愛着障害という言葉を聞いたことがありますか?あまり耳慣れない単語だと思います。
まず最初に言っておかなければならないのは、障害という言葉が出てきますが生まれ持ったものではないということです。
モラハラや虐待、毒親の根本的原因にはこの愛着障害が関係しています。なぜ夫はああなのだろう、なぜ職場のあの人はああなのだろう?という疑問はこの愛着障害を知ることで解決できると思います。
愛着障害とは?
愛着障害とは、幼いころに養育者(主に親)から愛情を受けられなかったために、他者に対する安心感、安全感を育くむことができずに起こる障害のことです。
愛着障害は0~3歳の間に養育者との健全な関係を育めなかったことにより引き起こされます。
しかし、3歳以前の記憶というのは、ほとんどの人はあまり残っていません。
ですので本人もなぜこんなに生きづらいのか、人とのかかわりをうまく持てずに苦しんでいるのか思い当たる点がないまま、苦しさを抱え込んでいます。
愛着障害の症状
愛着障害を引き起こした場合、責任感や自己肯定感、自尊心、情愛、相手を尊重する気持ちなどが成長せず、他人とうまくかかわることができません。
具体的には、
特定の人と親密な関係を築くことができない、
人との適切な距離が分からずに初対面の人にもベタベタするといった行動が見られ、
親との関係が原因で他人とも不安定な人間関係しか構築できません。
- 特定の人と親密な関係を築くことができない。
- 恋人に対して離れていかないかどうかわざと困らせるようなことをしたり、わざと傷つけるなどと言った試し行為をする。
- 人と親しい関係になるのを避ける。
- 他人の顔色を窺ったり、他人からの評価を異常に気にする。
- 本当は自己肯定感が低い。
- 人に適切に甘えたり、頼ったりすることができない。
- 他人に助けを求めることができない。
- 自分の気持ちを押し隠し、相手に合わせようとして失敗する。
- 拒否されたり、否定されることに極端に傷つく。
- 人との距離感が分からずに、ベタベタする近寄りすぎる。
- 衝動的、破壊的行動をする。
- 人からの注目を集めるためにわざと悪いことをする。
- 親に対して怨みの感情を持つ、または過度に従順になって親の顔色をうかがう。
- 親の期待に応えられない自分を責める。
- 0か100かで考える。
- 自分の選んだものに対する評価が過度に低い。(自分で物事を決めることができない)
愛着障害が起こる原因
主に長期間にわたるネグレクトが原因であると言われています。
しかし、ネグレクトがなかったとしても愛着障害を起こすこともあります。
いくら泣いても抱っこしてもらえない、親が話しかけたり笑いかけたりすることが極端に少ない場合などです。
たとえば、厳しすぎる親や模範的・理想的な子育てを追い求める親も愛着障害を引き起こす原因になります。
他にも気分によって態度を変える親や、精神的に不安定であった親によって長期的に安定した育児を受けられなかった場合、幼いころに親と死別した場合、親が病気等で育児が十分でなかった場合も愛着障害を引き起こすと考えられています。
兄弟間で差別的な扱いを受けて育った場合も愛着障害を引き起こすことがあるそうです。
なぜ親との関係が大事であるのか?
3歳までに養育者である親とうまく関係をつくれないと、なぜのちの人生の人間関係全てに影響が出てくるのでしょうか?
それは、生まれて初めて接する人間関係は親と自分であり、それが人間関係の基礎になるからです。この段階で愛着障害を引き起こしてしまうと、人間関係というのはすべてそういうものであると学習してしまい、成長して大人になったあとですらその影響を引きずってしまいます。
子育てをしたことのある人は、「安全基地」という言葉を聞いたことがある人も多いかと思います。赤ちゃんは、何が危険であるかを自分で判断することができません。そこで周囲の反応を見て危険を判断するのです。
赤ちゃんは親や周囲の反応をよく観察しています。成長していく段階で周りの人の反応を見ながら、他の人が驚くことは危ないことであり、他の人が喜ぶことは良いことだと学んでいきます。
そして、養育者である親が自分に話しかけ笑顔を見せてくれることで、愛情を学んでいくのです。
何か危ないことをしようとすると親が教えてくれ、止めてくれます。そうすることで、親のそばにいれば安全であると赤ちゃんは学びます。親のそばにいればいつも安全で安心です。親は赤ちゃんにとっての「安全基地」になります。
赤ちゃんが成長していくと社会とのかかわり方も広がっていきます。社会に出たばかりの子どもはまだ、外の世界においても何が安全で何が危険であるか分かりません。しかし、親のそばにいれば安全だということは知っています。
子どもは好奇心旺盛なので、親から離れて社会と関わろうとします。いろんなものに触って何であるのかを確かめようとします。他の人にも近づいていきます。
そのときに危険であると判断すればまた「安全基地」である親のそばに戻ります。
そうして安全基地から離れたり戻ったりして、今度は自分の目で危険と安全を判断していきます。親と一緒に社会に出ていくことで、安心して社会とのつながりをつくることができるのです。
愛着障害を引き起こしている場合、この「安全基地」がない状態ということです。社会に出ていくときも安全である場所がどこか分かりません。自分が安心して立っていられる場所はどこにもありません。
なので愛情を得ようとして初めての人にも仲のいいようにベタベタとふるまったり、逆に警戒しすぎて近づかなかったりします。安全や危険を教えてくれる人がどの人かわからないので、周囲の目をやたらと気にして安全を確認しなければ気が済まなくなります。また周囲が見てくれていなければ不安になるので、人目を引こうと問題行動をすることもあります。
こうして愛着障害を引き起こした子どもは、適切な人間関係を築くことができないまま大人になります。愛着障害の影響が成長で消えることはありません。
虐待、モラハラ、毒親などの不適切な人間関係の問題は総じて、このように適切な人間関係を学ぶことができなかったことが原因であると考えられるのです。
大人になってから愛着障害を治療することはできる?
愛着障害を引き起こす原因は、「安全基地」がないからでした。
大人になってからも親との関係を修復することで愛着障害を治療することができるそうですが、親自身が問題を抱えている場合が多く、親に理解してもらうことや改善を求めることは非常に難しいと言わざるを得ません。
その他には、「安全基地」となってくれる友人やパートナーを見つけることも効果的だそうです。
多くの場合は、自分が適切な人間関係を学んでこれなかったことを知りません。それは物心つく以前のできごとだからです。
まずは自分の体験がどういったものであるのかを振り返り、愛着障害を自覚することが必要です。そしてそれはまた、自分の子どもを愛着障害にしないためにも大切なことです。
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