DVやモラハラを治すことができるかどうかについて、このサイトではいろいろな記事を通して私なりの考え方を発信しています。
そして、実際に治すことができた人たちも多くいることから「DV」や「モラハラ」は治るものだと言えます。
しかし、全員が全員治るものではありません。
まず一つ目に、その原因が発達障害であった場合、治すことは非常に難しいと言えます。
そして、二つ目に、本人に治す意識がない人も恐らく治らないでしょう。
DVやモラハラを治すことができる人には、ある力があると考えられます。今回は、DVやモラハラを治すことができる人の力について解説します。
なぜ、モラハラ加害者の脳は「未熟」なのか?
私たち人間は、衣食住の整った環境でただご飯を食べ寝さえすれば、健全に育っていくわけではありません。
近年、「愛着障害」という言葉が注目されるようになってきています。
愛着とは、養育者(主に両親)からの適切なアタッチメント(かかわり)のことです。この愛着が不適切であったり、愛着を得られなかったりすると「愛着障害」を引き起こし、他者とのコミュニケーションに問題が生じるようになります。
「愛着障害」は様々な精神疾患や依存症、その他の不適切な行動の原因になると考えられています。モラハラもその一つです。
脳は養育者の適切なアタッチメントがあって初めて成長していく
モラハラの原因となる環境の1つに「ネグレクト」や「育児放棄」が挙げられていますが、ネグレクトの定義としては、衣食住を十分に与えないことだけではなく、十分な養育や愛情を与えないことも挙げられています。
私たちは、脳が発達していく過程で、さまざまな発達課題をクリアしていく必要があります。そして、その発達課題がクリアできなかった場合、その課題を残したことで脳が未発達の状態のまま大人になってしまうのではないかと考えられるのです。
発達課題をクリアできなかったケース①
たとえば、小さい子どもがけがをして泣いたとします。養育者(主に母親)が子どもに寄り添い「よしよし、痛かったね」と声を掛けました。そして、けがをしている部分に手当を施しました。
この時、子どもは自分の痛みが「痛かった」という言葉で表現できることを知りますし、言葉に出して「痛み」を訴えれば、母親や周囲の人から手当てを受けることができることを学びます。
一方で、いくら泣いても母親が来なかったらどうなるでしょうか?
ましてや、「そんなことくらいで泣くんじゃない!」と言われたらどうなるでしょうか?
中には「泣いている声がうるさい!」と殴られてしまうケースもあるかもしれません。
子どもは、痛みを訴えてはいけないと、泣くことを我慢するようになるでしょう。自分の痛みを解決する方法はなく、ただ我慢することだけがけがをしたときの対処法だと学んでしまいます。
発達課題をクリアできなかったケース②
他にも、赤ちゃんの頃は部分対象関係という目の前の物事だけで相手を判断することしかできません。自己愛性パーソナリティ障害の人は、この部分対象関係を大人になってからも持ち続けていると考えられています。
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部分対象関係しかない赤ちゃんは、床に落ちているものを食べようとしたときに怒った母親と、笑顔で抱きしめてくれる母親が一緒の人物であることに混乱します。
しかし、適切な愛着(アタッチメント)を受けて育つことによって、目の前の人物が怒っているときも笑っているときもどちらも優しくて大好きな母親であるという「全体対象関係」の評価を持つことができるようになります。
だいたい2~3歳ごろに部分対象関係から全体対象関係の評価へと発達すると言われています。
一方で充分な養育を受けずに育った場合、この部分対象関係から全体対象関係への移行がうまくできずに、いつまでたっても赤ちゃんのような「目の前のことだけで相手のすべてを判断する」段階から抜け出せなくなります。
モラハラ加害者は考えに同調してくれたり、賞賛してくれる人を好みますが、逆に成功者であったり、批判してくる人をものすごく嫌います。また、賞賛してくれていた相手から少しでも批判されると激怒します。
これは、「部分対象関係」による評価のせいで、賞賛してくれる限りは味方であるが、批判された瞬間に敵になるためです。
これも発達課題をクリアできなかったことが原因で、脳が未成熟のために起こると考えられます。
元夫は、自分がなぜ怒っているのかを自身で理解できない人でした。怒った理由を、「自分が未熟だから」と言っていました。そして「次は怒らないように我慢するから、次はもうしないから」と言っていましたが、また同じことを繰り返していました。
自分の怒りと未熟さが結び付いているのは、「こんなことで怒るなんて未熟な子どもだ」と言われていたからではないかと思うのです。
自分の怒りの理由が分からないばっかりに、「どう対応すれば怒りが収まるのか」がわからず、ただ「怒りを我慢すればいい」と考えていました。
結局怒りは適切に処理できないので溜め込まれ、爆発するしかなくなるのです。
脳は、時期が来れば自然と発達を遂げるのではなく、養育者からの適切なフォローがあって初めて、成長していくことができる。
未解決の発達課題をいつかクリアする必要がある
不十分な養育によって赤ちゃんの頃に発達課題をクリアできなかった場合、その課題は大人になってからも未解決のまま抱えていることになります。
つまり、この未解決の問題を大人になってから解決できるかどうかが、DVやモラハラを治すことができるかどうかにかかわってくるのではないかと考えられるのです。
DVやモラハラを治すことができた人の共通点は、自ら「自分を改善するための行動を取っている」ということです。
こちらの記事(DVを治した人の体験談「DVはなおる」にモラハラを治すヒントがあった!)で紹介している中村さんは、一度、更生プログラム担当者から不適切な扱いを受けたのにもかかわらず、すぐに別の機関の門扉を叩いています。
この段階でくじけてしまったり腐ってしまったりする人も多くいるでしょう。
すべての人が中村さんのような行動を取ることができるとは思えません。
中村さん自身が、問題を解決しようとする力があることがよく分かります。
つまり、問題に向き合ったり、それを解決するために行動を起こす力があるかどうかが、DVやモラハラを治すことができるかどうかを大きく左右すると言えるのです。
モラハラ加害者たちはモラハラ環境に適応した人間である
自己愛性パーソナリティ障害の患者が「自分はおかしくない!おかしいのは周りだ!」と言うのは、彼らは成長段階でモラハラ環境に適応したためです。モラハラ環境に適応したために、非モラハラ環境には適応できません。海で暮らす生きものが川で暮らすことができないのと同じです。
モラハラ加害者は「モラハラ環境」であればうまく適応して生きていけると考えられますし、非モラハラ環境では「適応障害」を起こしてしまいます。
その原因は、モラハラ加害者にしてみれば「周囲がおかしいから」。それは彼らにとっては真実です。
私から見たモラハラ夫がおかしく見えるように、モラハラ夫から見た私もおかしく見えるのでしょう。
DVやモラハラ環境をおかしいと思えるかどうかは改善できるかどうかの分かれ道になる
モラハラ環境への適応が十分になされてしまった場合、「モラハラ環境の方をおかしい」と思うことは非常に難しくなっていきます。
モラハラ環境にどのくらい適応しているのかについては、本人の生まれ持った気質や周囲のモラハラ人間の多さ、モラハラを受けてきた期間や程度などに関係すると考えられます。
モラハラをおかしいと思っていない人たちが、モラハラを改善するための行動を起こせるはずはありません。
「周囲が自分を理解してくれないのが悪い」と思うだけでしょう。
何らかのきっかけで「モラハラは良くない」「親や周囲は間違っていた」と気づくこともあります。
多くの場合は、人間関係の喪失、社会的地位の喪失、孤独といったことがきっかけになるようです。
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考える力が奪われてしまうケースも
また、長期間の虐待により「学習性無力感」に陥ってしまうことがあります。学習性無力感とは、「何をしても状況が改善されない」ことから「すべての行動は無駄である」と学習し、虐待や暴力を受けていてもそれを回避する行動を取らなくなることです。
モラハラ加害者の中には、非常に無責任で他力本願の人が多くいます。
これも、自己解決能力が奪われてしまい、問題解決をするためには「他人に依存する」しかないことが原因であると考えられます。自分で問題を解決したり、回避する行動がとれないので他人に問題を丸投げするのです。
モラハラ加害者がよく使う「お前のせいだ!」とは、まさに「自分自身には問題を解決する力がない」という宣言でもあります。
こうなってしまうと、自ら問題と向き合ったり、改善しようと行動を起こすことは非常に困難です。
まとめ
DVやモラハラを治すことができるかどうかというのは、DVやモラハラがおかしいことだと気づくことができ、治すために努力する力がある人だけです。
モラハラ環境にすっかりと適応し、居心地のいいその場所から抜け出すことができない場合は、モラハラを治すことはできないでしょう。
私たちの脳は大きな力を持っています。しかし、その力があるがために、悪い環境にも適応してしまうこともあります。モラハラを治せない人は、悪い環境の方が居心地がいいために、そこから抜け出そうとしないのです。そういう人は、モラハラを治すことはできません。
すべての人のDVやモラハラが治るわけではないこともあらかじめ知っておかなくてはいけません。
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