モラハラを受けた被害者の中には、相手から慰謝料をもらわなければ気が済まない方もいらっしゃると思います。
私自身も調停の途中から「なにがなんでも慰謝料を支払ってもらう!」という気持ちでいましたし、被害が大きければなおさら慰謝料のあるなしは感情面での折合いをつけるために必要です。
しかし、実際にモラハラで慰謝料をもらえる可能性というは「かなり低い」のが現実です。
家庭裁判所や調停委員、弁護士の考え方となぜモラハラでは慰謝料がもらいづらいのかについてまとめました。
これから調停や裁判などでモラハラ離婚を考えている方、現実はどうなっているのかを把握してもらうためにも読んでいただきたいと思います。
私のモラハラ離婚調停体験談をもとに家庭裁判所でのモラハラの扱われ方や慰謝料の現実をまとめました。
1.モラハラは家庭裁判所では認知されていない
まず非常に残念なことですが、家庭裁判所では「モラハラ」に対する認知が低いというのが現状です。
私の体験談ですが、結婚生活でのエピソードを調停委員に話した時も「なぜご主人はそんなことをするのですか?」といわれ、それがモラハラであるとかDVであるという認識をされる以前に「理解不能な言動」として受け取られました。この様にそもそも調停委員が「モラハラ」を知らない可能性だってあるのです。
モラハラは精神的DVを含めた経済的DV・社会的DVに該当し、男女共同参画局のサイトでもこれらのDVがDVの具体例として列挙されています。ですが、モラハラをDVとして家庭裁判所で認めてもらえるかといえばそうではないようです。
2.モラハラとしてだけではなく「婚姻関係の破綻」を証明することに重点を置いて
2-1.長年つけてきた日記で、夫婦関係がすでに破綻していると分かってもらえれば離婚が認められる
たった1月分のモラハラ日記だけでは、婚姻関係が破綻しているとまでは言えません。日記であれば少なくとも半年以上つけていなくてはいけないでしょう。長ければ長いほど証拠として十分になります。
相手から言われた暴言、暴力など被害の実態を記録しておきましょう。特に音声の証拠として残しにくい「無視」については、日記で残しておく他に証拠を確保する手段がありません。モラハラによる無視は、普通のケンカにおける無視と違って期間があまりにも長かったり、やり方が陰湿です。数カ月にわたる無視の期間があることは、「夫婦関係の破綻」を証明する強固な証拠になるでしょう。
2-2.加害者としてでっち上げられないようにするために日記は有効!
また日記やLINEは、あなたが加害者として仕立て上げられ、逆に慰謝料を支払わなくてはならない状況に陥らないためにも役立ちます。
モラハラ加害者は被害者意識が強いばっかりに、「自分の方こそが被害者だ」と思っています。そのため、ありとあらゆる嘘や捏造を使ってでも被害者を加害者に仕立て上げようとしてきます。
私は夫から、子どもと夫を虐待し、さらには異常性癖の持ち主で、異常な人格の人物であると調停の場で言われました。モラハラ加害者の嘘というのは、自分がモラハラをやっていないというだけに留まりません。モラハラをしていたのは妻の方だと無いことをでっちあげて被害者を貶めることすらします。
モラハラ被害者は被害を訴えるどころか、反対に加害者にされ、窮地に陥ることもあるのです。相手から嘘の主張がされた時に、長年つけていた日記は大きな証拠になります。
被害者の方は自分の身を護るためにも、日記をつけることをオススメします。
モラハラ加害者との戦いは、「言った」「言わない」「やった」「やっていない」の不毛な戦いです。もちろん、向こうに証拠がなければ相手の主張が認められることはありませんが、悪質なケースでは証拠すらでっち上げられることもあるようです。十分注意してください。
<モラハラの証拠になる日記の書き方>
日記には、必ず日付を入れましょう!また、モラハラを受けていたことだけではなく、日常的にあなたがしていた行動を書くことも有効です。
相手からは、「家事をやっていなかった」、「浮気をしていた」、「育児をしていなかった」という嘘をつかれる可能性があります。どんな料理を作ったか、子どもと何をして遊んだのか、誰とどこに行ったのかといった通常の日記も書いておきましょう。
2-3.相手からの暴言が、相手からのメールやLINEに残っている場合は証拠に!
自分がつけている日記や自分が友人に相談したLINEだけではなく、モラハラ加害者から送られてきたメールやLINEにあなたへの暴言が残されている場合はモラハラがあった証拠になります。
相手からの暴言メールは見るたびにムカつきますが、感情にまかせて削除することがないようにしましょう。また、相手に勝手に削除されたり、削除するように強要される可能性もありますので、クラウドや別アドレスに転送するなどし、証拠を守りましょう。
3.音声や動画、相談履歴、診断書など取れる証拠をそろえよう
モラハラの場合、どんな被害を受けていたのかが人によって異なります。これを揃えれば大丈夫だという確実な証拠はありませんが、何よりもまずはあなたが辛い思いをしていることを形として残すことが必要です。
サイレントモラハラや長期間の無視といったことは証拠にも残しづらいため、他の被害について重点的に証拠を確保するのが良いでしょう。
3-1.音声や動画は迫真性が伝わる!
なにがなんでも相手の不正行為を訴えたい!そう思っているのであれば、相手のモラハラ行為を録音、録画してください。
特に相手が暴れる、大声で怒鳴る、物を投げる、言動がおかしいといった場合に、起こった出来事を言葉だけで説明すると
傾向にあります。音声であれば、モラハラ夫がどんな態度で、どんな様子でその暴言を伝えてきたのか、迫真性をもって伝わることから、被害の実態を真に理解してもらうのに役立ちます。
たとえ裁判などで使わなかったとしても、「いい夫」「いい妻」を演じているモラハラ加害者の家庭内だけの変貌は周囲にとって思ってもみない騒動です。「まさかあの人が?」とあなたの言っていることを信じてくれないかもしれません。
しかし音声や動画と言った証拠があれば、周囲の人も外面が良かった人が家庭内でしていた真実に気が付いてくれるでしょう。
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3-2.行政機関に相談すると相談履歴が残る
モラハラで行政機関に相談した記録も証拠の1つになります。行政機関で相談履歴を出してもらうことができます。
しかし多くの人は、家庭内の揉め事を誰かに言うことをためらってしまいます。「こんなことを人に話しても大丈夫だろうか」と思い、一人で抱えこんでしまうことが多いものですが、被害がエスカレートしていくうちに相手からの束縛が強くなり、SOSすら出せなくなってしまうこともあります。
相談をしたからと言って必ず「別れなくてはいけない」わけではありません。また、相談したことで冷静になれ、その後の身の振り方を考えるきっかけになることもあります。
パートナーといくら話し合っても解決できそうにないと思ったら、モラハラを相談することをオススメします。
※行政機関への電話相談では、相談履歴が発行されないという問題があるようです。可能であれば、予約を取り窓口まで直接相談に行きましょう。また警察に相談した場合も履歴が残りますが、履歴は半永久的に残るわけではないようです。履歴がいつまで残っているかはあらかじめ確認しておきましょう。
◆モラハラの相談機関はこちら◆
3-3.モラハラを受けて被害がひどいときはクリニックにかかろう!
クリニックでの診断書はモラハラを受けて被害者がどういった状況に陥っているのかを客観的に示す証拠になります。
中には、病気であると親権獲得に不利になると考え、クリニックを受診することをためらってしまう場合もあります。しかし、病気の有無は親権獲得に影響はないようです。(病気のために育児放棄をしている、頻繁に家出を繰り返す、自殺未遂をすると言ったケースは別です。)
モラハラ被害を訴えるだけではなく、モラハラから回復するためにも被害が深刻な場合はクリニックを受診しましょう。
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4.モラハラ加害者は自分の非を絶対に認めない!
日記やLINEの記録を調停の場で提出して、相手が自ら非を認め、「慰謝料を支払います」という可能性は残念ながら非常に低いのが現実です。
調停の場では、誰がどう見ても慰謝料が発生するような事案であったとしても、本人が罪を認め、払う意思がなければ、一銭たりともお金をもらうことはできません。
そして、モラハラ加害者の場合は、絶対にモラハラを認めたりはしません。
私が弁護士から言われたのは、暴力、経済DV、借金、浮気という有責オンパレードな夫からも慰謝料を取ることなく別れるケースが非常に多いということです。そもそも借金を背負ってお金がないような人から慰謝料をもらうというのは現実的ではありません。それだけではなく、慰謝料をもらうことにこだわり裁判を起こそうとすると、それだけ長い時間がかかります。裁判は短くても1年、中には2年以上かかるというケースも少なくはありません。
それだけ離婚も伸びることになります。
多くの被害者は慰謝料にこだわって裁判をするということをほとんど選択しません。私のお願いした弁護士は弁護士歴30年のベテランの方でしたが、過去に受け持った案件で慰謝料のためだけに裁判をしたというケースは無かったそうです。(親権獲得や財産分与でもめている場合は裁判にまで発展することはあります。)それよりも「ただ別れたい」「なるべくすぐに離婚したい」というほうに力を入れ、簡単に縁を切る道を選ぶようです。
その方が、離婚後の再スタートも早く切ることができ、人生のやり直しもできるでしょう。
4-1.中には、自分でモラハラ行為をベラベラ話すタイプもいる
モラハラ加害者にもあらゆるタイプがいて、巧妙に隠そうとする人もいれば、自分のしたモラハラ行為を自慢げに調停の場でもベラベラと暴露する人もいるようです。
モラハラ加害者は、モラハラ行為を自分の成功体験や自慢話だと思っていますが、調停の場でも悪気もなく話すような人は異常性が高いと言わざるを得ません。もし私の夫がそんな人であれば、ゾッとするどころではありません。
こういったタイプは、善悪の判断からして普通の人と感覚が違います。モラハラを悪いと思って反省することは決してありません。こういう人との縁は即座に切り、二度と会わないようにすることが得策です。
5.モラハラでの慰謝料はいくらになる?
DVと比べ、モラハラでの慰謝料は低くなっています。DVでの慰謝料は平均で200万程度と言われていますが、このDVというのは身体的DVであり、骨折や後遺症が残るようなひどいケースです。モラハラでは身体的DV以上の金額になることはほとんどないようです。
また、慰謝料の額が低いため、裁判費用、弁護士費用と比べると費用倒れになる可能性も高くなります。
慰謝料が数十万程度であれば、残念ながら相手と争っても赤字になる可能性の方が高く、争う理由は被害への金銭的補償ではなく「有責者を明確にするため」になると言えます。(もちろん、裁判をするかしないかを決めるのはあなたであり、身を取るか実を取るかを決める自由があります。)
5-1.モラハラでの慰謝料はいくらになる?
モラハラで慰謝料が発生する場合、金額には以下のことが考慮されるようです。
・モラハラを受けた期間が長い
・モラハラを受けた回数が多い
・モラハラを受けて精神疾患などになった。(病院に通っていて診断書がある)
・相手の年収が多い
・被害者の年収が少ない
・子どもがいる
・婚姻期間が長い
ちなみに私のケースですが、
・婚姻期間が5年未満
・子どもがいる
・相手の年収が多い
・私の年収が少ない
・精神疾患などの病気にはなっていない
この場合の慰謝料は、30~60万円ほどだと弁護士から言われました。(取れたとしても)
夫はモラハラなどなかったと離婚調停で突っぱねていましたので、慰謝料をもらおうとするのであれば裁判にするしかありませんでした。しかし、この金額での争いでは裁判費用の方が多くかかるため、結局裁判はしませんでした。
裁判にせずに調停で早期決着をつけることも子どもや自分自身の将来を考えたらいいことであると私は思っています。個々のケースや考え方、弁護士との相談で「慰謝料」にこだわるかどうかを決めるとよいでしょう。
5-2.相手に財産や貯金がない場合でも慰謝料は取れる?
たとえ慰謝料を支払うように判決が出たとしても、相手に財産や貯金がない場合はその支払いはされない可能性が高いものだと考えなければいけません。
実際に慰謝料が支払われない確率は80%とも言われており、判決が下ってもお金が確実にもらえるとは言えません。また、分割での支払いにすることもできますが、途中で払わなくなるというケースも後を絶たないようです。
6.モラハラで高額慰謝料がもらえるって本当?
弁護士事務所のサイトでは請け負った過去の事例などを掲載しているところもあります。
高額慰謝料を取れたと書かれているところもあり、これは本当なのだろうか?とちょっと疑ってみました。
6-1.財産分与も合わせた金額を掲載しているパターン
慰謝料と言う名目ではなく、「解決金」として金額を掲載しているところで金額が500万を超える判例もありました。
しかし、この「解決金」の中には財産分与の金額も含まれていることが多く、その内訳がいくらであるかはサイト上からでは分かりません。(財産分与がいくらで解決金がいくらと分けて書けないのは、調停でも「合わせていくらで解決しましょう」となるからです。⇒私がそうでした。)
モラハラの解決金で、このような高額な金額が発生する事はまずないと考えたほうがいいでしょう。
6-2.モラハラだけではなく暴力や不倫と言った他の有責事項もあったパターン
モラハラ加害者がモラハラしかしないとは限りません。中にはモラハラを行いながら、さらに暴力や不倫もあったと言ったケースもあります。
モラハラだけで発生した慰謝料ではなく、いろいろな有責事項があった結果で換算された慰謝料の金額は、モラハラ単体のケースで発生したものと金額が異なります。
モラハラ離婚で高い慰謝料が発生するケースでは、このようにモラハラ以外にも離婚事由があったケースが多いと考えられます。
6-3.日本の慰謝料は低い
私が弁護士の先生から言われていたことは、日本の慰謝料は低い、と言うことです。
命にかかわるような暴力があった場合でも200万程度。そういったケースでは、とにかく離婚したいので慰謝料を請求しないという人も多いそうで、結果的に治療費も支払われないということも多いのが現状だそうです。
また、慰謝料の高さは婚姻期間の長さに比例することが多く、婚姻期間が短ければそれだけ慰謝料の額も低くなります。
6-4.高額慰謝料が取れるといううたい文句に踊らされてはいけない
確かに、モラハラを受けた苦痛を考えると慰謝料をできるだけ多く欲しいという気持ちになります。
特に、サイトでは顧客を獲得するために良いことのみを掲載していたり、極端なケースが例として挙げられていることもありますので注意が必要です。
慰謝料は、個々のケースによって幅があります。実際に相談に行って、現実的な金額を知ることも大切です。
また、慰謝料の金額で弁護士を選ぶのではなく、2~3箇所には相談に行き、弁護士の先生との相性なども含めて比較することが重要です。
7.慰謝料をもらうことが難しい場合、解決金という方法もある
慰謝料は、離婚に至る原因が自分にあると認めることになります。モラハラ加害者が決して慰謝料を認めないのも、自分の非を認めたくないからです。
しかし、中には「解決金であれば払ってもいい」というケースもあります。特に経済力がない専業主婦や、小さい子どもを抱えている母親の場合は、調停委員も相手を説得してくれる可能性が高いです。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
モラハラ離婚での慰謝料の現実の話はいかがだったでしょうか?
離婚において、何を重視して、何にこだわらないのかは、離婚をする当人が決めることです。しかし、現実を知っておくことで求めることが変わる場合もあります。
また、フランスではモラルハラスメントに関する刑法が定められ、モラハラも懲役と罰金の対象になりました。また、モラハラも離婚理由として認められています。
日本も今後、モラハラの認知度が高まり、法律が変わっていくことを望んでいます。
ぜひ知っておいて欲しい、モラハラ離婚の慰謝料の現実のお話でした。
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