殺人事件の犯人が捕まった時に、必ずその動機が注目されます。
「なぜ犯人はこんな残酷なことをしたのか」
「なぜ犯人はこの人を狙ったのか」
このように何らかの事件があった時にその動機や因果関係は必ず解明しようとします。
それはなぜでしょうか?
私たちは、行動を起こすのには必ず原因や理由があると考える癖がついているからです。
この癖があるためにモラハラの場合も、加害者がモラハラをする原因が必ずあると考えて原因を求めようとしてしまいます。
「モラハラをしてしまう原因は私にある」
「モラハラ夫は本当はいい人」
「病気で苦しんでいる」
「助けてあげたい」
そう思っている被害者の方へ、もしかしたらその気持ちはモラハラ夫にマインドコントロールされているせいかもしれません。
1.マインドコントロールは知らず知らずのうちに受けている
マインドコントロールの恐ろしいところは、被害者が自覚がないうちに支配を受けているということです。
無自覚であるが故、自分自身は正常であり、人からコントロールされているはずがないと強く思っています。
周囲の人が「それっておかしくない?」「旦那さんの言いなりになっているんじゃない?」と指摘しても頑なに認めようとしなかったり、ましてやモラハラ夫をかばう言動すらします。
マインドコントロールを受けていると、被害者はどういう心理になるのでしょうか?
1-1.モラハラ行為の原因を「私の責任」だと思い込む
モラハラ夫がモラハラをしてしまう原因は、自分自身にあると思い込み、自らを加害者だと誤って認識していることがあります。
モラハラ夫がモラハラをする場所は、家の中や車の中といった限られた場所でかつ、限られたい相手に対してだけ行われます。
被害者は、自分と一緒にいるときにだけモラハラが出るため、本当は良い人だけれども私が彼にモラハラをさせてしまっているんだと知らず知らずのうちにインプットされてしまうのです。
1-2.モラハラを愛情表現だと思い込む
モラハラ加害者たちは、「お前のためを思って」「お前のことが心配だから」「お前にもっと素晴らしい人間になってもらいたいから」という言葉を吐き、被害者のためを思ってモラハラをしているように刷り込んでいきます。
被害者は違和感を抱えながらも、モラハラを愛情表現だと思い込んだり、自分を教育してくれているんだと肯定的に受け取ろうとしてしまいます。
- 不器用な人だから
- 素直じゃないから
- 本当の彼を分かってあげられるのは自分だけ
とモラハラ加害者のことを認識していることがあります。
1-3.モラハラ夫をいい人だと思い込む
モラハラ加害者といえども、いつ何時でもモラハラをしているわけではありません。モラハラをしていない普通のときもあり、その時はいい人である場合が多いのです。
そのため、モラハラをしていない姿を本当の彼であると思い込み、モラハラは「何かがきっかけで本当の彼ではなくなってしまった姿」だと思っています。
1-4.モラハラ夫がしでかした悪行の責任を取らないといけないと思い込む
モラハラ夫は自分で蒔いたトラブルの種を自分自身で解決することができません。そのため、「おまえのせいでこうなったんだ!」と被害者に全責任を押し付け、自分のトラブルを解決するように強要します。
被害者はマインドコントロールされているので、モラハラ夫が自分のいない場所でやったトラブルですら自分の責任だと思い込んでしまっています。
謝罪に奔走したり、解決金などを支払う羽目になってしまいます。
2.なぜ被害者はそういう心理状況に陥ってしまうのか?マインドコントロールのメカニズムとは?
2-1.モラハラの原因が「私にある」と思ってしまう原因はこれだった!
モラハラ夫の場合、モラハラをはじめからしていたわけではありません。モラハラをするようになるきっかけ(同棲、結婚、出産、退職など)があり、ある時から突然モラハラが始まるのです。
長期間モラハラをしていなかった時期があることで、ある時を境にモラハラ夫が突然何者かに変わってしまったような印象を受けます。
そしてモラハラ夫が変わってしまったのは、自分との生活が始まってからだから「なにか自分に原因があるのではないか」「自分がモラハラをさせてしまっているのではないか」と思ってしまうのです。
モラハラ夫が出会ったときから元々人に対して怒鳴ったり、暴れまわるような人物であったのであれば、それは「モラハラ夫の元々の性格である」と誰しも判断することができます。
しかし、モラハラ夫はモラハラをしていない期間があるばかりに、元々は「モラハラをしない人」だったのに、私と結婚したことで「モラハラをする人」に変わってしまったように受け止めてしまうのです。
すると被害者の多くは原因は自分にあると思わざるを得ない状況に追い込まれます。
2-2.モラハラの原因が病気であると思ってしまう理由は?
また、私は夫のモラハラは病気が原因であると考えていました。それは、怒鳴ったり怒ったり暴れたりする姿が、普通の人のそれと明らかに違っていたからです。
誰しも怒ったときに口調を荒げることはあります。また、本当はいけませんが、カッとなった時にとっさに手が出てしまうことも理解できないことはありません。その様子を見て異常だと思う人はいないでしょう。
しかし、夫の怒り方は異常でした。
捕ったばかりの魚がピチピチと床をはねるように床に寝そべって暴れたり、頭を激しく何度も壁に打ち付けたり、5分でも10分でもひたすら大声(奇声のようなもの)を上げ続けるといったことをしていたからです。
明らかに普通の人の怒りとは違っていました。
東京カレンダーで連載中(現在は完結しています)の「私のモラハラ夫」には、夫である陽介が妻(真美)のスマートフォンを鍋で煮るというシーンが出てきます。これも誰が見ても異常な行動であると言えるでしょう。
モラハラの行動には常人には理解できない、常識の範疇を超えたものがあります。その異常行動は、被害者が理論的に説明できる限度を超えています。そのため、理由のつかないこの行動の原因は「病気のせいである」と考えてしまうのです。
2-3.極端な二面性を見せられると混乱し、同一人物ではないと思い込む
モラハラ夫の極端な二面性は、環境で身につけたものです。
しかし、先ほども言ったとおり、普通の人が見せる意外な一面とはかけ離れた別人格のように見えるそれは普通の人が理解できる範疇を超えています。
極端すぎる二面性を見たときに人は混乱し、それが同一人物のものではないと頭が処理をしてしまいます。
どちらもモラハラ夫の本性であるのにもかかわらず、悪い方の人格を切り離し、「いい方の彼が本当の彼」だと思い込もうとするのです。
被害者の多くが「モラハラをしなければいい人」というのは、モラハラと加害者を切り離して考えているからです。(本当は、モラハラと加害者はセットで切り離せるものではありません。)
2-4.モラハラ夫は計画性をもってパートナーを見つけている
モラハラ夫は、出会った当初からターゲットを捕まえるために巧妙な罠を仕掛けているわけです。何年も前から準備をし、モラハラができるターゲットを見つけるための努力を欠かしません。
初めはいい人を演じることで、数年後にモラハラが始まった時にそれがもともとの性格ではなくパートナーとの関係性にあると主張できます。(実際にそう言います。)
このモラハラをしない期間は、いわば被害者に「自分をいい人だと思わせる」刷り込みの期間です。
そのためには、たとえ何年かかったとしてもじっと息をひそめてモラハラを我慢できます。そして、ターゲットが罠にかかったら、「しめた!」と言わんばかりにモラハラを始めるのです。
被害者は何年もモラハラをしてきていない人が急にモラハラをするようになるとは思いません。結婚するときにも「この人ならば大丈夫」と安心して結婚するでしょう。
ですがモラハラをしていなかった期間ですらモラハラをするための下準備であり、「被害者を騙すための」モラハラ夫の巧妙な手口なのです。
3.モラハラ夫のマインドコントロールは出会ったときから始まっている
つまり、被害者は加害者と出会ったときから罠にかけられ、その時からマインドコントロールの第一歩目が始まっていたということです。
そして「本当はいい人」「モラハラをしなければいい人」という洗脳を受けていることに気づかず、いい人でもなんでもないモラハラ夫の呪縛から抜け出すことができません。
被害者の方は、過去の良かった日々ではなく、今現在の夫の姿や今現在受けている被害の大きさを正しく認識してください。
モラハラ夫の今の姿が、本当の彼の姿なんですよ。
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