辛い結婚生活を幸せだと思い込む妻…問題を見ないフリする心理メカニズムとは?

辛い結婚生活なのに幸せだと思い込む妻…問題を見ないフリする心理メカニズム

モラハラやDVのある家庭では、支配関係や上下関係があり、いびつで歪んだ夫婦関係があります。しかし、本人たちはそれに気が付かず「幸せ」だと錯覚していることもあるのです。

私自身、別居を機に夫から離れるまで、自分がモラハラを受けていることに全く気が付きませんでした。さらには別居の一カ月前までは、普通の家庭であると思っていましたし、結婚当初からシャンプーも買ってもらえないような経済的DVを受け続けていたのにもかかわらず、「自分は幸せである」とも思っていたのです。

モラハラ被害者は被害に気が付かないばかりか、自分のことを加害者だと思い込んでいたり、さらには「他の人たちよりも幸せな生活を送っている」と錯覚していることもあります。その心理的メカニズムを解説します。

目次

同じことを言われ続けていると「マインドコントロール」されていく

モラハラ被害に遭い続けている人は、相手からのマインドコントロールを受け、支配されていることが少なくありません。

最初は、相手の言っていることがおかしいと反論していることが多いのですが、モラハラ加害者から執拗に被害者が悪いと責め立てられているうちに、考え方がモラハラ加害者寄りに変化していきます。

長い間、モラハラ加害者から「お前が悪い」「お前のせいで」「おまえはおかしい」「お前を教育していやっている」と言われ続けるうちに、「本当に自分が悪いのではないか」と思い込むようになっていくのです。

中には、相手から説教をされたり、怒鳴られたりすると、「私のために怒ってくれてありがとう」と感謝をするようになるケースさえもあります。

こうして、支配下に置かれた被害者は、モラハラ夫のことを被害者で、自分を加害者だと思い込むようになります。問題は、相手のモラハラではなく自分の不甲斐なさにあると思うようになるのです。

古い価値観にもとづいた「女性の役割」がモラハラを肯定する

日本では、女性は男性を立てる、女性は控えめであるべき、女性が男性を支えると言った考え方が根強く、夫婦間の支配関係に寛容な一面があります。男性が家庭を支配することは、ある程度どこの家庭でもあるようなものだというように思われているのです。

男性は許され、女性は許されないという考え方

子どもが幼いときに、母親が夜遅くに飲み会などで出かけると非難されることがあります。「母親としての自覚がない!」「子どもが可哀そう」と母親の行動がバッシングの対象になります。

一方で、子どもが赤ちゃんのうちに父親が飲み会に出かけても、「父親としての自覚がない!」「父親失格だ!」と非難されることはほとんどありません。

このように、同じことをしても男性は許されるけれど女性は許されないという考え方がそもそも多くの人に根付いているとも言えます。

モラハラの暴言や口撃の中身には、こうした「男女の役割の差」を持ち出すケースは少なくありません。(「母親になったのだから、仕事をやめろ」と働くことを禁止される一方、「お金がないのはお前が働かないせいだ」と責められ、生活費を渡してもらえなくなることもあります。)

そして、多くの人が男女差による差別を許容していることが、モラハラを受け入れてしまうことにつながるのではないかと考えられます。

家庭の問題は妻の責任であるという考え方

家庭の中での問題は、すべて妻に責任があるように言われることもあります。

たとえば、妻が夫から怒鳴られた時ですら「男性を立てて、ほめて伸ばす」「夫を手のひらで転がすように妻がコントロールするべき」のように妻が至らないために夫をコントロールできていないと言われることも珍しくはないのです。

夫が浮気した時ですら、「(妻である)あなたがしっかりしていないからよ!」と言われることすらあります。

こうした「妻が家庭を守る」の意味の中に、妻が大の大人(夫)の責任まで取ることも含まれていることがあります。

夫のモラハラの原因は、「妻がきちんと家庭を守らないから」と問題を置き換えられてしまうのです。

周囲から「気にしすぎではないか?」と言われ、自分が神経質なだけなのかもしれないと思う

モラハラは被害に遭ったことのない人からの無理解や、夫婦喧嘩だと思われていることがあり、周囲に相談しても「どこの家庭でもあること」「そんなことをいちいち気にしていたら夫婦としてやっていけない」と言われることもあります。

周りからのアドバイスの結果、被害者は「自分が気にしすぎているだけなのかもしれない」と結論付け、辛い気持ちに自分自身で蓋をしてしまうことがあります。

モラハラは一つ一つのエピソードだけ見ると、悪質さ、執拗さや攻撃性が分かりづらく、周囲に本質を分かってもらえないことから、アドバイスがかえって被害者の孤立を深めてしまうこともあるのです。

辛い気持ちに蓋をしてしまった被害者は、「辛い」ことは無かったと思い込むようになります。

感覚がマヒしていき、異常さに気が付かない

モラハラ被害では、当の本人でさえその異常さに気づいておらず、モラハラ被害に気が付かないことは少なくありません。

長い間おかしな環境にいると、次第に感覚がマヒし、「罵倒されることや侮辱されることすら当たり前である」と思うようになっていくためです。

たとえば、ケチャップを切らしたことで2時間説教されたとしたら、だれしも「それはおかしい」「異常だ」と思うでしょう。

しかし、当の本人は、それがいつも行われていることなので異常だと思っていません。

毎朝パンを食べている人が、今日も朝食にパンが出されることを「毎日パンはおかしい!」と思わないのと同じです。

モラハラ環境にいる人は「モラハラが日常」「モラハラが当たり前」になっています。モラハラ環境に適応してしまい、異常さに気が付かないのです。

幸せだと思ってしまうメカニズム

そして、モラハラ環境にいてひどい扱いを受けているのに「私は幸せだ」と思ってしまうのも心理的なメカニズムがあります。

たとえば、10キロのマラソンをした後に飲む麦茶は、いつも飲んでいる麦茶と全く同じものだとしてもとてもおいしく感じますよね。モラハラ被害者は、いつもモラハラを受けているために、たまにモラハラ加害者が見せる「優しさ」がこのマラソン後の麦茶と同じように「何倍にも」増幅してみえるようになります。

モラハラ加害者は「飴と鞭」を使い分けることで、被害者が逃げ出さないようにうまくコントロールしています。被害者が逃げそうになると、飴を振りかざして引き留めようとするのです。

そして、今まで「鞭」に苦しめられてきた被害者にとって、「飴」はご褒美のようなものです。飴の効果は絶大で、不幸さえも「幸せだ」と思い込み「どこの家庭にもあるような些細なケンカ」だと間違った認識を深めていきます。

マイナスから始まるとゼロになっても差はプラス!

元々、悪いところが多い人の場合、少しでもいいところがあると、その少しのいいところがもたらすプラス効果が大きく感じられることがあります。

たとえば、暴力をふるってくる人が、ある時暴力を振るわなくなったとしたら、全体で見ればマイナスがゼロになっただけです。結果的には、ゼロなのに、元がマイナスであったために、暴力を振るわないひとになったことが「いい人」になったように見えてきます。

モラハラの場合でも、毎日説教を2時間する人が、あるとき説教を10分しかしなかったとします。そもそも説教をしていること自体がマイナスなのに、大幅に時間が短縮されたことで、「いい人」になったかのように目に映るのです。

モラハラでは波があり、常にひどいモラハラをし続ける人は稀です。この良いときと悪い時を繰り返すことを「モラハラサイクル」と呼びます。

マイナスが大きすぎるために、「良いとき」が素晴らしくいいように思えてしまうのです。例え、その良いときが普通の人にとっては「当たり前」であったとしても…。

認知バイアスによって問題を放棄していると被害から抜け出せなくなる!

世の中は、性善説によって支えられていますし、多くの人は性善説を信じています。

性善説は「人は生まれながらにして善である」と言う考え方です。

これは、私たちの基本的な価値観に根付いていると思います。たとえば、初めて会う人であったとしても、その人のことを「この人は泥棒かもしれない」「この人は詐欺師かもしれない」と思って接する人はいないでしょう。「この人と仲良くなれたら嬉しい」と思うからこそ、友人づきあいができるわけです。

モラハラ加害者に対しても「この人は悪人だ」と思うことがなかなかできないのは、基本的に人を信頼しようとする作用があるからだと思います。

たとえモラハラ加害者であったとしても良い面に着目して「この人はモラハラをするけれど、本当はいい人だ」と思っていくのです。

脱モラハラ!に必要なことは?

知識をつける

多くの専門家がマインドコントロールから抜け出すために必要なのは自分自身を教育することだと考えています。

たとえば、マインドコントロールの手口を知っている人は、相手が飴を使ってきたときに「今この人は私を丸め込もうとしている」ことに気が付くことができます。知識がない場合、「本当はいいところもある」と肯定的に捉え相手の策略に気が付きにくくなります。

悪い部分を無視しない

その人の悪い部分を見たときに、「この人は悪い人だ」「距離を置こう」と思いすぐに行動できる人はモラハラ被害に遭いにくい人です。

相手から好意を向けられた時になんやかんやと付き合いを続けてしまう、こういうケースではズブズブと被害から抜け出せなくなります。

モラハラをする人は、普通の人と比べても「悪い時が悪すぎる」と言えます。他の人よりもいいところがあったとしても、他の人よりも悪いところがある人との付き合いは、考え直したほうがいいでしょう。

自分のことに目を向ける

また、モラハラ被害が長く続いていくうちに、相手の機嫌が自分の人生を左右するかのような錯覚に陥り、モラハラやモラハラ加害者のことばかりが気になって、自分自身のことを振り返る余裕がなくなります。

こういった症状がひどくなる前に、自分の感情、症状などの変化に気が付くことが必要です。

あなたの体はどこが痛いですか?いつどんな時に痛みますか?病院にはいけますか?おかしいことに気が付くきっかけは日常に転がっています。

被害に気が付いてほしい場合は?

あなたの大切な人がモラハラ被害に遭っていた時に、どうすれば本人に被害を自覚させることができるでしょうか。

下記の記事で、被害者に被害を自覚してもらう方法をまとめています。

辛い結婚生活なのに幸せだと思い込む妻…問題を見ないフリする心理メカニズム

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