夫は毎回と言っていいほど、調停の場で主張書面を提出してきました。
主張書面を出したほうがいいのか、はたまた出さないほうがいいのかは、考え方と戦略によるため一概には言えません。私の弁護士は主張書面は極力出したくないという考えでしたが、相手弁護士は違ったのでしょう。
言った言葉と違って提出した文章は形に残ります。
前回と今回と真逆のことを言っていたとしたら、それがハッキリとわかるのもまた文章の怖さです。
私の体験談 ~嘘と真実が入り混じったため、自分で自分の主張を覆した夫~
夫側は最初は私が勝手に子どもを連れて出ていったと言っていたのにもかかわらず、次に経緯を説明する文章には、「話し合いの末、別居することになった」(これも違い、本当は追い出されたのですが…)と内容が変わっていました。
夫は、経緯をその都度その都度、自分の主張したい内容や目的に合わせてコロコロと変えてきていたのです。
初めに仕事から帰ってきたら妻と子どもが消えていたという創作ストーリーを書いたのは、自分が被害者であることを強調したかったのだと思います。そして、勝手に連れて出ていったのであれば元の場所に子どもを戻すのが妥当だと主張するためだったのでしょう。
しかし、片方の意見だけで話が進むわけではありませんし、私の方だってそれが誤りであることを指摘します。
すると、今度は私の方から追い出されたという主張がされてしまうとまずいと思ったのでしょう。次の文章では「話し合いの末、別居した」ことにし、きちんと話し合いという手順を踏んだことを主張してきました。
確かに離婚の話し合いをした末に、追い出されて別居が始まったので完全に誤りだとも言えません。成り行きだけ見れば「(離婚の)話し合いをして、(追い出す形で)別居した」のですから。
そして、この文章の中で夫は決定的なミスをしてしまうのです。
それは「(別居に当たって)妻が子どもを引き取ることに合意した」と自ら書いた文章に盛り込んでしまったことです。
つまり、夫は別居に当たって子どもを(一時的にでも)妻が引き取ることに納得したということです。これは、相手の主張にあった「妻から子どもへの虐待」について「緊急性がない」と判断される材料になりました。(あくまでの私のケースです。その他のケースで同様になるとは限りません)
夫側から「虐待をする母のそばにいれば子どもたちが危ないので、すぐにでも子どもを引き渡すように」という主張がされていましたが「その必要がない」ことを自らの文章の中で証明してしまっていたのです。本当に危険性があるのであれば子どもを連れて行くことに合意などできないはずです。
これが文章で提出されたため、あとで撤回することが難しくなりました。形で残る文章は「言った言わない」のように発言を覆すことが容易ではないからです。
こうして、子どもの引き渡し、子どもの監護権については、このまま私が監護を続けるという形で話し合いが終わることになりました。
弁護士の先生が指摘した「夫の文章から見える真実」
弁護士の先生はこの文章について「なぜこの文章が調停に出てきたのかが分からない」とおっしゃっていました。
というのも夫側にも弁護士がついていたからです。
調停の場でも戦略が必要です。話したいことをすべて話すことが良いわけではありません。もし自分に都合の悪いことがあれば(いいか悪いかは置いておいて)黙っておくのがセオリーだからです。
本当に夫が虐待のため子どもを引き渡さなければならないというストーリーを作りたかったら、今回の文章は余計です。
それこそ最初の主張のように「家に帰ったら妻が子どもを連れて消えていた。子どもは妻から虐待を受けていて、子どもの身が危ないからすぐにでも引き渡してほしい」の方がストーリーとしては矛盾がありません。
しかしこの話は嘘だったので、本当の話を少しずつ入れていくうちに真実の部分と嘘の部分の間に矛盾が出てきてしまったのでしょう。
そして、それが夫が主張したい「子どもの引き渡しの理由」が揺らぐ原因になりました。
これを私の弁護士はこう指摘しました。
最初から本当の経緯を弁護士に話し「言うべき内容」と「黙っておくべき内容」を弁護士がアドバイスし戦略を練っておけば、矛盾しないように主張をすることができたはずです。
しかし、弁護士にも嘘の経緯を話していたため、その嘘を信じた弁護士が夫の主張が通ると判断し、「子どもを引き渡すことが妥当である」という主張文が調停の場にも出てきたのではないかと推測しました。
最初から「子どもを連れて行くことに合意していた」という話を弁護士に伝えていたら、おそらく「子どもの引き渡しは難しいですよ」と弁護士からアドバイスをもらうことができたのではないかと思います。
推測にすぎませんが、夫だったらやりかねないなと思いました。
調停で、嘘はダメ!絶対!
自分が主張したい内容に合わせてストーリーをでっちあげてしまえば、いずれほころびが出てバレることになります。
調停の話し合いは、高圧的な態度に出れば有利に進むとか、悲劇的な話をすれば調停委員の同情を引いて味方してもらえるとか、そういうことはありません。
誠実な態度で臨むことが問題解決の最短ルートです。
そして、調停に文章を提出するのであれば、あとで撤回することが難しいことを頭に入れておきましょう。どうしても出さなくてはいけないときには、必ず推敲を重ねてから出すようにしましょう。
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何で本人はその矛盾に気づかないんだろう?
話を作ってしまえば、嘘を繰り返すうちに矛盾が出てきます。そして、夫のように文章で提出されたものは、その矛盾まではっきりと形に残るのです。
不思議なのは、自分が過去に出した文章を見て、その矛盾になぜ自ら気づかないのかということです。
戦略など何もなく、発作的に嘘をついているとしか考えられません。
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