DVやモラハラをする人は総じて、感情表現が苦手、もしくはうまくありません。その理由や改善するための方法を説明します。
感情は生まれ持ったもの、言葉は生まれてから身につけるもの
「喜怒哀楽」という感情は、生まれながらにして身につけています。赤ちゃんは誰にも教えられることなく生まれてすぐに泣くことができます。また、笑うことも本能的に備わっており、生まれてすぐに見られる「新生児微笑(背尻的微笑)」だけでなく、生後2~3カ月くらいになるとあやしてもらったときや親を見つけたときなどにニコッと笑う「社会的微笑」が見られるようになります。
一方で、言葉を話し出すのは早くて1歳前後です。そして、親や周囲の人間が話す言葉を聞きまねることで身につけていきます。言葉はインプットがあって初めてアウトプットにつながります。これが、喜怒哀楽の感情と違う点です。
言葉は学習によって発達する
子どもが椅子から落っこちそうになったとします。とっさに親が受け止めてどこも怪我をすることなく済みました。しかし、子どもはワンワンと泣いています。それはなぜでしょうか?
子どもは、落ちるかもしれなかった、けがや痛い思いをするかもしれなかったことが怖くて泣いているのです。
この時に親が「怖かったね」と子どもの気持ちを代弁してあげ、その怖いという気持ちを受け止めてあげると、子どもはこのときの感情は「怖い」という言葉で表現できることを理解し、また「怖い」ときに「怖い」と表現してもいいと学習します。
一方で、このときに親が「怪我もしていないのに泣くんじゃない!」と言ったらどうでしょうか。子どもはなぜ泣きたい気持ちになったのか、この気持ちの正体がなんであるのかを知ることができません。また、けがをしていないときには泣いてはいけないと学ぶことになります。こういったことが続くと、自分の中から湧き上がった感情は外に出してはいけないと学び、次第に適切な感情表現ができなくなっていきます。
感情は言葉にすることで初めて適切な表現になる
感情は目で見ることができません。そのため、何らかの手段を使って表現しなくては相手に伝わりません。
喜怒哀楽の感情は内側からやってくるものであり、どんな感情を持ったとしても否定されるべきものではありません。しかし、感情を表に出すときに誤った表現方法を使ってしまえば、不適切だと見なされてしまいます。
たとえば、イライラしたときに、大声で怒鳴ったり、物を蹴ったり、人を殴ったりすることは不適切な表現方法です。たとえイライラしたとしても、人を脅かしたり危害を加えてはいけません。
感情を伝える方法として適切なのは、自分の気持ちを言葉にすることなのです。
しかし、感情=言葉ではない。言葉に置き換えるには学習・訓練が必要
感情はもともと生まれ持ったものである一方で、言葉は後天的に身につけるものです。言葉は学習や訓練によって身につけるため、適切な学習や訓練がされなければ湧いて出てきた感情を適切な言葉に置き換えることができなくなります。
2歳前後の子どもは、気に入らないことがあると癇癪を起し、手が付けられなくなることがあります。これは自分の感情を適切に表現することがまだできないからです。しかし、大人になっても自分の感情を適切に表現できない人もいます。
子どものうちに正しい言葉に置き換える学習や訓練をしてこれなかった人は、たとえ肉体的に成長したとしてもその能力を身につけていません。適切な言葉を知らないので、言葉によって相手に感情を伝えることができません。
ましてや、感情を表現したときに暴力やモラハラに遭っていた子どもは、それを適切な感情表現であると誤って学習しています。
そのため感情が湧いて出たときにDVやモラハラ、暴力と言った別の形で表現されてしまうのです。
感情を抑え込もうとすると、不適切な感情表現を覚えることになる?
特に「恐怖」の感情を抑えようとすることは一番弊害をもたらすのではないかと考えられます。なぜなら恐怖は自分の生死と密接にかかわる感情であるため、自分の命が脅かされているのにもかかわらずそれを抑制しなくてはいけないのは最も大きなストレスになるからです。
幼いころ、家庭内のDVを見た子どもがのちにDV加害者になる確率が圧倒的に高くなる理由は、暴力を見るときに感じた恐怖心を、被害を避けたり親に心配をかけまいとして抑え込まなくてはならなかったことが原因であると考えられます。
そして抑え込んだからと言ってなくなるわけではなく、大きくなって自分が家庭を持った時に、そのときのストレスを同じように暴力という形で発散してしまうことになるのです。
まずは子どもの頃の自分と向き合おう
改善の第一歩は、子どものときに辛いと感じたその時の気持ちを適切な言葉で表現することです。「悲しい」「つらい」「怖い」気持ちを自ら認め、言葉にして表現していくことで、感情を抑制するのではなく、外に発信し昇華する方法を学んでいきます。
感情を抑制しなくてはいけなかった過去のトラウマと向き合い、適切な方法でアプローチすることで、その後の行動の大きな改善につながるでしょう。
適切な感情表現ができない人は、過去のできごとの中に必ず自分の感情を抑え込まなくてはならなかった経験があります。それを見つけ、その時の自分の本心を癒すことが改善の第一歩なのです。
まとめ
DVやモラハラを改善しようとするとき、爆発的な感情を抑えるための努力をしてはいけません。感情は否定や抑えることで無くすことはできないからです。
喜怒哀楽の感情は悪いことではありません。むしろ人間らしく人が人であるために必要なものです。
大切なのは、感情が湧いて出たときにそれを表現する適切な方法を学ぶことです。
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