DVやモラハラは被害者自身も自分が被害に遭っていることに気が付かないことが多いと言われています。暴力を受けていても骨折するほどではない怪我だからDVには当たらない、とかモラハラでもどこにでもある夫婦喧嘩だと捉えていることがあります。特に、被害が長期的に続いている場合、その被害すら被害者にとって「日常」である場合が多いのです。
私自身も被害に気が付いたのは夫から離れた後でした。
もし、何らかのきっかけで加害者から離れることができれば、被害を自覚するまでそんなに時間はかからないかもしれません。しかし、離れることができない場合、被害に気が付くことができずにDVやモラハラなどの虐待行為がエスカレートし続けます。
あなたやもしくは傍から見てDV被害に遭っている人に被害を自覚させるためにはどうしたらいいでしょうか?
被害に気が付くために国連の家庭内暴力でまとめられている質問を紹介します。また、DVについて知っておいてほしいことをまとめました。
もし、あなた(やあなたが被害を自覚してほしい人)がこれを見てとてもよく当てはまっているのであれば、あなたは虐待行為の被害者です。
こんなサインがありませんか?
(1)頻繁に事故に遭い、怪我をしている
(2)夏でも長袖など肌の露出が少ない服を着ている
(3)連絡が取りづらくなっている
(4)いつも出掛けるときは配偶者を連れている(一人で公の場に出かけることがほとんどない)
(5)お金やクレジットカードを持たされていない
(6)性格が大きく変わった
(7)頻繁に配偶者に連絡を入れるようにしている
(8)「夫に聞いてから」と配偶者に許可をもらうことが習慣になっている
DV・モラハラ・虐待に遭っているサインを見抜く22つの質問
あなたについての質問
(1)あなたは配偶者のことを恐れていますか?
(2)あなたは配偶者が怒り出すことを恐れて特定の話題(たとえばお金の話題など)を避けますか?
(3)あなたは自分が何かおかしいのではないかと思いますか?
(4)あなたは自分のことを無力だと思いますか?
(5)あなたは配偶者に対して自分が正しいと思っていることをしようとしてもできないと感じますか?
配偶者についての質問
(6)あなたの配偶者は、あなたを怒鳴りますか?怒鳴らなくてもあなたを傷つけたりバカにする言葉を言ってきますか?
(7)あなたを批判したり、貶したりしますか?
(8)友人や親せきの前であなたをひどく扱いますか?
(9)あなたの意見や努力、成果を無視しますか?
(10)配偶者がしたことについて、あなたのせいにしますか?
(11)あなたのことを人ではなく、物や財産、性的欲求を解消する道具とみていますか?
(12)セックスを強要しますか?
(13)感情の起伏が激しく、何をしでかすか分からない面がありますか?
(14)あなたを傷つける、もしくは、あなたを傷つけるそぶり(殴る真似など)をしますか?
(15)子どもやペットに危害を加えると脅す、もしくはそれを想像できる言葉を口にしますか?
(16)あなたが離れていこうとしたときに「自殺する」と言いますか?
(17)あなたの持ち物を壊しますか?
(18)嫉妬深く、あなたのことを独占しようとしてきますか?
(19)あなたがどこに行くか、誰と会うかを細かく詮索しますか?
(20)あなたが出かけることを制限しようとしますか?
(21)親兄弟、親戚、友人と会うことを制限しようとしますか?
(22)お金や車、公共機関などを使うことを制限しようとしますか?
質問の結果
(6)~(11):精神的DV
(11)~(12):性的DV
(13)~(17):身体的DV、脅迫
(18)~(22):社会的DV
(22):経済的DV
(参考サイト:国連 – 家庭内暴力とは)
DVについて知っておかなければいけないこと
暴力に「マシなケース」は存在しない
身体的DVは事件のニュースやテレビで取り上げられている事例をみると、自分のケースはそれよりも軽く、我慢すべきことだと思ってしまいがちです。とくに精神的暴力は身体的暴力よりも被害が軽いように思われがちです。しかしあらゆる暴力について、「マシである」といったものはありません。
被害にさらされている被害者は、ときに「生きていけなくなるかもしれない」というほどの恐怖を味わいます。それは、肉体的な暴力を受けていなかったとしても、肉体的な暴力の程度が軽かったとしても、決して軽い被害ではありません。
DVは必ずエスカレートする
また、暴力を受けたのはまだ数回程度である、といった場合であっても危険です。DVはエスカレートしていきますし、短期間で頻度や程度が極端に悪化することもあります。結婚して最初の数年は暴力がなく、その後年に1,2回程度の暴力が始まり、今では毎日のように暴力を受けているというケースは珍しいことではありません。回数が少なくても、それは今だけの話であり、将来の暴力の回数が保障されているわけではありません。
肉体的な暴力を回避したとしても別の暴力を受けている
もし、あなたが配偶者の要求を聞くことで暴力が収まったとしても、それは暴力が「なくなった」わけではありません。暴力はあくまでも彼らの欲求や目的の手段であり、それらは一時的に収まっている状態にすぎないからです。
もしかすると、あなたが気づいていないだけで暴力を受けない代わりに別の罰を受けたりしているかもしれません。また、彼らの要求を聞くことで我慢を強いられ、自由になる権利を手放していることは、精神的な暴力を受けていることに他なりません。
身体的暴力を受けていなくてもDVはある
DVというのは身体的な暴力のみをさすと考えられがちですが、身体的暴力以外もDVであり、DVの多くは身体的DV以外のDVです。
傷が残らない身体的DV以外のDVは見落とされやすく、また周りからも身体的DVに比べてマシだと思われがちです。しかし、被害は考えている以上に深刻であり、心の傷も体の傷と同じようにすぐに治るわけではありません。多くは、離れた後も後遺症に悩まされ続けます。
さらに精神的なDV、言葉による暴力は身体的DVよりも先に始まるとも言われており、いずれ身体的DVになるとも言われています。たとえば「俺の言うとおりにしなければ殴るぞ」と言われて、あなたが相手の言いなりになることを拒否した場合、本当に殴られてしまうケースもあります。
経済的DV、社会的DV、精神的DVを受け、あなたが逃げ出せなくなった途端に身体的DVが始まるケースもあります。
DVの目的は支配とコントロール
身体的DV以外のDVであっても身体的DVと同じで、被害者を支配・コントロールすることにあります。
支配のために、あなたの自尊心を失わせること、自分から離れていかないように自立できなくさせようとします。体が拘束されていなかったとしても、自由に家から出入りすることができていたとしても、被害者は被害環境から抜け出すことが難しい場合が多くあります。なぜなら、精神的に支配・コントロールされているからです。
その他、人間関係やお金、行動などに制限をすることもあり、これらもDVであり、支配に基づくものです。
加害者は人・場所を見分けてDVをする
彼らの加害行為は、コントロール不能なものではありません。
たとえば、DVが疑われた時に警察が家に来たとき、クリニックを受診して医者の前で話す時、2面性が強い人の場合は外に一歩出るだけでぴたりと収まることさえあります。自分にとって不利に働くときには加害行為を一切出さず、さらには紳士的で良識ある人物としてふるまうこともできるのです。
周囲には、この人がそんな振る舞いをするわけはないと印象付けることができます。あなたの思い違いや、ちょっとした夫婦喧嘩のように見なされてしまいます。あなたも自分の方がおかしいのかと混乱してしまうこともあります。しかし、それこそが彼らの狙いで、あなたを陥れるための演技なのです。
また被害を受けるのは決まって、加害者に近い人物であり、多くの場合は加害者が「愛している」という相手です。妻(夫)、子ども、部下などがその被害者に選ばれます。被害者以外の人には、一切加害行為をしない(どころか、善良な人である)こともあります。
他人にDVがバレないように彼らは慎重に行動します。
見えるところにあざをつくらない、誰かがいるときにはDVをしない、怪我をした被害者が病院に行かないように促す、といったことも加害者に共通する行動です。
まとめ
DV、モラハラ、家庭内で行われるすべての虐待行為について、被害者もそれ以外の人も正しい知識を得ることが、未来の被害を無くしたり、被害から抜け出すために必要な第一歩です。
私たちは義務教育でDVについて学ぶ機会がありません。DVが何かを私自身も被害に遭うまでよく知りませんでした。
被害に遭ったときに、自分が被害者であるということ、相手から攻撃を受けていることを正しく認識するために、多くの人にDVについて知ってもらいたいです。
そして、一人でもDV被害者がいなくなること、いま被害に遭っている方が被害から抜け出せることを願っています。
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