自己愛性パーソナリティ障害を語る上で切っても切り離せない存在、それがフライングモンキーと呼ばれる人たちです。自己愛性パーソナリティ障害の人の周りには必ずこのフライングモンキーが存在し、自己愛性パーソナリティ障害の人そのものよりも時に厄介な存在となることがあります。
フライングモンキーとはどんな人で、どんなことが厄介なのでしょうか。
自己愛性パーソナリティ障害の被害に遭っている人に知ってもらいたい情報をまとめました。
フライングモンキーとは?
「フライングモンキー」とは、自己愛性パーソナリティ障害の人に操られた攻撃者のことを指します。その名前は、オズの魔法使いに出てくる西の悪い魔女に使えている羽の生えたサルが由来です。由来となったサルは、魔女の命令に従ってドロシーに嫌がらせをしてくる役回りをします。
「フライングモンキー」は、自己愛性パーソナリティ障害の人に従ってターゲットに攻撃を仕掛ける人で、自己愛性パーソナリティ障害の味方でもありながら、都合のいい手ごまでもあります。
フライングモンキーと自己愛性パーソナリティ障害の関係
自己愛性パーソナリティ障害の人とフライングモンキーの関係は操縦者と手ごまの存在です。
たとえば、ある集団の中で、AさんとBさんがいたとします。
AさんとBさんは初めは仲の良い関係でした。次第に、AさんはBさんの真似を始めます。
同じ服装から始まり、髪型や持ち物、利用する店などどんどんとその真似の範囲が広がり、AさんはまさにBさんのようになっていきました。
Bさんはそのことに嫌気がさし、Aさんに「もういいかげんにしてよ!」といいました。
すると、Aさんは周囲の人にBさんにこんなことを言われた。他にもこんなひどいことをされている。私はとても傷ついた。と言いふらします。
そのときに、Aさんは「Bさんには髪型や服装も真似をされている。」と本当とは逆のことを言い出しました。周囲の人たちは、最初に被害を言い出したAさんこそが被害者だと思い、Aさんと一緒になってBさんを責めました。
フライングモンキーはなぜ厄介なのか 代理虐待の存在
フライングモンキーは自己愛性パーソナリティ障害の味方となり、大勢になって攻撃を仕掛けてきます。多対一の状況になることでターゲットはいくら自分の方が正しくても、数の力で自己愛性パーソナリティ障害が正しいことにされてしまいます。
数の多い方が圧倒的に伝聞力があるため、あっという間に悪評や悪口がひろがります。その噂を信じた人からも距離を置かれ、ターゲットはある集団の中で孤立させられます。
トラブルは自己愛性パーソナリティ障害とターゲットの関係だけではなく周囲の人を巻き込み、大きくなっていきます。よく知らない人にまで悪評が届いてしまい、間違った情報を正すことも難しくなります。
フライングモンキーが行う攻撃のことを「代理虐待」と呼びます。
フライングモンキーの発言や行動とは
自己愛性パーソナリティ障害の人は、ターゲットに対してわざと第三者を使いメッセージを伝えたり、第三者を使って自分の正当性を主張させます。
これを「トライアンギュレーション」と言います。
フライングモンキーは、このトライアンギュレーションを果たす役割を担うことがあります。
ターゲットに謝罪を要求する
自己愛性パーソナリティ障害は、自分は悪くない、被害者が悪いということの証拠として、被害者からの謝罪を要求します。
フライングモンキーに被害を話し、その話す内容には嘘や誇張が多分に含まれていますが、それを信じたフライングモンキーは、ターゲットに謝罪するよう促します。
親兄弟の関係であれば、毒親とのトラブルに兄弟が謝罪をするように促してくると言ったことがあります。
ターゲットの様子を報告する
ターゲットがどんなことを言っていたとか、何をしていたとか、ターゲットの様子を自己愛性パーソナリティ障害へ報告をします。フライングモンキーがこうした伝聞の役割を果たすことによって、一層自己愛性パーソナリティ障害とターゲットの関係がこじれていくことがあります。
ターゲットを呼び出す
事件化をするようなひどいイジメにおいて、このフライングモンキーが被害者を呼び出す役割を果たすことがあります。
ターゲットとされている被害者は、被害に気が付いた時に自己愛性パーソナリティ障害のことを避け、接点を持たないように行動を変化させます。
すると、自己愛性パーソナリティ障害はターゲットをイジメる機会を失います。そこで、フライングモンキーに頼んでターゲットをわざわざ呼び出させるのです。
もちろん、この時にターゲットには自己愛性パーソナリティ障害がくることは秘密にされています。ターゲットが呼び出された場所に出向いたときに、ようやく自分が騙されていたことに気が付きます。
この場にいるのは自己愛性パーソナリティ障害とその取り巻きたちなので、多対一の状況であり、圧倒的にターゲットが不利です。
トライアングレーションは、人間関係の分断を煽る戦術として使われることもあり、人と人との仲を破壊します。
たとえば、自己愛性パーソナリティ障害の人がAさんとBさんの仲に嫉妬をしていた場合、Aさんには「Bさんがあなたの悪口を言っていた」と言い、Bさんには「Aさんがあなたの悪口を言っていた」と言います。自己愛性パーソナリティ障害の人は、仲のいい関係を壊し自分がそのポジションに収まろうとします。
フライングモンキーがなぜ操られてしまうのか
自分目線でしか善悪を判断できないから
フライングモンキーがなぜ自己愛性パーソナリティ障害の人に操られやすいのかと言うと、彼らの物事の判断の軸が、「自分目線しかないから」です。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、とてもいい人間を演じることができるので、ターゲットにしか裏の顔を知られていません。
フライングモンキーはいくらターゲットの人が訴えたところで、自身から見ていい人である自己愛性パーソナリティ障害の人がそんなことをするはずがないという考えを変えることはありません。
フライングモンキー以外の人であれば、一方の人の言い分だけを鵜呑みにして物事の善悪を決めることはありません。また、自己愛性パーソナリティ障害の人に成り代わって、「攻撃を仕掛けてくる」ことも普通ではありえないことです。
フライングモンキーは騙されている可哀そうな人ではなく、特殊な立ち位置にいる人だと割り切って自己愛性パーソナリティ障害の人と同様に警戒しておくに越したことはありません。
なぜなら彼らは自己愛性パーソナリティ障害の人から何らかのメリットを受け取っている可能性があり、それゆえ彼らの「自己愛性パーソナリティ障害の人はいい人だ!」という思い込みを覆すことがフライングモンキー以外の人と比べて難しいからです。
承認欲求が満たされるから
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分のためにフライングモンキーがターゲットを攻撃をしてくれたことをとても感謝をしたり、自己愛性パーソナリティ障害の人を取り巻く集団の中でピックアップするような形で褒めたりします。
すると、それを見た他のフライングモンキーも自分も同じように認められたいとよりターゲットを攻撃するようになります。
この集団の中ではいかに自己愛性パーソナリティ障害の人に貢献をしたかで集団の中での地位が決まります。
フライングモンキーもまた自己愛性パーソナリティ障害の気質がある場合も
自己愛性パーソナリティ障害の人は、他人を攻撃せずにはいられない人です。自己愛性パーソナリティ障害の人の周囲に集まり、取り巻きを形成する人たちもまた、似たような気質である人が多いことも分かっています。
自己愛性パーソナリティ障害の人とフライングモンキーのつながりは、「誰かの悪口」や「ターゲットを攻撃する」という同一の目的のもと成り立っており、その集団が集団として保てる理由がまさに、「人を攻撃すること」です。
フライングモンキーにとっても自己愛性パーソナリティ障害の人を含めた集団が自分のニーズを満たしてくれていることがあります。
これは私独自の考えなのでデータなどの裏付けがあるわけではありませんが、この「フライングモンキー」は未来の自己愛性パーソナリティ障害予備軍なのではないかと思っています。
というのも、自己愛性パーソナリティ障害とフライングモンキーの関係性が、家庭内のモラハラ親とモラハラ親に迎合した子どもの関係性と似ている点が多いからです。
まずモラハラ親は子どもに非モラハラ親の悪口を吹き込み懐柔します。家庭内で非モラハラ親を孤立させるために、子どもに非モラハラ親を攻撃するように仕向けますし、意のままに子どもが動けばよく褒めて承認欲求を満たします。
こう言ったことが繰り返される中で、積極的に非モラハラ親の様子をモラハラ親に報告する子どももいます。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、虐待者の行動を学習し、真似ていく過程で、さらにはそれを実践する場が幼い時からあると考えられます。その実践の場がこの「代理虐待」なのではないかと私は考えます。
もし家庭内でフライングモンキーになっている子どもがいたとすれば、未来の自己愛性パーソナリティ障害予備軍として注意しながら子育てをする必要があるのではないでしょうか。
フライングモンキーは集団の中の権力者である場合もある
さらに厄介なことに、このフライングモンキーがある集団の中で何らかの力を持った人である場合もあります。
たとえば、会社であれば上司に当たる人がこのフライングモンキーであった場合には、自己愛性パーソナリティ障害の人は権力の後ろ盾を持っているために、被害を訴えても「自己愛性パーソナリティ障害の人の方がかばわれてしまう」こともあります。
自己愛性パーソナリティ障害の人は利用価値のある上の人に媚びることがうまいため、集団の中で力のある人から可愛がられる傾向にあります。
自己愛性パーソナリティ障害の人とフライングモンキーの関係の破綻
自己愛性パーソナリティ障害の人達の攻撃が過激になってくると、この集団以外の人の目にトラブルとして目に留まることがあります。そして、そのトラブルが見過ごせないと分かると、この集団の更に上からなんらかの対処が取られることがあります。会社であれば人事異動の対象となるなどです。
この時に、自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分を守るためにフライングモンキーを捨てごまにし、自分だけは加害者の立場からのうのうと逃げおおせます。なぜなら実際に手を下しているのは自己愛性パーソナリティ障害の本人ではなくその取り巻きであるフライングモンキーであることが多いからです。
反対に自己愛性パーソナリティ障害の人が何らかの制裁を受けるような形になれば、フライングモンキーたちは洗脳と言う魔法が解けたかのように、自己愛性パーソナリティ障害の人からあっという間に離れていきます。
また、フライングモンキーが自己愛性パーソナリティ障害の気質がある人であれば、利害関係の破綻からやはり同じように離れていきます。結局は相手も自分も利己的だからこそ、自分に「利」が無ければあっさりとその関係を解消することになります。
自己愛性パーソナリティ障害の人間関係は刹那的で、あらゆる場所で同じような構造を作り出しは崩壊し、それを繰り返します。いずれはすべての関係がダメになり孤立します。フライングモンキーとの関係も同じです。
まとめ
オズの魔法使いでは、西の魔女に支配されていたフライングモンキーたちは、南の善い魔女グリンダの手によって解放されます。
現実世界のフライングモンキーも自己愛性パーソナリティ障害の人から離れることに成功できれば、攻撃的ではない普通の人に戻ることができるのではないかと考えられます。(自己愛性パーソナリティ障害の気質を持っている場合は話は別です。)
しかし、フライングモンキーから受ける攻撃による実害は決して無視できるものではありません。彼らは自分たちのしていることについて、自覚をし、操られないように気を付けなくては自分自身も守られないのですから。
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