モラハラ加害者にモラハラを自覚させ、モラハラを治そうとすることが果たして本当にいいことなのでしょうか?
もちろん、本人が強く「治したい」と希望するのであれば治療したほうがいいでしょうし、適切なアプローチにより改善される見込みがあります。
しかし、多くの場合はモラハラ加害者は自分が加害者であることに無自覚であり、モラハラを治したいとは思っていません。
さらにはかつては被害者であり、根深いトラウマを抱えている場合があります。
モラハラを治すということは、この強大なトラウマと向き合わなくてはいけないということです。
果たしてそれが、いい結果をもたらすのでしょうか?
モラハラ加害者と片頭痛
あなたの周りのモラハラ加害者は、片頭痛持ちではありませんか?
ここで言う片頭痛とは、頭の片方に痛みを感じることだけでなく、腹痛や胸の痛み、めまい、耳鳴りと言った「体のどこかしらが痛む」「体のどこかしらが不調になる」ことが習慣的に起こることを指します。
今回の記事を書くにあたって、モラハラ加害者に統計を取って、片頭痛持ちであると調べたわけではありません。しかし、私がこう考えるのにはある理由があります。
元夫は、片頭痛持ちでした。それは私が彼と出会う前から続く、夫の持病のようなものでした。
片頭痛はなぜ起こる?その一因はストレス
医学エッセイで知られるサックス博士は彼の著書「サックス博士の片頭痛大全」で片頭痛の原因を次のように述べています。
片頭痛の最も重要な付随的原因…それは強い感情的な欲求やストレスであるが、直接の表現手段や解決策がないことから、片頭痛の発作を繰り返し起こさせるのである。
つまり、元々の原因は強い感情、ストレスだとしています。
しかしそれだけではありません。
強い感情的な欲求やストレスを表現する手段や解決策がないことから、発散することができず体の中にため込み、それをある時に解消するがごとく片頭痛となって表れると彼は分析しているのです。
上文で特に注目して欲しい箇所があります。
それは、「表現手段や解決策がない」と言う部分です。
湧き上がる感情や、日々ため込むストレスは、さまざまな原因によって引き起こされます。それらがすべて「表現手段や解決策がない」というのは大げさに聞こえますよね。
なぜあらゆる感情やストレスを発散することができないのか?
それは、私自身も体験したことから答えを導き出すことができました。
夫と暮らしている時、私も慢性的な腹痛を患っていた
私は、夫からモラハラを受けていることに気づいていなかったのにもかかわらず、夫との結婚生活で慢性的な腹痛を患っていました。
頭では被害に気づいていなかったけれど、体は悲鳴を上げていたということでしょう。
もちろん、夫からのモラハラを避けることができなかったということも解決する方法がなかった原因の1つではありますが、
なによりも「ストレスに気づいていなかった」ことがストレスを解決できない最も大きな要因であったと考えられます。
そして、夫からは私が持つ怒りや悲しみの感情を否定されました。
「そんなことで怒るなんて神経質だ」
「こどもの前で泣くんじゃない!母親失格だぞ!」
このように感情を外に出すと怒られたのです。
夫には私の悲しみや怒りの感情を受け取ってもらうことができませんでした。感情表現はしていたものの、相手から帰ってくる反応は「否定」だけ。
私の感情を夫に受け取ってもらえるように表現する方法は、やはりありませんでした。
片頭痛患者があらゆる感情やストレスに対して解決策を持っていないのは、本人が感情・ストレスに気づいていないことが原因の可能性があります。
ストレスは気づかなければ無かったことになるわけではありません。
体は頭で認識するよりも前からストレスを感知し、体の一部の痛みとなって表れます。
私の場合は、腹痛でした。片頭痛持ちの人は、それが頭痛となって表れるということです。
片頭痛持ち患者のある共通点とは?
また同書の中で習慣的に片頭痛を起こす患者には、ある共通点があると書いています。
過度に活発であったり、過度に不安がったりするどころか、多くの片頭痛患者はひどく従順で受け身にみえる(強く抑制された激怒や敵意とともに)。
また、さまざまな問題やストレスに無関心だったり、それの存在を否定する態度が際立つ患者(ヒステリー症状に類似した「解離性片頭痛」を患う患者)もいる。
別のグループの重症の片頭痛患者の中には、明らかに感情が抑圧され、自虐的で、頻繁に起こる片頭痛と事故叱責的な情動とを交互に起こす患者もいる。
ここからは、サックス博士の主張を前提として話を進めていきます。
まず、第一の共通点は、患者の性格が「ひどく従順で受け身」であるということです。
モラハラをする人たちの中には過去に自分を過度に抑圧し、周囲の意図をくみ取って「相手に合わせる」ことで、自分の居場所を確保してきたという経験があります。(過適応)
そのため自分より上の立場の人に良く従い、「従順で受け身」という一面を持ち合わせています。
サックス博士の主張に戻りますと、片頭痛持ちの患者の中には「ストレスに無関心もしくは、ストレスを否定する」、「感情が抑圧されている」グループもあったそうです。
これらもモラハラ加害者が幼いころから感情を抑圧されながら育ってきたこと(感情が抑圧されている)、さらにはそのことが原因で自分自身の感情に気づかず、時には感情を否定すること(ストレスに無関心もしくは否定する)と一致します。
夫は怒っているのにもかかわらず、自分で怒りの理由が分かっていないこともありました。そしてその原因を手っ取り早く身近な存在にぶつけて解消していたのです。
モラハラ加害者の中には、この様に育った環境が元で、
- ひどく従順で受け身
- ストレスに無関心、もしくはストレスを否定する
- 感情が抑圧されている
ケースがあると考えられます。
彼らは、モラハラ親から圧倒的な力で押さえつけられながら育ってきたため、アイデンティティが正しく成長していません。自分が無いため、主義主張ではなく損得で物事の是非を判断します。
そのため、上下関係の上のものに対してはイエスマンで、「ひどく従順で受け身」です。
さらには、自分自身が親に上書きされているため、自分のことすらよく分かっていません。本当の自分に無関心で、自己否定を重ねています。幼いころ否定され続けてきた自分の感情を、成長するにつれ自分自身で否定するようになります。
モラハラ加害者はまさに、感情やストレスを正しく表現、解消する手段を持っていない人物であり、ため込んだストレスが体のどこかしらの痛みとなって顕在化しやすいと考えられるのです。
(※片頭痛を患っている人がみなモラハラをするということではありません。)
モラハラ加害者は、モラハラでストレスを発散しているのではないの?
モラハラ加害者はモラハラでストレスを発散しているはずなので、ストレスをため込んでいないのでは?と思われるかもしれません。
しかし、モラハラをしてストレスを発散せざるを得ないほど、多くのストレスを抱えている人とも言い換えることができます。(元妻が感じたモラハラ夫の不安定さ)
被害者意識の高いモラハラ加害者は、人よりもストレスをため込みやすいという性質も持っています。
こちらの記事(ストレスフルな社会を生き抜く方法)でも書いたように、考え方ひとつでストレスのたまりやすさは違います。
モラハラ加害者は、「人のせい、人のせい」と考えるあまりに自らストレスをため込む思考をしてしまっているのです。
そしてそれだけではありません。
モラハラ環境で育ったことで人を信頼できず、どこにいても安心できるところがありません。野生動物のようにいつ敵に狙われるのか分からいため常に周りに目を配り、いつどこで誰といても、警戒し続けなくてはならないのです。
こうして慢性的なストレスを抱えることになります。
モラハラ加害者とトラウマ
モラハラ加害者は、過去にはモラハラ被害を受けた被害者であり、そのことで慢性的なストレスを抱えることになったと同時に、過去の被害者体験がトラウマとなって残っています。
過去のトラウマに対しての反応は二種類あり、
- トラウマを鮮明に記憶していて、抑うつなどの症状がひどいタイプ
- トラウマを詳しく覚えておらず、症状が軽いタイプ
がいるそうです。
つまり、トラウマを鮮明に覚えている人の方が、体に出る症状が重くなってしまったということです。
反対に、辛い記憶を忘れてしまった人は、その後の症状が軽くて済んだと言えます。
この結果から分かることは、
恐ろしい記憶を呼び起こしたり、思い出させることが必ずしもいい結果をもたらすとは限らないということです。
モラハラをしている人でかつ、片頭痛を持っている人は、
- ストレスに無関心、否定する(=トラウマに気づいていない、トラウマを否定する)
ことができるタイプだったために、辛い記憶を否定し、「トラウマと向き合わずに済んだ」のです。そしてその代わりに、ストレスが身体的症状となって表われると言えるのではないでしょうか。
言ってみれば、片頭痛があるおかげで、過去のトラウマの被害が最小限に済んでいるわけです。
もし、治療と称して、このトラウマと向き合わなくてはならないとしたら、「トラウマを鮮明に記憶していて、抑うつなどがひどいタイプ」になってしまう可能性があります。
こちらの記事でも、モラハラ加害者にモラハラだと指摘する危険性を書いています。
自分を支える世界の崩壊
精神科医である岡田尊司氏は、マインドコントロールの本を執筆されています。その中で次のような文章が出てきます。
何年にもわたって、自分が特別な存在だという妄想と共に生きてきた人は、薬物療法によって妄想が、妄想だと分かったとき、危機を迎える。それは、長年自分をさせてきた世界の崩壊に等しい。もう何も頼りにするものも、自分を支えてくれるものもない。ただ、自分が何年も妄想にとらわれて人生を無駄にしたという事実しか残らない。それはあまりにも残酷な現実と向き合うことだ。妄想がとれたとき、自殺してしまう人もいるのは、そうした理由からだ。
マインド・コントロール 岡田尊司
自己愛の問題を解決しようとしたとき、彼らは自己愛的な妄想に支えられた世界の崩壊を体験します。この世界の崩壊は彼らにとって何よりも大きな喪失体験に他ならないでしょう。彼らは自分の心の支えにしていたものを失います。
自己愛性パーソナリティ障害の人が掲げている誇大な自己像は、いわば強い自己否定感の裏返しです。自己否定感に押しつぶされそうになっている彼らが、それを防ぐために「本当はすごい自分」を作り上げ、空想を見ることによって、つぶれずに済んでいるとも言えます。
精神科医であり、自己愛性パーソナリティ障害の研究をしたマスターソンもまた、「誇大な自己があるおかげで抑うつにならずに済んでいる」と述べています。
モラハラを治療すれば良い人生を送れる?それって本当だろうか?
私は、すべての人が良い方向に人生をやり直すことができるとは言えない、と考えています。
本当は、人生はすべてやり直しがきく!と言いたいところです。
ですが、抱えているトラウマや辛い体験によっては、その後の人生を大きく狂わし、生きづらさから抜け出せないまま一生を終えなくてはいけない場合だってあります。
だからこそ、いい友人、いい職場、いい環境を選ぶべきなのです。
もちろん、モラハラ環境で育ったことは、本人が選んだことではありませんし、本人には何の責任もありません。
しかしその後の人生においても、彼らはみな「モラハラ環境の方を好んで選んでいる」ことも事実です。
もし、モラハラ加害者と出会ってしまったら?
モラハラ加害者と出会ってしまったとき、彼らにモラハラをしていると伝え、変えよう治そうとすることが本当にいいのかどうか。
彼らがトラウマと向き合うことで、のちの人生がより悪い方向に転んでいく可能性も小さくはないと言えます。
私は、「お互いに分かり合えない人間」だと告げて、離れること。
それがお互いにとって最良の選択肢ではないかと思っています。
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