生まれ育った家庭環境が悪かったとしても、新しい家庭を持った時に、今度こそ幸せな家庭を作ることができれば幼いころ傷つけられた心も救われるでしょう。子育ては自分育てとも言われているように、子育てを通じて自分自身を成長させていく場でもあるからです。子どもを育てると同時に、自分を育て直し、不幸な体験を幸せな体験に上書きすることができます。
しかしモラハラ加害者は、新しい家庭では今度は加害者側に転じ、妻や子どもを虐げることで今までのマイナス分を取り戻そうするがごとく、躍起になってモラハラをします。
妻が子どもを可愛がれば、子どもに嫉妬し、子どもへモラハラをしたり、我が子より自分を見てもらおうと赤ちゃん返りのようなこともします。
そうして、家族を不幸にすることで、「自分が幸せになろう」とするのです。
なぜ、新たに不幸な家庭を築いてしまうのでしょうか?
かつて被害者だったモラハラ夫が新しい家庭でモラハラをしてしまう心理とは?
1.モラハラ環境を「正常ではない」と思っているけれど、「正常」が何かわからない
幼いころに傷ついてきた経験から、モラハラ環境が「正常ではない」と気づいていたとしても、モラハラ環境ではない愛情と安らぎに満ちた環境がどんなものなのかを知りません。自分が知らない、経験のない環境を一から作り出すことは途方もない労力が必要です。
それは、いままでビーフシチューを食べたことがない人が、レシピもなしにビーフシチューを作ることができないのと同じです。
愛情と安らぎに満ちた環境を経験していない人は、それを作り出すことが容易ではありません。
虐待経験者の中には、自分が親の立場になって「子どもの愛し方が分からない」と悩む人もいるそうです。それと同じようにモラハラを受けて育った人もまた、「無条件の愛情が分からない」「新しい家族を信頼する方法が分からない」のです。
モラハラ加害者の中には、モラハラ環境を「普通」であると思い続けているケースもあります。
2.被害者と加害者は同じコインの表と裏の関係
モラハラ被害者と加害者は、同じコインの表と裏の関係です。
かつて被害者であったことは、コインをひっくり返せば加害者になる、それがモラハラの連鎖の原因です。
また、現在加害者の立場である人が、いつでもモラハラ加害者であるわけではありません。ある人に対してはモラハラをする一方、別の人からはモラハラ被害を現在も受け続けている可能性だってあるわけです。
それは、コインをひっくり返せばどちらにもなるように、加害者・被害者も同じようにひっくり返せばどちらにでもなるからです。
被害者と加害者は本質的には同じ一枚のコインです。
なにかの拍子に裏返れば、「被害者が加害者に」「加害者が被害者に」なります。だからこそ、モラハラ被害を受けてきた人は、きっかけがあれば加害者に転じやすいとも言えます。
3.自分の受けた傷が痛むため、加害行為をしてしまう
そして、子どものころに傷ついた心は、大人になってから人を傷つける行動を取ってしまいます。それは、子どもの頃の傷がそのまま残っており、その傷が大人になってもなお痛むからです。
幼いころに受けた傷は、自然治癒できるほどのものであれば、時と共に回復することができます。しかし、私たちは身体的にも大きなけがをしてしまったときには、その傷が自然に治ることはありません。それと同じように、モラハラ加害者の傷は「時が経てば自然に治るほど小さなものではない」のです。
治っていない心の傷は、大人になってもなお痛み続け、その痛みがあるからこそ、人を傷つけてしまいます。
4.愛されている我が子が、愛されなかった自分の心の傷を刺激する
自分ばかりが傷を負っていて、無傷で愛される我が子のことが許せなくなり、モラハラをしてしまいます。傷ついた心は、自分の子ども時代と明らかに扱われ方が違う「別の子ども」の存在を受け入れることができないのです。
目の前で愛されている我が子は、愛されなかった子ども時代の自分をみじめにさせます。
普通であれば、子どもは無条件で親から愛されるはず。
では、なぜ自分は愛されなかったのか?
本当は自分だって同じように親から愛されたかった…!
その想いが噴出し、愛される我が子に強い嫉妬心を抱えてしまうのです。
子どもが生まれるまでは、「愛情を注ごう」と思っていたとしても、みじめでかわいそうな子ども時代の自分との違いを見せつけられると気持ちが変わります。
子ども時代に愛されなかった自分への愛情を取り戻そうと、我が子と張り合い、母親(今の妻)からの愛情を大人になった今、受けようとしてしまいます。
その結果、「母親からの愛情や関心をもらうための行動」として、モラハラや赤ちゃん返りをするのです。
5.みじめな自分を許せない
愛される我が子を見たり、愛されて育った妻を見たときに、自分の生い立ちを「みじめ」だと感じるでしょう。その時にプライドの高いモラハラ夫は、自分が相手より劣っていることが許せなくなります。
しかし、過去の生い立ちは今更努力をしたところで変えることはできません。過去は過去だからです。
過去のみじめな自分が刺激されるたびに、「昔はみじめだったが、今は違う」「今の自分は家族の中で誰よりも偉く、正しい」としてもらわなくてはいけない思いに駆られ、妻や子どもを自分より下げるためにモラハラを使います。
6.自分の居場所を確保するため
幼いころに「いい子でなければ愛されなかった」「家庭内が不安定で安らげる場がなかった」子どもは、慢性的に自分の居場所はどこにもないと思っています。
自然体でいては「居場所がない」ため、自分の居場所を作るために「人より強くなろう」としたり、「人に媚びを売って」居てもいいと認めてもらおうとします。
夫婦二人だけの場合は、家族は2人です。しかし、子どもが生まれて家族が3人以上になると、2対1や3対1のように、誰かが仲間外れにされる可能性が出てきます。(もちろん、実際に仲間外れするかどうかは関係ありません。)
「何としてでも居場所を確保しなくてはいけない」と考えるモラハラ夫は自分がたとえ仲間外れになっていなかったとしても、そうなる危険性を恐れ、「妻よりも強くなることで集団からはじかれない」自分を作ろうとします。
条件付きの愛情しか経験していない彼らは、自然体でいれば、「居場所はない」からです。
そのため、3人以上の集団になった途端に、家庭内では自然体ではいられなくなります。
家族からはじかれないように力を誇示し、自分の居場所を作るために戦う戦闘モードに切り替わるのです。
まとめ
私たちは、大人になったからと言って強くなるわけではありません。
子どものころに傷ついた心、恐怖に打ち負けた心は「インナーチャイルド」として心に残り続け、大人になってからも無意識の行動にあらわれます。
本人は、無自覚で、この気持ちの正体を知らないことが多いのです。
モラハラ加害者も、無自覚で新しい家族を傷つけ、不幸にさせてしまっていることもあるのです。
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