モラハラ加害者たちは些細なことで怒り出し、その怒り方も普通の人の何倍もの大きさで表現します。彼らはとても短気で、感情のコントロールが苦手なように見えますが、実は怒る場所も使い分けができることから、コントロールが可能であることも分かっています。
では、彼らの怒りは、なぜあんなにも爆発的に燃え上がり、長く続くのでしょうか?そこには、「恥」を恐れる彼らの特徴的な心理メカニズムがありました。
恥ずかしさを感じやすい人は攻撃的で他責傾向がある
wikipediaによれば、羞恥心(恥ずかしいと思う気持ち)を感じやすい人は、罪悪感を感じやすい人に比べ、攻撃的で責任を転嫁しやすいという傾向にあるそうです。
TOSCAを作成したJ.P.タングニーの研究では、羞恥心を感じやすい人は罪悪感を持ちやすい人より攻撃的で、責任を転嫁しやすい傾向があるという。 羞恥心は、外部への帰属、他者への強い焦点、復讐といった感情や行動を発生させる屈辱感を伴い易いからである。
(参照:wikipedia – 羞恥心)
また、恥は屈辱感を伴いやすく、屈辱感が人への執着や復讐を生み出すとまとめられています。
つまり、恥をかきやすい彼らは、いろいろな場面で恥や屈辱感を覚え、それを晴らそうと人に攻撃的になったり、恥をかかせた相手に執着し、復讐しようとします。また、自分が恥をかきたくないために、責任を誰かに押し付けてプライドを守ろうとするというわけです。
この中で比較されている、罪悪感ですが、羞恥心と似ているもののその発生原因が異なるとされています。
恥は「罪悪感」の真逆の感情?
恥(羞恥心)と罪悪感は、自己の否定や周囲からの孤立感を伴い、また社会的行動に繋がる感情だという点で似通っています。(社会的行動とは、他人に影響を与えるような行為を指します。)
しかし、その発生メカニズムにおいて、恥と罪悪感は大きく異なる性質のものだと考えられます。
恥は、他人から自分への否定的な評価を問題視することで生まれる感情です。
一方で、罪悪感は、自分が起こした行動に対する評価を問題視することで生まれる感情です。
この2つを同じ行動を元に分析してみましょう。
<恥を感じる場合>
自分のミスを指摘されたことを「未熟な店員」とか「出来が悪い」と周囲に暴露されたと思い込み、恥をかかされたと思います。(自分への否定的な評価を問題視「人から攻撃を受けている」「社会から排除されようとしている」と思います。)
<罪悪感を感じる場合>
お客様に対して、お釣りの金額を間違えてしまったことを悪いと思います。また、自分がやったミスを反省します。(自分が起こした行動に対する評価を問題視「悪いことをした」と思います。)
そして恥と罪悪感では、そのあとに見られる行動や反応も大きく異なります。
罪悪感を感じた場合は、謝罪や懺悔をする、行いを反省するといった行動がよく見られる反応です。
一方で、恥を感じた場合は、その恥の事実を隠そうとしたり消そうとしたりする、逃げたいと思う、恥をかかされたことに怒りを感じるといった反応が起こります。
つまり、モラハラ加害者たちがすぐにカッとなって怒鳴る原因には、できごとの結果、自分が他者から恥をかかされたり、貶められたり、排除されようとしていると思い込み、その事実を消そうとする心理メカニズムからモラハラ行動に繋がるからだと考えられます。
なぜモラハラ加害者は恥を感じやすいのか?
モラハラ加害者(自己愛性パーソナリティ障害)の人は、恥をひどく恐れる特徴があります。
精神分析医のアンドリュー・モリソンは、恥や羞恥心といった感情は自己愛が傷つくときに生じると考えました。
たとえば、その道のプロの人が、ほとんど素人の人からミスを指摘されたら、とても恥ずかしい思いをしますよね。逆に指摘された人が素人であれば、ミスを指摘されたことで恥ずかしいとは思わないはずです。「失敗もあるさ」と笑って流せるでしょう。
ミスがあってはならないプロの人と、やり始めたばかりの素人では、同じミスをしたときにかく恥の大きさは異なるわけです。それはその分野に対するプライドの大きさに違いがあるからです。
プライドの高い自己愛パーソナリティ障害の人にとっても、「人から恥をかかされることはあってはならないこと」だと言えます。ましてや、彼らは周囲の人間を自分より劣っていると思い込んでいます。自分より下の立場の人からミスや失敗を指摘されることはプロが素人にミスを指摘されるように大きな恥をかかされます。
人から認められたいという感情が強ければ強いほど、恥をかくまいとしますし、恥をかくような場面に対して強い緊張や恐怖が付きまとうようになります。
恥と自己愛は表裏一体の関係であり、自己愛性パーソナリティ障害の人は、いわば一切の恥を感じさせない人間としてふるまおうするために自己愛の強い尊大な人のように見えるのです。
本心ではとても恥を恐れています。
幼少期に親から恥をかかされてきた経験も関係している
また、恥ずかしいという感情をうまく処理できない背景には、幼少期に親から恥をかかされやすい経験をしてきたと考えられています。
日常的に親から侮辱や暴言を受けてきた場合、「自分は恥ずかしい存在だ」という意識が根底に根付いてしまっています。
抱えている劣等感を些細なことで刺激されるために、人からの評価に過敏になり、傷つけられる前に傷つけてやろうと攻撃的になります。
投影という心を守るメカニズムが絶えず発動するのも恐怖から身を守るため
自己愛性パーソナリティ障害の人は、「投影」と言って自分の悪い部分を他人に押し付けます。そのために、事実とは真逆のことを言ったり、自分の欠点を人の欠点のように言ったりします。
私の元夫は、家族で出かけていた時に外出先でケンカをし、腹を立てたことで、自分1人で帰宅してしまったそうです。しかし、夫は私には、義父が勝手に帰ってしまい、家族全員が困ったとすり替えて話をしていました。(後日、義実家での集まりで真実を知りました。)自分がやった悪いことですら、人がやったことにできるのは、自己愛性パーソナリティ障害の人特有の行動であると思います。
恥と向き合うことがうまくないために、恥をかかされた時にはその出来事自体を無かったことにしようとしたり、過度に自分を守ろうとして攻撃的になります。また、ときには夫のように自分がやったことですら人に押し付けて嘘をばらまきます。
彼らは何よりも「自分が恥をかかないこと」が重要であり、そのためには、事実の方を捻じ曲げたり、人を攻撃したり、ストーカーなどの犯罪行為ですら(彼らの中では)正当化されます。
恥を使えばモラハラ加害者の方からいなくなる
彼らは、自分に対して恥をかかせてくる相手はすべて敵であり、攻撃対象です。しかし、相手に勝てないと分かれば、更なる恥をかかされないために慌てて逃げだすという特徴も持っています。
一方で、モラハラのターゲットとするのは、自分に恥をかかせない人です。羞恥心を感じたときに、モラハラをすれば発言を撤回してくれたり、謝罪をしてくれる人はターゲットになります。恥をかかさそうになったときの自己愛を守ることができますし、モラハラをして気分良く終われるからです。
- 人前で嘘を指摘する
- 怒りを表現することがうまい、怒りの瞬発力がある
- 公の場で事実をさらす
- 集団である
といった人や条件に、モラハラ加害者を引きずり出しましょう。勝てないと分かったモラハラ加害者があっという間に逃げていきます。
彼らは恥を恐れています。恥をかかせて来る人も恐れています。
いつも恥をかかせて来る人は、ターゲットにはならず、むしろモラハラ加害者の方からいなくなってくれるでしょう。
罪悪感を持たないので、「悲しみ」を訴えても無意味
また罪悪感は、似ている感情ではありますが発生メカニズムが違い、自己愛性パーソナリティ障害の人は罪悪感を持ちにくい(ほとんど持たない)と言われています。
そのため、彼らの罪悪感に訴えてモラハラをやめてもらおうとすることには意味がありません。
悲しさや苦しさ、怒りを伝えたところで「悪いことをしたな」と思うこともなければ、相手の痛みを感じ取り、モラハラを改善しようとすることもありません。
逆に彼らの支配欲を満たし、モラハラがエスカレートする可能性すらあります。
まとめ
モラハラ加害者はストレスを感じる時点で普通の人と違う反応をすることを「恥」と「罪悪感」との違いからお判りいただけたでしょうか?
まずこのストレスをためやすい思考回路を自覚して、変えていかなくてはモラハラの改善は望めません。
そして、恥をかかされることを恐れている彼らは、恥を与える人からは逃げて行きます。この性質を利用して、恥をかきそうな場面でのフォローを辞めたり、恥をかかないようについている嘘を指摘することでモラハラ抑制効果が見込める場合があります。
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