「共依存」と言う言葉を聞いたことがある人も多いかと思います。
共依存という言葉はもともとアメリカでアルコール依存症の配偶者を持つ妻たちが自発的に使い出した言葉だと言われています。
共依存の関係は、モラハラでは起こりやすくかつ抜け出すことが難しいと言われています。
共依存に陥った被害者はどうなってしまうのか。そして、共依存関係から抜け出すためにはどうすればいいのかをまとめました。
モラハラ被害者に起こる「共依存」とはどんな状態なのか?
共依存と言うと依存体質同士の人がお互いに寄りかかっていると思われますが、実は違います。
たとえば、相手のことを好きだから別れられない、人に依存する性格や人に尽くすタイプだから別れられない…そのような人が「共依存」に陥るのではないかと考えている方もいらっしゃるかもしれません。
モラハラで起こる共依存とは、相手に頭の中や行動を支配されて、自分の人生を送れなくなっている状態のことを指します。
- モラハラ加害者がモラハラをしないように機嫌を取ろうとする
- モラハラ加害者がモラハラをしてしまったら、それは私の責任であると思う
- モラハラ加害者の思考を先読みをして行動する
- モラハラ加害者の失敗の尻拭いをする
- 崩壊している家庭をなんとか支えようと頑張る
- モラハラ加害者やモラハラについて頭がいっぱいになってしまう
- 自分の人生について考えることができない
モラハラ加害者は被害者に寄生する
モラハラ加害者は、被害者を支配、コントロールして自分から離れていかない状態を作り出します。人をコントロールし、自分にとって都合のいい環境をつくり、そこに寄生して生きて行くのが彼らの生き方です。
モラハラ加害者は被害者が自分のケアを怠ったり、モラハラ環境から逃げ出さないよう被害者の持つあらゆる自活の力を奪っていきます。
親兄弟、友人、仕事、経済力、思考力など・・・。被害者は本当に加害者に依存しないと生きていけなくなり、モラハラ環境から抜け出すことが難しくなります。
共依存で起こる症状とは?
共依存状態に陥ると被害者は加害者と自分との心の境界をうまく認識することができなくなり、加害者に思考や行動を支配されるようになります。
共依存状態の被害者には特有の症状が見られます。
1.相手が怒るとこの世の終わりだと思うようになる
誰だって人から怒られるのは嫌です。
しかし、正常な関係にあれば正当な理由なしで怒られた場合は相手に対して不快感を感じますし、怒られた理由が正当な理由であれば反省します。そして、次に怒られないための対策を取ります。
しかし、モラハラ加害者は理由に関わらず自身の機嫌の良し悪しだけで突然、怒り出します。
被害者にとってはそれは天災に遭うようなもので、何の対策も取ることができませんし、また相手が理不尽な理由で怒っているのにもかかわらずそれを反論することができない関係になってしまっています。
また、反論したところで何の効果もありません。雷に怒ったって仕方がないのと同じです。しかし、雷はやはり恐怖の対象で、目の前に雷が落ちれば「自分の人生はもうだめだ」と誰しも思います。
被害者は突然始まる加害者の怒りを感じると、「またこの辛いときが始まったか」と絶望し、そのことが自分の人生の終わりだと思うようになります。そこまではいかない状態であっても心がざわざわし、ひどい緊張状態に陥ります。
共依存の関係では、相手の感情がまるで自分の人生を決めてしまうかのような錯覚を起こします。
2.相手の喜びがさも自分の喜びのように感じる
例えば、冷蔵庫のケチャップが切れていて、それを「今すぐ買ってこい!」と言われ、夜遅くに嵐の中遠くのスーパーまで買いに行かなくてはならなくなったとします。
あなたは一刻も早くケチャップを買うため、頑張って走り、ケチャップを購入して家に帰りました。そして、帰ってくると相手は先ほどとは全く違った態度で、ケチャップを買ってくれたことを喜びました。
その時に、「彼の役に立てて良かった」とか「喜んでもらえて報われた」とか思ってしまっていたら立派な共依存です。
ましてや「ケチャップを切らすなんて自分はなんてダメな奴なんだ」と思ってしまっていたら末期です。
家族や親しい友人の関係では、相手が喜ぶと自分もうれしく感じることは普通の感情です。そのため、モラハラ加害者が喜んでいることが自分の喜びのように感じることが異常な関係であるということになかなか気づけません。
共依存が進んでくると、モラハラ加害者が職場で理不尽な扱いを受けていると言われたら涙したり、誰かに向けて怒っていると自分もその相手を憎むようになるなど、モラハラ加害者の感情と自分の感情の境が分からなくなっていきます。
特に人の気持ちを推し量るのがうまい人や世話を焼くのが好きな人は、深い共依存関係にはまりやすく、また抜け出しにくいので注意が必要です。
3.相手に見捨てられたら生きていけないと思う
精神的な理由だけでなく、経済的な理由なども含め、相手に見捨てられたら生きていけないような気持ちになります。そのため、この関係にしがみつくことに必死になり、相手がどんな理不尽な要求を突き付けてきても、それを叶えようと努力してしまいます。
常日頃から「お前はだめだ」「そんなお前を見捨てないのは俺だけだ」と言われていることで、被害者は強い自己否定をし、自分はダメな人間であり、一人で生きていくことができないと思い込んでしまうのです。
しかし、モラハラ加害者と出会う前は自活していたり、普通に生活していたパターンがほとんどです。
「相手がいないと生きていけない」と言うのは洗脳による思い込みではありますが、一緒にいる限り被害者は本当にそうであると思い続けてしまうのです。
4.自分がいなかったら相手が生きていけないと思う
中には、自分がいなかったらモラハラ加害者が生きていけないだろうから、離れることができないというケースもあります。
モラハラ加害者は現実の自己と理想の自己像に大きな乖離があるのが特徴ですが、この場合、被害者も加害者のことを理想化して見ていることがあります。モラハラ加害者のことを手のかかる子どものようにとらえていたり、純真であるが故の行動と間違った認識をします。
「相手のことを受け入れたり、理解できるのは自分だけだ」と思い込み、自ら離れることを拒んでしまうので、周りが離れることを進めてもなかなかうまくいきません。
最も共依存を解消しにくいケースです。
共依存から脱出する方法は?
モラハラでは共依存状態になって思考が支配されることに加え、加害者からの経済的DVや社会的DVにより経済的な自立を妨げられます。被害者は気づかぬうちに支配・コントロールを受け、自ら抜け出すことが難しい状態になっていることも多いのです。
さらには、「別れたほうがいい」「離れなさい」と言われたとしても、「そんな彼でもいいところがある」「本当はいい人で今は病気なだけ」と加害者を庇う言動をすることも少なくはありません。
被害者が共依存から脱出するためには、心の境界不全の状態を認識すること、自分の問題ではないことを手放すこと(課題の分離)が必要だと言われています。
実際に私が共依存から脱出することができた行動は次のものがありました。
1.物理的に距離を取り、おかしな関係であったことを自覚する
誤った考え方から抜け出すためには、
物理的に距離を取ることです。
それでもできるだけ長期間がいいでしょう。
そして、距離を取っている期間は一切の連絡を取らないのが望ましいです。
依存していた相手と離れると、最初は絶望的な気持ちになったり、抑うつなどの気分の激しい落ち込みにあったりしますが、時間の経過によって次第に解消されていきます。そして、自分のことが客観的に見ることができるようになり、モラハラ加害者との関係が異常であったということに自ら気が付けるようになります。
長い間ストレス状態にさらされ続けていると、次第に麻痺していき、ストレスを感じていることを自覚できなくなります。
慢性的なストレス状態から脱却して初めて、結婚生活でのストレスを正確に把握できるのです。そして、ストレスのない状態がどういう生活であったのかを思い出した時、目が覚めるような気持ちになるでしょう。
完全に離れてしまうと高ストレス状態にあった結婚生活にもう戻ろうという気にはなりません。
2.上下関係のない夫婦や家庭の様子を見たり聞いたりする
共依存は、モラハラ加害者からのマインドコントロールの末に陥っています。思考がモラハラ加害者によってコントロールされているので、なかなか自分の考えのおかしさに気づくことができません。
しかし、このマインドコントロールを解く方法があります。それは、外の情報を取り入れることです。
モラハラ加害者は、被害者に対して「どこの家庭もこういうものだ」と吹き込むため、「モラハラは一般的な夫婦関係でも行われているもの」だと誤って認識しています。
ですが、普通の夫婦関係と違い、妻が夫に言い返すことができなかったり、明らかな上下関係があるのがモラハラ加害者・被害者の特徴です。
友人の夫婦がどういう関係なのか見たり聞いたりすることは、洗脳を解く第一歩です。
私自身も、自分の受けている経済的DVの被害に友人からの話で気が付くことができました。(→モラハラ夫がする経済的DVってどんなもの?対処法は?)
3.偽りの愛に気づく
モラハラ加害者にはいつも虐待をするわけではなくときに愛情深い態度を見せる人もいます。 虐待と愛情が混在する場合、倒錯した関係性が生まれ、より共依存になりやすいのではないかと私は考えています。
彼らの愛を注視してみてください。彼らの愛は不変的ですか?愛を得るためにはあなたが何かをしないといけないと感じている場合、あなたは生きづらく苦しさを感じているはずです。
また、愛が撤回されることを恐れて自分の行動の決定権を相手に委ねるように変わっていってしまうこともあります。
モラハラ加害者は、人を愛することができない人がいます。彼らの偽りの愛について知識をつけることは、共依存から抜け出すための武器になります。
彼らの攻撃にばかり目が行きがちですが、彼らの普段の様子で違和感を感じる部分にも目を向けてみてください。あなたが苦しい、おかしいと感じているところにはあなたをコントロールする心理テクニックが使われている可能性があります。
4.自分の好きなものを取り戻す
モラハラは、被害者への「罰」と称して、被害者の大切なものを奪っていくルール作りをして生きます。
たとえば、
親しい人と会ってはいけない、
連絡を取ってはいけない、
好きなものや大切にしているものを捨てなければいけない
といったことです。
共依存の関係にいると、「加害者の言っていることがすべて正しい」とか「加害者の言うとおりにしなくてはいけない」と思い込み、自らの意思で大切なものを捨てていくようになってしまいます。
加害者も「俺のことが本当に好きならできるはずだ」「俺のことだけ大切にしてほしい」という言葉をささやき、二者択一で彼か彼以外を選ばせようとします。彼を選ばなければ彼が傷つくという罪悪感から被害者が逃れられないような心理状態になっていくのです。
この奪われたり、捨てられたりした大切なものは、被害者のアイデンティティです。自分自身がどんどんと奪われていくことで、さらに共依存の深みにはまっていきます。
共依存から回復するためには、失った「自分」を取り戻す過程が必要です。
加害者と離れ、マインドコントロールが解けた暁には、なくした自分を一つずつ取り戻してください。
共依存を克服するためには
深い共依存状態に陥ってしまったケースでは、一度共依存から脱出できたとしても、また同じ相手に戻ってしまうことがあります。過去にも共依存の関係があった場合は依存体質であることを自覚し、再び共依存を繰り返してしまわないように、相手との関係を清算するだけではなくて、自分の依存体質を克服していく過程が必要になります。
- 誰かから必要とされる関係が心地いいと思ってしまう
- 一人では寂しい、不安だ
- 自分を責める癖がある
- 決断することができない
共依存に陥ってしまったことで思考パターンが変わってしまっていることがあります。「自責思考」や「決定権を放棄する思考」に陥っていたらそれを自覚しましょう。また、「お前は一人では何もできない」「お前はおかしいから正してやる人は必要だ」と言った言葉を長期間投げつけられてきた人は、自立することに大きな不安を抱えてしまいがちです。しかし、こういう思考は自らの思考を変えることではなかなか改善しづらく、実際に「自立できた」と言う成功体験を繰り返すことが克服の成功のカギになります。
また、何かを決断することの中には「捨てる」決断も大きな意味を持ちます。たとえば、自分の持ち物を整理すること、不適切だった関係を見直して人間関係の断捨離をすることも、共依存克服に繋がるステップです。
私は別居してから資格試験に挑戦し、資格を取得していく過程の中で少しずつ「自己否定感」を捨て、「自信」を取り戻すことに成功しています。モラハラ環境ではあらゆることが禁止され、自由に選べなかった人生を選べる喜びや、挑戦したことが成功する体験は、自立への大きな力になります。最初は大きな不安が付きまといますので、スモールステップから始めていくのが良いでしょう。
共依存について知っておくべきこと
共依存はモラハラを加速・助長する
依存症の中に「買い物依存症」というものがあります。これは借金をしてまで買い物をし続けてしまう、立派な病気です。
そして、借金を返すために借金を重ね、どんどんと返せないお金が膨らんでいきます。
もしこのお金を親が肩代わりして返済したらどうなるでしょうか?借金は無くなり、一見して問題が解決したかのように見えます。
しかし、これは依存症患者に対して最もやってはいけないことでもあります。
借金を別の人が肩代わりして返してしまうと、買い物依存症の患者は自分の借金を自分で返さなくてもなんとかなると学びます。そして借金がゼロになったので、また買い物ができると考えてしまうのです。
借金を肩代わりしてもらうときに「もうやらない」と誓ったはずなのに、また借金を繰り返します。さらに悪いことに、困った時は誰かが借金を肩代わりしてくれると学んでいるので、前以上の金額を借りてしまうことも少なくありません。自分が返さなくてもいいと思っているので借りるときの罪悪感やストッパーがないからです。
モラハラもこの借金と同じです。もし妻がモラハラ行為の責任を肩代わりしてくれるのであれば、モラハラ夫は「モラハラ行為をしても誰かがその責任を取ってくれる」と学び、悪化していきます。
モラハラで家族をコントロールできた時モラハラは悪化する
家族は、モラハラによる被害だけではなく、他人に行ってしまったモラハラ行為のせいで他人から訴えられるなどの二次被害を被る可能性もあります。
たとえばモラハラ夫が怒鳴ったことでご近所に頭を下げに行かなくては行けなかったり、慰謝料などの金銭的な負担を強いられることもあります。
そのうち家族は、モラハラ二次被害を避けるため、できるだけモラハラ夫の言うことを聞こうとしたり、機嫌を取るようになります。
その様子を見たモラハラ夫は、モラハラがパートナーや家族に言うことをきかせる材料として有効であると学んでしまいます。
本人が不利益を被ることがモラハラの唯一のストッパー
こうした行為を止めるストッパーになるのは、本人自身が何らかの不利益を被ったり、苦痛を味わうことです。
モラハラをすれば自分が損をすると学ばせなければやめることはできません。
共依存に陥っているとき、モラハラを受けている妻はモラハラ夫が何も言わなくても、責任を取る行動を無意識にしてしまっていることが多いのです。
共依存者がモラハラの尻拭いをすることは、モラハラができる環境を作り出してしまっているということに他なりません。共依存者がいれば、モラハラ夫はモラハラ行為をやめることはできません。
被害者を救いたいと思っている人へ
また、身の回りにモラハラ被害者がいるけれど、洗脳されていて話を聞いてもらえない場合は、こちらの記事を参考にしてください。
「外からの情報」が被害からの脱出の大きなきっかけになることがあります。無理に被害者の気持ちを変えたり行動を起こさせるより、自身の気持ちや変化に本人が気づけるように働きかけることが必要です。
まとめ
共依存関係が深ければ深いほど、気持ちの変化には時間がかかります。共依存の関係が進めば進むほど、モラハラ加害者の言葉の与える影響が大きくなり、本当にそうだと強く思い込んでしまうからです。
モラハラ加害者は神様ではありません。
共依存が解けてくると、多くのことに気付けるでしょう。
そして、何よりモラハラ加害者がいなくても生きていけるということを実感できます。
またモラハラの責任はモラハラ加害者のものです。どうか被害者の方はその責任を手放してください。そして、共依存者としての人生ではなく、ご自身の人生を歩み始めてください。
コメント