人しかっただけかもしれません。そして、何かしらのできごとがきっかけで心の均衡が保てなくなり、性格が劇的に変わることがあります。
子どもが大人から見て都合がいい場合は特に注意をしてあげてください。
大人びていて聞き分けのいい子どもは「早く成長した」わけではないのかも…
自己愛性パーソナリティ障害の人が幼少期に「いい子」であったというケースが多いことから、彼らは人よりも早く成長できたわけではなさそうです。
本当は段階を踏んで成長していく心と脳が、不安定な養育環境にすぐに適応しないといけなかったため、「メッキのように外面を整えた」だけだったのかもしれません。なぜなら彼らは、親の言うことを聞くことが生き残る唯一の道だったために、生き残るためにすぐに環境に適応せざるを得なかったからです。
彼らは外面がとてもよく、人から好かれる術を心得ています。それは幼少期からその能力が必要とされたためにスキルとして磨かれてきた結果とも言えるでしょう。
しかし、成長に必要な愛情や養育は欠けていたため、発達自体は促されることなく停滞したままです。
そしてその歪みが思春期以降にパーソナリティ障害となって顕在化するのだと考えられます。
子どものモラハラ化を防ぐためには?
不安定な養育環境にある子どもが「いい子」になってしまうのは、強い支配や恐怖があるためにそれを外に訴えることができないからです。
そして見た目には問題が見えないからと言ってなかったことにしてしまえば、後で何倍ものしっぺ返しとなって戻ってくることになるでしょう。
傷つける言葉を使う子は特に注意が必要?
自己愛が強いタイプであったとしても、学童期に集団に溶け込みうまくやっていけるケースもあります。中には外での環境に恵まれ、自分自身で軌道修正し、治していける場合もあります。
しかし人を傷つける言葉遣いをする子は、子どもの中からもはじかれ、人と心を通わせる経験を家の外でもしないままに成長していきます。
モラハラ親がいるときには従順でいい子である反面、そうでないときは攻撃的になる子どもは、どうすれば損をせずに都合よく振舞えるのかを経験から学び、演技力を高めていきます。表の「いい子」の顔は周囲を騙すための仮面であり、親や教師からの評価が高いため問題に気が付きにくくなります。
さらに、集団からはじかれた子どもは、
『周囲が自分を理解しない = 周囲の人間は劣っている』
という認識が根付き、特権階級の思い込みを強めていきます。
また、人間関係がうまくいかないことはそれ自体もストレスになり、パーソナリティ障害を引き起こす一因になります。
人間関係での経験が乏しく、一般的な家庭像を知ることなく成長するため、自分自身と社会とのズレに気が付きにくくなります。
モラハラ加害者の特徴の一つに「相談できる友人がいない」が挙げられます。モラハラ加害者は過去にも人間関係でいい関係を構築・継続できないという失敗を繰り返しています。
親はどうすればいい?
自己愛性パーソナリティ障害の主な原因は親からの愛情不足です。片方の親から愛情が得られないような場合は、もう片方の親がたくさん愛情を注いであげる必要があります。
また、強い支配や恐怖によってもう片方の親までが不安定になるような環境は子どもの養育にはふさわしくないといえるでしょう。支配によりもう片方の親が鬱状態や精神疾患になり、安定した養育ができなくなると子どもへの影響はより強く表れます。
どういった子どもが遺伝的に自己愛性パーソナリティ障害を発症するのかはまだよくわかっていませんが、遺伝的にモラハラの影響を強く受けやすいタイプの子がいるということ。
もし、モラハラ加害者の親や兄弟、親戚などに同じような性質を持つ人がいる場合は、子どもも遺伝的にパーソナリティ障害になりやすい可能性があります。できるだけモラハラから離れるのがいでしょう。
モラハラ親の機嫌をうかがう言動が見られる
モラハラ親と意見が違っても言い返すことができない
モラハラ配偶者の親族に似たようなタイプの人が多い
まとめ
- パーソナリティ障害は、遺伝と環境の両方が要因となる。
- なりやすい遺伝子を持っていたとしても、環境により抑制することができる。
- 子どもが安心して愛情を感じられる環境が必要。
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