DVやモラハラ被害者は周囲の人たちから、
「なぜそんな人と結婚したの?」
「結婚前にわからなかったの?」
「なぜ逃げないの?」
「なぜ離婚しないの?」
そういう疑問に投げかけられることがあります。
それは何故か?
理由をお答えします。
1.「なぜそんな人と結婚したの?」⇒「結婚前は魅力的な人でした」
相手の魅力にひかれて結婚を決意
DV・モラハラ加害者は、DVやモラハラをやり始める前は、普通の人でした。
中には、普通の人よりもいい人である場合もありますし、特に、相手の要求や気持ちを汲み取る能力に長けていて、ここぞというときに素敵な言葉を紡いだり、スマートにふるまったり、頼りになるのです。
社会的に高い地位についている人も多く、周囲からの信頼も厚く、人格者のようにふるまうこともできます。
多くの結婚と同じように、「この人と添い遂げる」気持ちで結婚を決意していることがほとんどでしょう。
私の夫は、ボランティア団体にも所属しており、人の役に立つことを率先してやるようなタイプの人でした。友人も多く、結婚式にも多くの人が来てくれました。人からの信頼も厚く、献身的でリーダーシップのある人物。私には夫がそう見えており、尊敬できる夫と共に人生を歩んでいきたいという想いで結婚しました。
もちろん、この時にはDV・モラハラ加害者と結婚したという認識は全くありませんでした。
2.「結婚前にわからなかったの?」⇒「はい、分かりませんでした!」
DV・モラハラ男は結婚後に豹変する!
そんなひどい人だったら、結婚前にわかりそうだよね。結婚前に気づけなかったの?と多くの人が疑問に思うでしょう。
私だって、実際に夫と結婚していなかったら同じ考えを持っていたと思います。なぜその人のDV・モラハラ気質を見抜けなかったのか…付き合っていれば相手の人柄が分かるでしょう?と思ったと思います。
長いこと付き合いがあれば、だいたい相手のことは見えてくるものです。長年付き合いの続いている幼馴染や古くからの友人が、ある時突然、中身が入れ替わったと思うくらい、急激に考え方や行動が変わることはほとんどありません。
もしあれば心や脳の病気のときでしょう。
心優しい友人が、突如誰にでも構わず暴言をつく人に変貌してしまった!
穏やかでいつもニコニコしていた幼馴染が、暴力をふるい出した!
DVやモラハラ加害者の中には、このようにある時を境に本当に人が変わった、もしくは私が異世界に飛ばされたのではないかというくらい劇的な変化を遂げます。それは、別人になったと言ってもおかしくはないほどです。
結婚前に分かる「欠点」というべきものはあったでしょう。
しかし、人間には誰しも欠点があり、それが格段他の人と比べて大きなものでなければ、普通であれば見過ごされます。欠点もいわばその人の「個性」。
ちょっと「ん?」と思っていたとしても、「まぁ、これくらいのことであれば」という程度で許容することができる範囲内のものでした。
私の場合、夫は結婚後、突如私の趣味をバカにしてきたり、突如怒鳴って暴れまわる人に変わりました。私が夫と付き合っていた3年間、一度も声を荒げたところを見たことがなければ、人の悪口を言うところも見たことがありませんでした。
よく知った夫が、私の知らない人のように見えました。
そのくらい、急激な変わりようだったのです。
3.「なぜ逃げないの?」⇒「いい面もあります」
被害者はDVやモラハラのないときが本当の姿だと思い込む
DV・モラハラ加害者の中にはDVやモラハラをするようになったとしても、子どもの面倒をよく見たり、家事をよくやってくれるという良い面もあるような人が多いのです。
もし、結婚後にDVやモラハラという裏の顔しか見せないようになれば、きっと多くの人が早い段階で逃げて行くでしょう。
マインドコントロールの手口としてよく使われるのが、「飴と鞭」の手法です。鞭は言わずもがな、DVやモラハラのことです。
DVやモラハラしかなければ、配偶者はあっという間に逃げて行くことは間違いありません。
だからこそ、加害者たちは長い間、被害者をつなぎ留めておくために、時には贈り物をしたり、時には子供と遊んだり、時には優しい言葉をかけたりという飴も与えるのです。
この飴があるせいで、被害者は「やっぱり本当はいい人だ」「根はいい人だ」「DVやモラハラをするのは病気のせいだ」のように思い込んで、飴のときの姿を本当の夫だと思い込むようになります。
被害者は、飴の時が本来の姿だ、飴のときの夫に戻そうと無駄な努力をし続けるようになってしまうのです。
4.「なぜ離婚しないの?」⇒「その選択肢がありませんでした」
豹変後も私にとって夫は「優しく、頼もしく、愛情深い人」のままだった
この急激な変化がもたらしたのは、「元々とてもいい人だったのに、結婚が原因で、私の良く知っている人が変わってしまった」という間違った認識でした。
実際に、DV・モラハラ加害者の多くは、演技がとてもうまく、付き合う前や結婚する前はとても魅力的で理想的な人物であるようにふるまうことができます。多くの人は、結婚前の姿をその人の本当の姿だと思い込み、結婚後変わってしまった姿を、「何かが原因でおかしくなってしまった姿」だと思い込んでいます。
たとえば、年を取った親が、認知症のため全く別の人物のように変わってしまったとします。そのときに、あなたは「こんなのは別人だ」「もう私の親じゃない」「親だと思えないから、もう面倒は見ない」という選択ができるでしょうか?
多くの人は、親の姿が変わったとしても、面倒を見るのではないでしょうか。それは、認知症になる以前の親をよく知っているし、親に対して愛情があるからです。
それと同じように、DV・モラハラ加害者が結婚後大きく変わったとしても、被害者の認識としては、「私の良く知っている人物が突然、DV・モラハラ加害者に変わり果てた」なのです。
認知症になったからと言って突然、親を見捨てることがないのと同じように、突如人が変わった夫を「こんな人は夫としていらない」と捨てることはできません。
もともとの愛情や思い出などがあるからです。
「そんな旦那さんだったら、私なら離婚する」と考えている方は、もし、自分の親や兄弟、恋人やパートナー、子どもが「ある日突然、人が変わったかのようにひどい人物になる」ことを想像してみてください。
そうすれば、被害者が「なぜ逃げないのか」「なぜ離婚しないのか」がきっとよく分かると思います。
私は、結婚後突如として変わった夫が、「職場でひどい扱いを受けていてストレスが溜まっていた」とか「精神的に不安定だから」「うつ病だから」という話を聞き、今は病気のせいで感情や行動がコントロールできないだけなんだ、いずれは元のよく知っている夫に戻るんだ、そう思っていました。
そして、夫の言うがまま、私の行動を変えれば「元の夫に戻るのだ」と信じて、夫の言いなりになっていたのです。
責任感のある人は「家族を捨てる」ことはできない
また、認知症では徘徊が始まると、介護は24時間不眠不休になることさえある過酷なものです。
このときに、その過酷さに耐えきれず、介護する側が病んでしまったり、介護疲れで倒れてしまうこともあります。責任感の強い人ほど一人で抱えやすく、自分が倒れるまで介護や看病をし続けたり、ストレスをギリギリまで我慢してしまうことがあります。
同じように、「お前との結婚のせいで」「お前のせいで」「俺はこうなってしまったんだ!」と言われ続けた妻は、夫が苦しんでいる原因は自分にあるのだと思い込み、その責任を背負い込んでしまいます。特に、責任感の強い人はなおのこと、自らを責めて、夫を受け入れてしまいます。
ここにも、DV・モラハラ加害者の巧みなマインドコントロールが透けて見えますが、被害者本人は気づくことはありません。
いくら相手から非道な扱いを受けていたとしても、家族を看病し続ける責任があると思っているので、「夫を捨てる」という選択はないのです。
夫はうつ病になってから「うつ病である配偶者を捨てるなんてひどいことだ!」と、うつ病が原因で離婚した話しを持ち出していました。私自身も「病気である配偶者を捨てて離婚する」ということはとてもできないと思っていましたし、私さえ我慢すれば、夫との結婚生活を続けることはできると思っていました。
これが、相手が元気な状態であればまた違っていたと思います。「病気の家族を捨てる」という刷り込みは、罪悪感を抱かせ、離れさせなくするには十分でした。
まとめ
なぜ被害者がDVやモラハラ加害者と結婚してしまうのか?また、DVやモラハラ加害者だと分かった後も離れようとしないのか?この記事でお判りいただけたでしょうか?
身近にDVやモラハラの被害に遭われている方がいれば心配ですよね。しかし、このような心理状態に陥っている被害者は、自ら加害者と離れようとしないこともあります。
周囲が「あなたが被害者である」と気づかせるためには何をしたらいいのか、下記の記事にまとめてありますので、興味のある方はご覧ください。
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