子どもの人生を自分の人生のようにコントロールしようとしたり、人格否定や暴力暴言などで根深いトラウマを与え、子どもの人生をめちゃくちゃにしてしまう毒親。
「毒」という強烈な言葉からも分かるように、そばにいるだけで悪影響を与えてきますし、たとえ離れたとしてもその毒の影響がすぐになくなるわけではありません。
近年注目されつつある「毒親」がどんな特徴があり、子どもにとってはどんな存在なのか?
毒親についてまとめました。
毒親とはどんな親?
毒親は元々は1989年に発売されたスーザン・フォワードの著作『毒になる親 一生苦しむ子供』が元になっています。日本では1999年に発売されました。
毒になる親を略して「毒親」と呼ばれるようになりました。
この本の中で、スーザン・フォワードは虐待する親のことを「毒になる親」だと紹介しました。
毒親は主に5つのタイプに分けられます。
(1)過干渉、コントロールする親
子どものすべてを管理把握する親です。子どものことを過度に詮索し、あれこれと口出しをします。子どもは親の意見がすべてであり、親の意見に対して反論したり疑問を持つことが許されません。
過度にルールを課し、友人づきあいを制限したり、厳しい門限をもうけたりします。子どもにはプライバシーがなく、自分だけの空間が存在しません。日記や手紙を勝手に見られたり読まれたりすることもあります。
親から過度な期待やプレッシャーをかけられて押しつぶされそうになります。
子どもは本当はやりたくないことでも親にコントロールされやらざるを得なくなります。自分の人生の生きる意味を見失い、自暴自棄になる子どももいます。
中には本当の自分でいるよりも、親に喜んでもらおうとし、親の意のままに上手にふるまうようになる子どももいます。
大きくなり子どもが独立しようとすると、「親を見捨てるのか!」「今まで育ててやった恩を返せ」と言って妨げようとします。
(2)ネグレクトする親
子どもに適切な愛情を与えずに、放置・ネグレクトする親です。子どもは心のよりどころとする「安全基地」のないままに育ち、どこに居ても自分の居場所がない不安を抱えながら生きなくてはいけなくなります。
家庭にはあたたかさや温もりが感じられない場所だという認識があります。
自分の居場所をつくるために他の人の機嫌をうかがい、従順になろうとしたり(過適応)、人との距離がうまく測れずに誰にでも抱きつくなどするタイプに分かれます。
ネグレクトをされて育った子どもは「いい人」と「悪い人」の見分けがつかないために将来騙されやすくなります。
(3)暴力をふるったり虐待をする親
身体的、性的、精神的な暴力や虐待を行う親です。親のそばにいれば腹が立ち、傷つき、不安になり、何か大切なものを奪われるような気分にさせられます。
家の中は常に不安定で心配事のある場所です。親の近くにいると緊張し、リラックスすることができません。
子どもはバカにされたり、侮辱されたり、人格否定をされるなどします。暴力によって肉体的にも傷つけられます。
「お前なんか生まれてこなければよかった」「お前のせいで不幸だ」と言って、子どもの存在そのものを否定する親もいます。
(4)神様のような親
親の言うことが絶対で、親に逆らうことを許さない親です。親と言う立場を利用して、子どもを支配します。
親が矛盾したことをいったり、必要のないルールを押し付けてきてもそれに逆らうことができません。子どもは親に対してイエスマンになり、親の機嫌に振り回されます。
(5)病気の親
精神的な病を抱えていたり、人からの支援が必要な親です。情緒が不安定で健康ではありません。
子どもと親の立場が逆になり、子どもが親の面倒を見るようになります。親は自らの義務を果たすことができません。その結果、子どもが親のような振る舞いをし、自分の気持ちを押し殺したり、素直に感情を表現することができなくなります。
中には、反社会性パーソナリティ障害などを抱え、犯罪をする人もいます。犯罪をしたことを自慢したり、子どもにも犯罪を強要したりします。
日本で広まったのはいつ頃?
毒親という言葉が広まったのは、2010年を過ぎた頃からです。
『毒になる親』が発売された当初、日本ではそもそも「虐待」と言う概念がまだ薄いころであり、虐待が問題視されるようになり始めたのが2000年ごろ。
その後、
「母がしんどい」(2012年)
「うちの母が毒でして」(2018年)
などの毒親に関するマンガも登場したことで、「毒親」と言う言葉が急速に浸透していきました。
毒親が浸透した社会的背景とは?
以前は虐待があったとしてもそれを隠そうとしたり、恥ずかしいことだと自分の心の中で留める傾向であったのが、親からされた仕打ちを「暴露」するような流れに変わってきていると言えます。
虐待や毒親のエピソードが世の中に出てくると、そのセンセーショナルな内容に世間の関心が一気に集まり、話題になります。一度でもエピソードが出てこれば、多くの人が知るところとなるのです。
また一方で、同じような虐待を受けてきた人にとっては「私だけではなかった」「被害者として世の中に声を上げてもいいのだ」と救われる気持ちになることでしょう。そうすると、今度は第二の声を上げる人が出てきます。世間に広まっていくことで、「珍しいこと」ではなく、多くの人の共感を呼ぶ内容であるということが分かってきています。
こうした背景から「毒親」からされた仕打ちは個人が抱えている負の歴史ではなく、共通の体験や知識として世の中に普及するようになったのではないでしょうか。
親に対してこんな気持ちがある場合、「毒親」に当てはまっているかも?
親と言うのは、子どもに対して期待をしたり、あれやこれやと口を出してくるものです。
しかしその程度があまりにも激しいと、親に対して委縮してしまったり、親の言うままに人生をコントロールされてしまいます。
毒親かどうかと言うのは、「親のせいで生きづらさを抱えているかどうか」が見極めのポイントになります。ちょっと口うるさい親、心配性な親とは一線を画する存在です。
親へ次のような感情を抱えている場合、「毒親」の可能性があります。
- 親が怖い、親に逆らうとよくないことが起こる気がする
- いつも否定されたり、バカにされる、辱められる
- 親の過干渉が苦しい、しんどい
- 親のそばにいると緊張する
- 家の中ではよくないことが起きる気がする
- 両親間が不仲でケンカが頻繁にある、あった
- 親の言っていることの矛盾やコロコロ変わるルールがおかしいと思っているけれど指摘できない
- 親の言うことが絶対だ
- 親のことを考えると、苦しい、傷つけられる、自分の大切なものが奪われるという気持ちがでてくる
- 自立しようとすると止められる、泣き落としをされる、否定される
- 親の機嫌を取らないといけないと思う
- 自分の気持ちを押し殺してでも、親の気持ちを優先させようとする
- 親に抱っこしてもらったり、なでてもらったり、スキンシップをとってもらった記憶がない
- 親からの期待が重い、本当はやりたくないと思う
毒親とはどのように関わっていけばいいのか?
毒親の被害に遭われた方の共通の見解としては、「毒親は変わることがない」ということです。毒親が良い親になるということは極めてまれだと考えておいたほうがいいでしょう。
もし、学生であり家から出ることができないのであれば、できるだけ家の中で過ごす時間を減らしましょう。親とのかかわりを避けて、家で過ごす時間を極力少なくするのです。
社会人になり、独立することができるのであれば、早々に家を出て、自立した生活を送ることです。
毒親との正しいかかわり方は、「関わらずに過ごすこと」です。
毒親を許せない、それでいい
幼いころから受けた仕打ちを許せないでいるあなた。
親だからと言って許せないものは許せない、それでいいのです。その気持ちを大切にしてください。
「いつまでも過去のことをぐちぐちと」
「親に育ててもらったのにそれはないんじゃない」
「今のあなたがいるのは親のおかげ」
「親子だから分かり合える」
そんな言葉からは耳をふさぎましょう。
毒親からの被害は受けた人にしか分からないものです。
世の中にはおせっかいにも「親と子の断絶」が絶対に良くないことだと否定する人がいますが、そうなるにはそうなるだけの理由があったということです。親子だから分かり合えるということはありません。
また、親が子どもを育てるのは当然のことです。
そのことに恩を感じて子どもの方から恩を返したいと思うのであればいいですが、それは親が強要することではありません。
もし、親から「育ててもらった恩を返せ」と言われるのであれば、毒親である可能性が高いでしょう。
まとめ
毒親の毒のせいで、親から独立した後も苦しめられ続けている人がいます。
大人になってからようやく自分の親が毒親だと気が付いた人もいます。
「どうしてこんなにも人間関係がうまくいかないのだろうか」
「どうして自分ばかりこんなに苦しむのだろうか」
「自分が人として出来損ないなのではないか」
分からないまま苦しんで、「毒親」という言葉を知った途端に、人生が大きく好転した人もいるようです。
自分の親が毒親だと気づいただけで、気持ちが軽くなることもあります。
自分ばかりを責めることはしないでください。
まず自分の親が毒親だと気づくこと。そして、その悪影響を自ら断ち切ることです。
あなたの人生はあなただけのものです。
自分の人生を切り拓いていってください。
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