離婚問題がこじれたときの強い味方、それが弁護士です。
私自身も調停が始まる前から弁護士の先生にお願いして、二人三脚で離婚問題と向き合っていただきました。そのおかげで納得する離婚ができたのですが、弁護士に依頼するときにはあらかじめ頭に入れておかなければいけないことがあります。
自分の体験談をもとに、弁護士に依頼する前の注意点をまとめました。
弁護士に依頼すれば、すべての厄介ごとが勝手に解決するわけではない
私が依頼した弁護士の先生が言っていた言葉に次のようなものがありました。
「離婚と言うのは、交通事故のように「あった」「なかった」という問題だけではないから難しいよね」と。
依頼した先生は交通事故の案件を専門的に扱っていらっしゃったのですが、交通事故であれば「信号が赤だった、青だった」「車は止まっていた、動いていた」といった事実を証明して、証明できた事実に基づいて結果が決まります。
しかし、離婚問題では「あった、なかった」という事実だけではなく、夫婦としての愛憎が離婚問題に複雑に絡み合っているので簡単に解決できるものではないのです。
離婚問題の根幹にあるのは感情です。人から見れば些細なことでも本人にとっては絶対に許せない問題となっている場合があります。しかし、この夫婦の愛憎については解決する法律はありません。
弁護士に依頼すればこういった憎しみの感情まできれいに清算できるかといえば、答えはノーです。離婚を専門とした弁護士であれば、感情面に配慮して話をしてもらえる可能性は高いですが、そうでなければ合理的に「それは難しいです」と言われてしまうこともあります。分かってもらえなかった、突き放された、親身になってもらえなかったと、弁護士に相談したことで余計に傷ついてしまうことにつながります。
離婚では、弁護士の先生に解決してもらおうと思っていると落とし穴にはまる可能性があります。弁護士は法律面での助言者であり、自分の感情は自分で解決するという認識でいるべきでしょう。
名を取るか実を取るかは自分で決めなくてはいけない
お金で解決できる「財産分与」「慰謝料」「養育費」などは、その金額について折り合いをつけるだけですが、「離婚理由(原因)」と「子ども」の問題はそうはいきません。
特に今の日本の法律では離婚をすれば片方の親のみが親権を持つ単独親権です。もう片方の親は我が子について、何の権利も持つことができなくなります。そして、親権者は8割「母親」が持つ結果になっているのが現状です。なぜなら、今の日本では子育てにかかわるのは主に母親であり、共働き家庭が増えている現状を踏まえても、子育ての割合が圧倒的に母親が大きいからです。別居前、離婚前に子どもを監護していたもの(主たる監護者)が親権者になります。
つまり、今の日本では、専業主夫で主たる監護者が父親だった場合、母親に何らかの問題がある場合、もしくは母親が子どもの親権者になるのを拒否した場合、夫婦間で父親が親権者になることに合意している場合くらいしか、父親側に親権がいかないのが現実です。
親権について争う場合、今まで監護にかかわってこなかった父親ができることは次の2点です。
- 親権を獲得するために、裁判を起こし戦う
- 親権はあきらめて、子どもとの面会交流の条件をよりよくすることに力を注ぐ
弁護士に相談すると、多くの場合は2をすすめられます。なぜなら、1の場合は争ったところで今まで監護にかかわってこなかった父親が親権を獲得できる可能性はほとんどないからです。そして裁判になってしまえば、裁判を起こされたことで妻側の心証を悪くし、その結果、面会交流の条件も悪くなってしまうことは大いに考えられます。(面会条件は主に月に一回程度が裁判での結果です。しかし、監護親が非監護親に対して子育ての協力を求め、非監護親もそれに同意すれば、それ以上の面会交流の条件になる場合もあり得ます。)
つまり親権で争ってしまえば、親権も取れず、面会交流の条件も悪くなってしまう可能性が高いのです。それよりは最初から親権で争わないほうが、面会交流の条件をよりいい条件にすることができ、多くのものを勝ち取れると考えられます。
このように調停委員や弁護士からは、いかに多くの「実を取る」かを説得されます。
裁判所でも(調停委員も弁護士も)「実」を重視し、それをすすめられます。「名を取る」ことをすすめられることはまずありません。
しかし、どちらを取るのかはあなた自身が決めなくてはいけません。そして「名を取る」ときは、争いは激化し、長期の戦いになることは避けられないことも覚えておかなくてはいけません。また、勝てる見込みのない裁判では弁護士側から依頼を断られる場合もあります。
弁護士を雇えば、思い通りに解決できるわけではない
実質的な被害があったとしても、慰謝料が取れない場合があります。たとえば、相手が事実を認めておらず証拠が十分でない場合、相手に支払い能力がない場合などです。慰謝料の支払いが決定したとしても相手が働いてなく貯金もない場合は一銭ももらうことができません。
こういった場合は、いくら弁護士が有能であったとしても、相手に金銭の支払いをさせることは難しくなります。弁護士が有能であったり、弁護士にお金をたくさん払えば思い通りに解決できるわけではありません。
弁護士を雇って得られるメリットとは?
私は、たくさんの選択肢を得るために弁護士を雇うと考えておくと良いと思っています。
弁護士は法律の元、もっとも「実を取る」結果を導き出してくれます。また、想定できるあらゆるパターンの結果も教えてくれるでしょう。何を選び、どうしたいのか、それは選択肢が分からなければ考えることはできません。
たとえば、裁判になればどういった点で損をして、どういう結果になると考えられるのかを事前に教えてもらえたとします。裁判になれば、金銭的にも精神的にも負担が増えるばかりではなく、結果が調停よりも悪くなるのだと分かれば裁判を避けることができます。
また、親権争いで裁判にまで発展したときに、「納得がいかないからとりあえず裁判を起こす」のと、「名を取り、勝てる見込みが少ないと分かった上で裁判をする」のとでは、結果が同じでも意味合いが変わってきます。
調停でも裁判でも、がむしゃらに戦えば勝つことができるというものではありません。
- いろんなカードの中から自分が最も納得できる結果を選ぶことができるということ
- それに向かってどんな離婚準備を進めていけばいいのかを教えてもらえるということ
これらが、弁護士を雇う利点です。
もちろん、あなたを援護してくれる強い味方でもあります。
まとめ
今現在の日本の法律があなたの納得のいくものになっていないこともあります。しかし、ルールの元で、結果は下ります。法律が変わっていくこともありますが、それには長い年月が必要です。
弁護士が提示したカードの中に、もしかしたら納得のいかないものしかない場合もあるでしょう。しかしそれが現実であれば、その中から最もあなたが納得できるものを選ぶことが、一番いい結果となるでしょう。
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