毒親が「愛玩子」と「搾取子」をつくる心理とは

毒親が「愛玩子」と「搾取子」をつくる心理とは

「愛玩子」と「搾取子」という言葉を聞いたことがありますか?「愛玩子」は「あいがんし」、「搾取子」は「さくしゅし」と読みます。

兄弟の中で特定の子どものみを可愛がり、特定の子どもを攻撃する。この時に可愛がられる子どもを「愛玩子」、攻撃される子どもを「搾取子」と呼ぶそうです。

「愛玩子」と「搾取子」は反対の役割を担いますが、同時に「対」の存在でもあります。

目次

「愛玩子」と「搾取子」それぞれの役割は?

愛玩子はゴールデンチャイルド、搾取子はスケープゴートと海外では呼ばれています。

愛玩子と搾取子を作り兄弟間で差別をしながら子どもを育てる親は日本に限ったことではないようです。

愛玩子の役割

愛玩子とは?
  • ペットのようにかわいがられる。
  • 過剰に服やおもちゃなどを与えられる。
  • 悪いことをしても叱られない。
  • 何をしてもいつも「優しい子」だと見なされる。
  • 親から学歴、職業、進路などで理想を押し付けられる。

愛玩子は、親にとっては自分にとって都合のいいアクセサリーのような存在で、周囲に見せびらかしたり、称賛を浴びるためのアイテムとして利用します。

お金を使い子どもを飾り立て、見栄えを良くします。また、いい親と見なされるために、仲のいい親子を演じたり、子どものことを一番に考える親としての行動をとります。

搾取子の役割

搾取子とは?
  • 服やおもちゃなどを買ってもらえない。あからさまなランク差別などをつけられる。
  • 学童期には学用品など必要なものを買ってもらえない。
  • 充分な勉強を受けさせてもらえない。
  • 愛玩子がした悪いことの責任を取らされる。
  • 家事などの労働を押し付けられる。
  • 愛玩子が悪いことをしてそれを訴えると「性格が悪い子」だといわれる。
  • お金や労働力などを搾取される。
  • 家族で出かけるときに留守番をさせられる。
  • 親から悪口を言われる。
  • 不幸の原因を押し付けられる。

搾取子は毒親のストレス発散要因です。嫌なことや都合の悪いことをすべて搾取子に押し付けます。また家庭内に惨めな存在をつくることで、親の支配力を見せつけ逆らうとどうなるかを他の子どもたちにもアピールします。その結果、子どもたちの親への忠誠心が上がり支配構造が確立します。

毒親が家庭内いじめの構造をつくる理由

なぜ同じ我が子を差別し、家庭内でいじめをするのでしょうか。

理由1:支配力を強めるため

家族が一致団結していると、毒親の子どもへの支配力が弱まります。

毒親は子どもたちが団結して自分を敵にしたり、自分に反撃してくることを恐れているため、家族を「分断」し、「征服」する方法を取ります。

たとえば、家族それぞれに別の家族が悪口を言っていたと吹き込んだり、子どもの私物を壊し、それを搾取子のせいにしたりすることで仲たがいをさせるように持っていきます。気に入らない態度をとった子どもを罰することにより、それを見ているだけの子どもも罰を避けようとし従順な味方になります。

理由2:支配から目をそらさせる

搾取子は自分が毒親から悪い扱いを受けるのは愛玩子のせいだと思い、また愛玩子は搾取子が怒られるのは搾取子が言うことを聞かないからだと非難するようになります。

きょうだいが徹底的に敵対するように仕向けることで、きょうだいの敵は別のきょうだいになります。

きょうだいを敵に仕立て上げ、毒親の支配に目がいかないようにさせることも狙いのひとつです。

理由3:同じような家庭環境で育ってきている

こういった家庭をつくる親もまた、似たような家庭で育ってきているといわれています。

家庭の中に「踏みつける人」と「踏みつけられる人」がいて、力のあるものは力のないものを「踏みつけいい」ということを学んだと考えられます。また、愛玩し、搾取子を作り差別をしながら育てる親は、自身が毒親の「愛玩子」であった可能性が高いと考える専門家もいます。

そもそも「公平」や「平等」といった概念がない場合もあります。過去の友人関係においても上下関係をつくったり、特定の友人を差別したり、お気に入りがいることもあります。

ごくごく自然にコミュニティの中で差別を作り出します

理由4:誰かを踏みつけにしなければ生きていけない

誰かを下げること、攻撃をしなければ心を保てない人がいます。毒親もまた、そういうタイプであると考えられます。常に誰かを攻撃のターゲットとし、不安定な人間関係の中でしか生きられないのです。

ターゲットは常に固定されているとは限らず、毒親の気分次第でターゲットが変わることがあります。しかし、ターゲットとなるべき人間がいなくなり、平和で穏便な関係が続くことはありません

家庭の中で特定の子どもだけが虐待されていたケースで、その子が保護された後、家庭内の別の子が虐待されるようになったという話があります。ただ、踏みつける人が変わっただけです。集団の中にいた今まで踏みつけていた存在が逃げ出すなどしていなくなれば、同じ集団の中にまた踏みつける存在をつくるのです。

理由5:自分の人生の価値を高めるため・人からの注目を集めるため

自分の人生が空虚でつまらないものであると無意識で思っているため、子どもを使って自分の人生の価値を高めようとします。学歴、職業、友人、進路などに過剰に口を出し、子どもをコントロールしたり、反対に不出来な子どもを持った親として周囲から同情されるように我が子の至らない点を人前で話したりします。

経歴や過去にコンプレックスのある親は、自分の人生のマイナス分を優れている子どもを持つことで取り戻そうとします。

この時に親は「あなたのため」と言って、行動を正当化したり、愛情を振りかざしたり、子どもに罪悪感を抱かせる方法で言うことを聞かせます

理由6:子どもは親に恩を返すものだと思っている

中には、子どもを産んだことですでに親の責務を果たしたと考えている人もいます。そして、十分な養育をするどころか、子育ての中で子どもから親への恩を返してもらおうと搾取に繋がるのです。

理由7:心理操作で子どもを操る

自己陶酔的な親である場合、自分のために子ども同士をわざと競わせます。競わせる環境をつくることで「愛玩子」も「搾取子」もどちらもコントロールすることができるからです。

「愛玩子」は自分の分身として自己愛を満たしてくれ、「搾取子」は親からの愛情を得るために献身的に働いてくれます。これらの心理操作を「トライアンギュレーション」と呼びます。

搾取子になりやすい子は?

「搾取子」は、選ばれやすいことそうでない子がいます。もちろん、どちらにせよ本人には全く何の非もありません。

1.毒親に似ている子、もしくは毒親に似ていない子

自分に似ている子ばかりを可愛がったり、反対にコンプレックスの強い親であれば、自分に似ていない子ばかりを可愛がったりします。

外見による差別

2.異性、もしくは同性

異性の子どものみを可愛がったり、同性の子どものみを可愛がったりします。兄弟間であからさまな学歴差別をつける場合もあります。(長男は大学院にまで進学させるが、長女は高卒など)

性別による差別

3.長子

「搾取子」には、長男や長女が多いといわれています。自分のことは自分でできたり、下の子どもが親に甘え上手だったりすると、毒親から「あなたはいつも甘えてこない、可愛くない」と言われてしまうこともあります。

また、長子は我慢するべきのように言われて育ち、「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」下の子に譲るのが当たり前だと差別を受けることもあります。

長子が搾取子になりやすい理由の一つに、毒親はいついかなるときも「ターゲット」がいなくてはいけないということが挙げられます。つまり最初に生まれた子どもは他に子どもがいないために「ターゲット」にされる確率が高まります。次に生まれてくる子どもはすでに「ターゲット」がいるために、「ターゲット」を免れるのです。

生まれた順番による差別

4.自分の側につかない子ども

両親間の仲がうまくいっていない場合、自分の側につく子どもを可愛がり、反対にもう一人の親に同情したり守ろうとしたりする子どもを排除しようとします。

「愛玩子」と「搾取子」は、生まれた順番や性別、外見や能力などで決まります。「搾取子」が悪い子だったからということはありません。「搾取子」になった原因は本人にはありません。

兄弟差別によって家族はバラバラに…

あからさまな差別が生むのは、子ども同士の対立です。愛玩子にとっては、搾取子は恥ずべき出来の悪い兄弟であり、搾取子にとって愛玩子は親からの愛情を独り占めする憎き相手になります。差別を受けながら育った兄弟は、大きくなってから徹底的に断絶し、連絡すら取り合わないこともあります。

支配関係は支配力がなくなったときには破綻を迎え、二度と結ばれることはありません。家族はバラバラになります。

「愛玩子」の人生はどうなる?

特別扱いをされた「愛玩子」でも、幸せな人生を歩めるとは限りません。

残念ながら「愛玩子」も決して毒親から愛されているわけではないからです。自分を引き立てるアクセサリーのような存在であり、毒親の主役はいつも自分です。

「愛玩子」は特定の子どもだとは限りません。自分の理想を外れた子どもに対してはいとも簡単に地位を落とし、「お気に入り」をコロコロと変えることもあります。

「愛玩子」が「搾取子」に責任を押し付けて育ってきた場合は、自分は何をしても許される存在だという誤った思い込みで、大きくなってからも無責任で自己中です。自分の失敗を周囲に責任転嫁し、取り返しがつかないほど人間関係を壊すことがあります。

また「愛玩子」が、毒親と一緒に「搾取子」をいじめていた場合は、ターゲットをイジメる加害者になる可能性があります。

毒親から愛情をもらおうと努力することは無意味

毒親の愛情というのはいつも「条件付き」で真実の愛ではありません。

搾取子から見れば愛されている愛玩子は羨ましく目に映ります。しかし、そこにあるのもまた、偽物の愛情なのです。

親からの愛情をもらおうと躍起になって毒親の要求をかなえてはいけません。そもそも無償の愛情というものを持ち合わせていないのだと割り切ることが必要です。

ある程度の年齢になれば離れ、自分の人生を生きることに力を注ぎましょう

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