モラハラ被害を受けた方で、過去の被害をよく覚えていないという方はいらっしゃいませんか?
私は、このブログを立ち上げるにあたって過去のできごとをまとめているときに、結婚生活の中でもある一時期のできごとについてぽっかりと記憶が抜け落ちていることに気が付きました。
強いストレスにさらされていたこと、ひどく傷つくことを言われたことだけはよく覚えているのに、その具体的な内容(何を言われたのか)や前後のいきさつなどは全く思い出せないのです。
今回は、被害を受けたのにもかかわらず、それを思い出せない脳の働きについてまとめました。
解離性健忘とは?
過去のトラウマとなる出来事について、その記憶がすっぽりとなくなることを、「解離性健忘」と言います。
解離性健忘の特徴は、大きな災害、虐待、事件、事故といった心的外傷を負ったときの記憶や、大きなストレスがかかった時(数時間程度)のことを思い出せなくなることです。これは、薬の作用や、外傷(脳への強い衝撃)などではなく、精神的なことが原因で引き起こされます。
心的外傷では、ストレスとなる出来事(モラハラ)が頻繁でかつ、暴力性が高い場合に起こりやすいと言われています。暴力性は何も被害者への身体的暴力に限った話ではなく、大声を出す、物に当たる、物を壊す、長期間無視をするといった被害が大きい場合も含まれます。
- 限局性健忘・・・ある出来事を覚えていない
- 選択的健忘・・・ある時期における、出来事の一部だけは思い出すことができるが、それ以外のことを覚えていない
- 全般性健忘・・・自分の体験のほとんどを忘れてしまう、一部の患者は世の中のことも忘れる
解離性健忘では、出来事の一部分だけ抜け落ちるということがあるそうです。
私は、元夫から怒られている、怒鳴られている場面がふと頭によぎることがあって、彼のすごい剣幕の顔が今でも思い出されます。しかし、夫がその時に叫んでいる言葉は耳が遠くなったかのように聞こえない、記憶の中で音声だけが抜け落ちているというものが無数にあります。でもその場では耳をふさいだりはしておらず、その言葉も聞いていたはずです。
私は夫の怒鳴り声がとても怖く、別居した後も夫に怒鳴られる夢を繰り返しみていました。
この抜け落ちている音声は、私の中で思い出したくない記憶なのだと思います。
また、結婚生活において、当時小さかった子どもが覚えていることで私自身が忘れているものもあります。子どもに「こんなことがあったよ」と言われたことを全く思い出せない(忘れるような出来事ではないはずなのに)覚えていないのです。
これらの記憶は子どもから聞いた後にもさらに忘れることがあります(^_^;)
解離性健忘は「心の防衛反応」
解離性健忘が起こる理由は、辛い記憶を覚えていると健やかな人生を送ることができないため、心の防衛反応として、自ら辛い記憶を封印するためです。
辛い記憶はいつもとは異なる方法で脳の別の場所に記憶されると言われています。
過去には、トラウマとなる記憶は忘れたのではなく、カウンセリングや催眠療法などで「虚偽記憶」がねつ造されたのだと批判を浴びたこともあります。
しかし、リンダ・マイヤ・ウイリアムズは、虐待を受け、病院にかかったことのある患者の4割が、記録が残っているのにもかかわらず本人にその虐待の記憶が全く残っていないことを突き止めました。これにより心因性健忘は、実際に起こることが確定しました。
モラハラ被害を受けながらも結婚生活を続ける理由には「解離性健忘」が関係しているかも?
私は、被害に遭いながらもモラハラ夫との結婚生活を続けてしまう原因の1つには、この解離性健忘が関係しているのではないかと思っています。
被害者の方は、辛い記憶を封じ込めてしまい、あたかも自分はつらい目に遭っていないかのように脳に錯覚させるしか生き残る方法がない状況下に陥っていたのではないでしょうか。
過去の記憶において、「良い記憶」と「悪い記憶」の両方がバランスよく記憶されていることが、健全な体験であった証拠だそうです。(詳しくはこちらの記事をご覧ください。→モラハラ夫の「家族へのトラウマ」はどこにある?)
私は、結婚生活で「悪い記憶」しか残すことができませんでした。
また、本当は悪い結婚生活を誤って「良い記憶」だと思い込んでいる場合も、不健全な体験の結果、脳が辛い記憶を封印した可能性があります。
解離性健忘が起きたときにはどうすればいい?
解離性健忘は強いストレスを避けるための防衛反応です。
心を守るための機能ですので、忘れた記憶は無理に思い出さないほうがいいでしょう。
大切なのは、過去ではなく今や未来です。
過去のできごとが今や未来を壊すのであれば、それこそ忘れてしまい、これからの人生を健やかに送るほうがいいでしょう。
日記やボイスレコーダーでモラハラを記録しておくといい
「解離性健忘」によってモラハラ被害の記憶がなくなってしまうと、調停や裁判をしようとしたときに、いきさつや出来事を説明できない可能性があります。
そうならないためにも、受けているモラハラを日記やボイスレコーダーで確保しておくといいでしょう。
特に、ボイスレコーダーで録った音声の記録は紛れもないモラハラの証拠になります。
健忘は、出来事をすぐ思い出せなくなるのではなく、数日あるいはもっと後になってから思い出せなくなることがあります。
私は、別居後にすぐに調停のため結婚生活であった出来事をまとめたのですが、今読み返してみると、書いたエピソードのうちのいくつかが今では思い出せなくなっているものもあります。出来るだけ記憶の新しいうちに日記などに残しておくことが大切です。
その他の理由
モラハラ夫が言う「そんなことは言っていない!」を信じようとして記憶を修正したかも?
また、モラハラ夫は、言ったことを言っていないことにしたり、言っていないことを言ったことにするなど、虚言や妄言がひどいのも特徴の一つです。
被害者は、モラハラ夫の言っていることを正しいと思おうとするあまり、「そうか、じゃあ私の勘違いだったのか」と自らの記憶を修正せざるを得なかった可能性もあります。
私自身もコロコロと言い分の変わる夫のことを追求したときに、「絶対に俺がそういったと言えるのか!」と強く言われて「やっぱり私が間違って覚えていたのか?」と分からなくなったことがあるからです。
あまりに被害がありすぎて一つ一つが記憶に残らなかったのかも?
モラハラが日常的に行われてくるようになると、あまりにも被害がありすぎてその一つ一つを詳細に覚えておくことができなくなると考えられます。
私は、結婚生活1日目に受けたモラハラを今でもその前後のストーリーを含めよく覚えていますが、結婚生活最後の毎日のように受けていたモラハラについてはよく覚えていません。
毎日食べる食事を思い出せないように、日常と化したモラハラも記憶に残りにくくなるのだと思います。
被害が終わった後も記憶が抜け落ちる期間があることも
また、私の場合は、別居して被害がなくなったあともぼんやりとして過ごし、別居後数カ月間の記憶があいまいになっているところもあります。
うつ病の患者は、うつの期間を「白昼夢を見ているようだった」と表現するようですが、まさに夢なのか現実なのか分からず、夢の記憶が起きたら消えるように記憶がハッキリと残っていません。
またその間は、モラハラを受けていたことを繰り返し繰り返し悪夢のように思い出し続けていたこともあり、精神状態も悪く、「心ここにあらず」で、目の前のできごとを見ることができていなかったのかもしれません。
繰り返し思い出していたモラハラが頭の中を支配していた状態で、現実をインプットすることが困難だったことが原因で記憶をしていないこともあるのだと思います。
まとめ
- 被害者は「解離性健忘」によってモラハラ被害を忘れることがある
- 被害から抜け出してもすぐに精神状態が回復するわけではなく、その間の記憶もなくなることがある
「解離性健忘」は被害から脱出した後に起こることもあり、被害を忘れたために加害者の元に戻ってしまうこともあるため、被害の記録を残しておくとお守りになります。
また記憶が抜け落ちているからと言って、モラハラ夫からのひどい仕打ちの影響がなくなったわけではありません。被害者は脳にダメージを負っており、中には回復しないケースもあります。
いずれにせよ、モラハラ夫から受ける仕打ちは脳にダメージを与えていることを覚えておかなくてはいけません。
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