自己愛性パーソナリティ障害の人に欠点を指摘するのは逆効果である

自己愛性パーソナリティ障害の人に欠点を指摘するのは逆効果である

理不尽なモラハラ夫からの要求、きついですよね。他にも身近にいるモラハラ加害者からの暴言や一方的な押し付け。これらをやめさせたい場合、どうすればいいのでしょうか。

モラハラ加害者たちに言葉で分かってもらおうと話し合いをしたり、相手の欠点を自覚してもらうためにモラハラだと指摘することは効果がないことだとお伝えしてきました。

専門家も、自己愛性パーソナリティ障害の人に欠点やミスを指摘することは、欠点やミスを自覚し直そうとするどころか逆効果になるといっています。

その理由と正しい対処法を紹介します。

目次

1.自己愛性パーソナリティ障害の人は、欠点やミスを指摘されると被害的に捉える

私の夫も、たとえ上の立場である職場の上司からミスを指摘されたところで、「上司が悪い」と言う姿勢をかたくなに変えず、自らを省みることはありませんでした。

そして「上司から個人的に攻撃されている」と言い出し、自分が被害者であると訴えていました。

モラハラ加害者やその根本的な原因と言われている自己愛性パーソナリティ障害の人は、いくら言葉で伝えたところで、自らの欠点に気が付き、それを治そうとすることはほとんどないそうです。

その理由は、

  1. 脳が未熟である
  2. 批判は攻撃だと捉えてしまい、自分の身を守ることを優先させるため、その内容が頭に入ってこない
  3. 人を見下しているために、他人の意見を受け取れない
  4. 自分の欠点を否定する(=他人に置き換える)

ためだと言われています。

彼らは、指摘された自分の問題と向き合い、それを解決するために自らの行動を良くしたり変えようとする能力にそもそも乏しいと考えられます。

原因①脳が未熟で発達が不十分である

怒りっぽい人は、脳が未熟なことが原因であると言われています。「心が未熟」という言葉はよく聞きますが、「脳が未熟」という言葉はあまり聞きなれませんよね。

私たちの体は赤ちゃんから子ども、子どもから大人へと成長していくように、脳も成長、発達していきます。最初から成熟した脳で生まれてくる人はいません。

「脳が未熟」というのは、いわば脳が成長段階、発達段階で何らかの理由でそれが阻害され、未発達のままで大人になってしまったということです。

彼らは批判などから自分を守る時には、低次元の防衛機制(心を守る働き)を使うため、批判を受け入れることができず対人関係に支障をきたします。

しかし、体の成長とは違い、脳の成長や発達具合は外見からはよく分かりません。背が低い、体重が軽いと言ったことでも図ることはできません。

そのため、「脳が未熟」であることは気づかれにくく、他の事(例えば、ストレスやメンタルヘルスといったこと)が彼らの頻繁に起こる怒りを招く原因だと考えてしまいがちなのです。

本質的な問題は、彼らの脳の発達が阻害されてしまったことです。精神的な不安定さはその二次的弊害だと考えられます。

原因②批判は攻撃だと受け取り、内容まで理解できない

自己愛性パーソナリティ障害の人は、非常に自己が不安定で、強い自己否定感に悩まされています。彼らの中にある自分は、「思い描いている自分」と「とりえのない自分」の二つの病的な自分だけだと言われています。(市橋秀夫(2015).自己愛性心的構造に対する精神療法―自尊心の病理―)

彼らにとって賞賛は、「とりえのない自分」という自己否定感から身を守るために必要不可欠です。

反対に、人から批判をされることは、不安定な自己を崩壊させる危険性をはらんでいます。自分を守ることに必死になり、批判をしてくる人を敵だと思い込みます。

彼らの中では、攻撃に対して身を守ることを優先させ、自己防衛としてモラハラをしているという理由があります。

相手の批判の内容を考える余裕など、彼らにはありません。

原因③他人を見下しているために、言葉を素直に受け取ることができない

私たちは、主に「どんなことを言われたか」よりも「誰に言われたか」の方を重要視する傾向にあります。これは自己愛性パーソナリティ障害の人だけではなく、それ以外の多くの人にも当てはまる傾向です。

たとえば、中卒の人の勉強法と、東大卒の人の勉強法を聞いたときに、真似してみようとするのは東大卒の人の勉強法なはずです。

テレビのコメンテーターの人についても肩書が必ず紹介されます。それは、肩書がその人の言葉を裏付けるからです。

自己愛性パーソナリティ障害の人は、根本的に他人を信用していませんし、多くの場合見下しています。

自分よりも劣っていると思った人の言葉は、その内容に関わらず受け取る前にシャットアウトされてしまいます。同じように自己愛性パーソナリティ障害の人は、多くの人の言葉を受け取る前にシャットアウトしてしまい、心にまで届かないのです。

女性というだけでシャットアウトされる?

モラハラ加害者の中には、極度な男尊女卑の人がいます。女性のことを見下しているため、女性というだけでどんな人からのどんな言葉も届かない場合もあります。夫の場合は、職場の上司である2人の女性から注意をされた時には、強く反発し言葉を受け取ることはありませんでした。しかし、後日、男性の上司から注意をされた時には(怒ってはいましたが)最終的に態度を改めることにしたのです。言われる相手の性別によって態度が180度変わる場合もあります。

原因④自分の欠点を認めずに人に押し付ける

自己愛性パーソナリティ障害の人は、プライドが高いために自分で自身の欠点を認めることができません。

そして、自分の欠点を周囲にいる別の人の欠点だと間違って認識していることがあります。

そのため、周囲の人からすれば「それってあなたのことじゃない?」「自己紹介なの?」と思うような批判をすることがあります。中には、指摘したことを「お前の方が○○だろ!」と言い返す場合もあります。

自分の問題に真に向き合えないために、問題解決の方法として自分の問題を人に「投影」し、丸投げするのです。こうすれば、自分自身の問題を他の誰かが解決してくれるからです。

欠点を指摘すると、逆に「それはお前じゃないか!」「おまえこそひどい人間だ!反省しろ!」などと言って、逆切れするのも特徴の一つです。

2.自己愛性パーソナリティ障害の人の欠点に気が付いたら?

それでは、もし相手の欠点に気が付いた場合、どう対処するのが良いのでしょうか?

対処法①同じ土俵に上がらない

自己愛性パーソナリティ障害の人は、上のように批判に対して強い怒りを爆発させて暴言を吐くことがよくあります。その時に、相手の逆切れや暴言にキレて、こちらも同じようにやり返さないほうがいいと言われています。

自己愛性パーソナリティ障害の人との接し方は、「同じ土俵に上がらない」のが基本です。

対処法②この人はこういう人だと受け止める

残念ながら、自己愛性パーソナリティ障害の人に、悪いところを治してもらおうと欠点を指摘することは意味のないことです。

この人はこういう欠点があるからと受け止め、ほどほどの付き合いにすることが望ましいでしょう。

被害者も相手と対等な立場であるという考え方を捨て、自己愛性パーソナリティ障害の人は、「大人ではない人」「未熟な人」であると認識をするだけでも、相手に対する態度に変化が出ることもあります。

対処法③期待しない

「大人であれば、こういう態度を取れるはずだ」とか「常識的に考えれば反省し治そうとするはずだ」という考え方は捨てましょう。

脳の発達レベルを考えると、大人と同等のものを期待したり、世間一般的な常識を求めてもいい域に達していません。そのため、一般的なレベルを期待すれば必ず裏切られます。

特に仕事関係では、彼らが関わることで、トラブルの解決をするどころか余計にトラブルを大きくしてしまう可能性があります。自己愛性パーソナリティ障害の人が部下である場合、どんな仕事を任せるかはよく検討をしたうえで決定する必要があります。

対処法④距離を取る

一番いい対処法は、自己愛性パーソナリティ障害の人と距離を取り、不愉快さを軽減させることです。自己愛性パーソナリティ障害の人から受ける実害は、距離が近い人ほど大きくなる傾向にあります。

物理的距離が取れるだけで、一気に問題が解決することもあります。

出来るだけ係わらないように過ごすのが一番です。

3.どうしても指摘したいときは?

もし、厄介な自己愛性パーソナリティ障害の人と距離を取ることもできず、苦しさから抜け出せないときには指摘することで問題が解決する場合があります。

ただしこの時に絶対に1人で解決しようとしないでください。

被害者は、モラハラ加害者から見下されているために、どんな言葉も基本的には届きません。これこそ、「誰が言うか」が重要になってきます。

3-1.上の立場の人に頼み指摘してもらう

もっともいい手口は、モラハラ加害者よりも上の立場の人に協力してもらい、その人から伝えてもらうことです。

夫の場合は、上司から叱られたとき「被害者である自分」を捨て去ることはできませんでしたが、指摘を受けて表面上は改善させることにしたからです。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。⇒私のモラハラ体験談⑧叱れらた時の歪んだ考え方が見えた瞬間

上下関係に縛られるモラハラ加害者にとって、上の人から迫害されることは、その環境での「死」を意味します。不利益を避けようと、上の人から指摘されるだけで「とりあえずはモラハラ行為がストップする」こともあります。

3-2.一斉に指摘する

実際に私が職場のハラスメント上司を訴えたときに、自分1人ではなく職場の全員の力を借りて訴えたことが最も効果がありました。

誰か一人から言われているだけであれば、「あいつの方がおかしい」「あいつこそモラハラ加害者だ!」などと言って責任転嫁したり、被害者ぶることができます。

しかし、一斉に指摘された場合は、周囲の人間全員をおかしいということは難しいでしょう。

ですが、この方法は恐らく自己愛性パーソナリティ障害の人を環境から排除することはできますが、本人に欠点を自覚させ、治療の方向に進ませることはほとんど不可能でしょう。

どうしても相手が許せない場合や、被害者を守りたい場合などに使いましょう。

自己愛性パーソナリティ障害の人に欠点を指摘するのは逆効果である

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