人を陥れる心理的虐待「ガスライティング」の恐ろしい手口とは?

人を陥れる心理的虐待「ガスライティング」の恐ろしい手口とは?

ガスライティングをご存知でしょうか?

ガスライティングとは、Marriam-Webster(メリアム・ウェブスター)では次のように定義されています。

「特に自分の利益のために、誰かを著しく誤解させる行為または実践」

https://www.merriam-webster.com/dictionary/gaslighting

ナルシストや自己愛性パーソナリティ障害の人はこのガスライティングをよく使うと言われており、「気のせいだったのかな」「私が勘違いをしていたのかな」と日常で思うことが多い場合、加害者からガスライティングを仕掛けられている可能性があります。

ガスライティングの具体的な手口を見ていきましょう。

目次

ガスライティングの具体的な手口とは?

ガスライティングの手口

気付くくらいの不自然な出来事が頻繁に行われることで、被害者が自分が感じていることや記憶、精神状態が「おかしいのではないか」「自分の方が間違っているのではないか」と思わされていきます。

例えば、次のような手口で行われます。

  • あなたが精神的な病気にかかっているようだと言う
  • 周囲の人間が嘘をついているかのように吹き込む
  • 加害者が行っていることを被害者の責任にすり替える
  • 加害者が自分の行っていることを否定する、もしくはその背景(悪意など)を否定する
  • わざと嫌がることをし、被害者がそれを指摘すると被害者の気にしすぎだと言う
具体例

ガスライティングは元々は1938年の演劇とその演劇を元にした映画「ガス燈」に由来します。

ストーリーの中で夫は、屋根裏部屋で家のガス燈を操作し暗くしますが、妻には「ガス燈は暗くなっていないのにあなたがおかしい」と吹き込み、妻に自分自身が狂っていると信じ込ませていきます。

このように、ガスライターは本当はターゲットの認識や記憶が正しいことを知っていながら「あなたがおかしい」「あなたの記憶違いだ」「あなたは記憶力が悪い」と言って否定します。

被害者は、自分の感覚を信じられなくなったり、自分の記憶の方が間違っていたかと疑うようになります。

他にも、わざと怒らせることをやっておきながら、そのくらいのことで怒るお前は正気ではない、病院に行くべきだと被害者側がおかしい人であるように誘導していくこともあります。

夫婦間・親子間、仕事関係者では、共有しなければならない情報をわざと誤って伝え、被害者のミスを誘発し、社会的な地位を貶めるといったことをします。

頻繁にそれらが繰り返されることで、被害者は本当に自分がおかしいと思わされ、自分が異常だということを信じるようになっていくのです。

このように、被害者の現実的な感覚を「間違っている」と思い込ませ、自滅に追い込む手法です。

葛藤ナマモノ

自分が見た現実と他人から見た現実が違うように誘導し、被害者が妄想・思い込みをしている、あるいは精神的な病気であるように思い込ませます。

モラハラ加害者の中には、証拠があるもしくは、それが真実だと知っている人に対して「そんなことはなかった」と嘘をつく人がいます。

彼らの記憶が書き換わったのではなくこれは「ガスライティング」の手口です。

目的は被害者を混乱させることにあります。

彼らは混乱が人を弱体化させることを知っています。 ターゲットの「安定」や「正常」を奪い、パニックに陥らせるために嘘の記憶を話します。

彼らは正しい記憶を知っていて「わざと」嘘の記憶を話していることを知っておいてください。

このようなねつ造された記憶を言ったときには取り合わないようにしてください。

被害を受けた場合は、あなたが安定や正常を感じることができる人や物事に目を向けて、それらを取り戻すことを優先させましょう

またガスライターは汚い争いを仕掛けてくることも知られています。

ガスライティングの発言の具体例とは?

被害者が「自分の記憶や考え方が間違っているのかもしれない」と思わせるような言葉を使います。

こんな言葉に注意!

「お前は頭がおかしい」

「みんながお前はおかしいから話を聞いちゃだめだと言っていた」

「ジョークも分からないのか」

「そんなムキになるなよ」

「ただの遊びだよ」

「もっとユーモアを勉強したほうがいい」

「あなたが神経質なんだよ」

「そんな風に感情的だから話ができないんだ」

家庭内で行われるパートナーからの心理的虐待では、加害者が使う「(被害者を悪く言う)みんな」は実際にはいないこともあります。しかし、ガスライティングを仕掛ける加害者は、周囲に被害者の悪い噂を吹聴することで、周囲の人間を操り、本当に被害者を悪く言う集団ができあがることがあります

ガスライティングの意図とは

加害者がガスライティングを行う意図は、「被害者を貶めること」「被害者を混乱させること」にあります。

自分の記憶が頻繁に間違っているとされれば、人は不安に陥ります。何が正しくて、何が間違っているのかを自分で判断することができなくなっていくのです。

被害者を不安にさせたり、パニックなどを誘発させることで、被害者を追い詰めていきます。また、嘘の情報を伝えることにより、間違った行動をとってしまった被害者が社会的に信用を失うこともあります。

ガスライティングは、被害者のみ(ターゲットのみ)にしか分からないように巧妙に行われます。

日常的な些細な嫌がらせが、加害者と被害者が二人きりのとき、密室、あるいは集団による嫌がらせ(多対一)といった場面で行われ、他の人の前では行われないことで、周囲(相手)がおかしいのか」「自分がおかしいのか」はたまた「自分が相手をおかしくさせてしまっているのか」分からなくなります

また、周囲の人間にも被害者の悪い噂を広めることで、火のないところに煙が立ち、被害者の社会的な信用を失墜させることもあります。

この場合、悪い噂を信じてしまった人があたかも証言者のようになり、信頼を回復することが難しくなります

DV加害者におけるガスライティング

DV加害者の中には、身体的暴力をふるっておきながら、自分が暴力をふるったことをきっぱりと否定する場合もあります。

DV事件の加害者の発言にも、このガスライティングが透けて見えることがあります。事件を語るときに、自分には一切の非がなく周りが悪いように言ったり、自分の暴力性を全く否定するような発言を繰り返すことがあります。

ガスライティングを受けている兆候

ガスライティングを受けている被害者には次のような兆候が現れます。(The Gaslight Effect:Robin Stern Ph.D.)

家庭内でのガスライティングのサイン
  • 自分のことを二の次に考える
  • いつも配偶者に謝っている
  • 混乱したり、頭がおかしくなる
  • 自分が神経質すぎるのではないかと自問する
  • 自分が間違っていると思うがそれが具体的に何か分からない
  • 友人や知人に配偶者のことを庇う
  • 言い訳やごまかしを避けるため、友人や知人に隠し事をしている
  • 簡単なことでも自分で決めることができない
  • 現実逃避のために嘘をつく
  • 以前はもっと楽しく、リラックスしていた、性格が変わってしまった
  • 良いことが起こっているはずなのに幸せではない
  • 喜びを感じることが難しい
  • どんなことでも正しくできない気がする
  • パートナーとしての役割を果たせてない気がする

ガスライティングを仕掛けられた被害者はどうなる?

ガスライティングの被害者

ガスライティングを仕掛けられた被害者は、自分の記憶から能力までありとあらゆることに疑問を抱くようになります。ガスライティングは巧妙に仕掛けられるため、原因を特定することが難しいからです。

「私の記憶は本当に正しいのだろうか」

「私は本当にこれができるだろうか」

「あの人が言っていることが正しいかもしれない」

まず、最初にあらわれる症状は自己不信です。

自分のことが信じられなくなり、自分自身には能力が足りないと思い心配するかもしれません。

ガスライティングを受けた人は、不安で緊張しており、また自分が何らかの病気を抱えていると思い込み、次第に精神衰弱に陥っていきます。

さらに、ガスライティングは人間関係を壊します

攻撃を受けていることに気づけたとしても、マニピュレータは周囲の人間を操作したり、悪意のある嘘を利用するために、誰が自分の敵で誰が自分の味方であるかが分からなくなります。

周囲の人間がすべて信じられなくなることもあります。

被害者が自己コントロール感を失うと、操作しやすい人間になります。

ガスライター(ガスライティングを仕掛ける人)は、被害者のコントロールに成功するかもしれません。

私のケース

夫から洗濯もののたたみ方を指摘され、その場で夫の言うとおりにやり直しました。次の日になると、また夫からたたみ方が違うと指摘されました。しかし、夫が「こうするように」と指示したたたみ方は昨日私が夫から間違っていると指摘される前にやっていたたたみ方でした。

私は夫が忘れているかと思い、「昨日このたたみ方をしていたら、あなたが違うといったからやり直したはず。そしてこのたたみ方が正しいと言っていたよ。」と指摘しました。

しかし、夫は「お前の記憶が間違っている!俺がそんなことを言うはずがない!」と怒り、結局昨日やっていたたたみ方に直しました。

夫があまりにも激怒するので、きっと私が記憶違いをしているのかと思い謝罪しましたが、おそらく間違っていたのは私の記憶の方ではないと思います。

そういったことが多々あるうちに、自分の記憶が信じられないようになっていきました

被害から抜け出した後も注意が必要

ガスライティングを仕掛けられた被害者は彼らの巧妙な嘘や記憶のねつ造により、自分自身を信じられなくなるだけでなく「誰を信じていいのか、誰を頼っていいのか」分からなくなります

人間不信の結果、頼る先を間違えて加害者に依存をしてしまうこともあります。

また、これこそが加害者の狙いでもあります。 離れた後も再び彼らの元に戻らないように注意する必要があります。

ガスライティングへの対策

ガスライティングへの対策

1.ガスライティングについて知る

ガスライティングは知識がないと自分が被害に遭っているということに気が付きにくい手口です。そのためガスライティングについて詳しく知ることが被害者が真っ先にやるべきことです。手口を知ると、事件の裁判で被告の発言などにガスライティングの手法が見て取れるようになります。

ガスライティングを知ることで、今自分に仕掛けられているのが「相手からの巧妙な罠」であることに気づけます

たとえば、彼らが「お前はおかしい」と言っているのに、病院にかかろうとすることを阻止しようとするなど行動に矛盾がありませんか?

すべての問題について、あなただけが批判、責められていませんか?

彼らの視点からのストーリーはあなたの視点からのストーリーと真逆ではありませんか?

あなたの感情は無視されたり、取るに足らないものとして扱われてませんか?

これらの自問をしてみるとガスライティングに気づくことができます。

ガスライティングを受けた被害者が加害者に依存をすると、加害者から「見返り」がくることがあります
その結果、被害者は彼らを信頼することが正しいと誤って学習してしまいます。
こうなるとガスライティングからいっそう抜け出すことが難しくなります。

ガスライティングを知り、自分自身を教育してください。
知識は誰が自分を操作しているのかに気が付き、加害者を見抜くことに繋がります。

ガスライティングに役立つフレーズ
  • 私の感じ方をコントロールしようとしないでください。これが私の気持ちです。
  • 私が感じていることを軽視するなら、会話を続けません。
  • あなたの気持ちはあなたの気持ちです。私の気持ちとは違います。

2.無視する

ガスライティングを仕掛けられた場合、加害者は被害者に(嫌がらせを)意識するように仕向けます。そして、自分たちは何もしていないそぶりをしながら被害者が自滅するように追い込んでいきます。つまり、気にすれば気にするほど、加害者たちの意図にハマってしまうことになります。

そのため一番いい対策は、徹底的に「無視」をすることだとされています。

3.コミュニティから外れる

ガスライティングはある一定のコミュニティの中で発生することがあり、集団の力によってあなたへの被害が黙認(抹消)され、あたかもなかったことにされる場合があります。

コミュニティの中で集団によりガスライティングが行われる場合、ガスライティングが黙認されているか、もしくは積極的に推奨されていることすらあります。いずれにせよ、良い環境であるとはとても言えません。

このコミュニティが、そういう集団ということを分かった上で、可能であれば、そのコミュニティから早めに去るのが良いでしょう。

集団の中でガスライティングがある場合、その集団にはガスライターをチェック・注意する機能がありません。このチェック・注意する人はかつていたとしても集団からはじかれた場合があります。
そのため、あとに残っている人たちはガスライターのイエスマンか、ガスライターの行いを恐れて声をあげることができない可能性があります。

4.コミュニティの外に訴える

また、そのコミュニティからどうしても抜け出すことが難しいような場合、いくらこのコミュニティの中で被害を訴えたところで、あなたの言い分が認められることはほぼありません。コミュニティの中ではなく、コミュニティの外にいる人に訴えるようにしましょう。外からの力を借りてコミュニティから抜け出しましょう。

その時に、ガスライティングを証明する物理的な証拠があるとなおいいでしょう。

5.家庭内の場合は?

ガスライティングは夫婦間、あるいは親子間で行われることもあります。DVやモラハラにおいても、ガスライティングが行われ、犯罪にならない程度に日常的に嫌がらせを受け続けることがあります。犯罪にならない程度のため、警察に訴えてもその程度のことだと片付けられてしまう場合もあります。

できれば、家庭外で頼れる先を見つけておき、いざとなれば抜け出せるように準備を整えておくことをオススメします。

ガスライティングを仕掛けた加害者はどうなる?

残念ながら日本にはこうした心理的な虐待を裁く法律はなく、被害者が加害者から逃げ出すことが取られている一番の解決策です。

加害者には何の制裁も加えられないため、加害者が「ガスライティング」をしたことによって何らかの不利益を被ることは稀です。

まとめ

ガスライティングは、真綿で首を絞められるように、じわじわと追い詰められ被害者の自滅を誘います。被害者はいつの間にか自分軸を失い、その環境ではあたかも加害者の言うとおりの人間になってしまうこともあります。

もし、被害者に何らかの不幸があったとしても、加害者側が反省したり後悔することはまずありません。

加害者にやり返したければ、あなたは不幸になってはいけません。

幸せになれる環境へ進みましょう。

ガスライティングを仕掛ける人の中には、被害者にガスライティングをしながらそのテクニックを磨くことに力を注いでいる人もいると考えられています。 時間の経過とともに彼らの心理操作テクニックは向上する可能性があります。逃げられなくなる前に逃げ出すことです。

また、加害者が仕掛けてくる心理的虐待の手口はこれだけではありません。

自己愛性パーソナリティ障害の記事にまとめてありますので是非、ご覧ください。

人を陥れる心理的虐待「ガスライティング」の恐ろしい手口とは?

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメント一覧 (1件)

  • 加害者にやり返したければ、あなたは不幸になってはいけません。
    幸せになる環境へ進みましょう。

    の一文で、涙があふれでました。

    もっと勉強して、自分の苦しみがなんだったのか、知りたいです。よろしくお願いいたします。

コメントする

目次
閉じる