結婚しようと決めてから、実際に結婚するまで期間があるように、離婚も離婚したいと相手に伝えてから実際に離婚するまでには期間があります。
離婚届を出すまでに、親権、財産分与、面会交流、慰謝料、養育費などの離婚条件を話し合って決めなくてはいけません。
モラハラ夫の場合、この話し合いが上手くいかないばかりか、故意に財産を隠そうとしたり、合意をする前に勝手に離婚届を出すなどと言った嫌がらせを受ける可能性があります。離婚する前に散在されたお金は戻ってこない可能性がありますし、勝手に離婚届を出されるとそれを撤回する手続きは煩雑で厄介です。
またモラハラが加速してもっとひどい扱いを受ける可能性もあります。前向きに人生を歩み直すために離婚しようとしたのに、かえって自分の人生をボロボロにしてしまうことになってはいけません。
モラハラ夫との離婚をするときには、念密な準備が必要です。
今回は、モラハラ夫と離婚をする場合に必要な準備をまとめました。
モラハラ夫との生活はもう限界!離婚すると決めたら…
いままで、耐えに耐えて送ってきた結婚生活。
しかし、その我慢も限界を迎え、「離婚しよう」という覚悟が決まりました。しかし、すぐに相手へと「離婚する」と伝えてしまうと、離婚を阻止されてしまったり、大切な子どもや財産を奪われてしまいかねません。
早急に離婚の意思を告げるよりもまずは先に、離婚への準備を入念に水面下で進めていきましょう。
そして、準備が整ったら、相手に離婚の意思を告げるのです。
大切な子どもや財産を守り、離婚で損をしないために必要なのは「手順を踏むこと」です。
それでは、離婚に向けてやるべきことを順番に見ていきましょう。
1.出来ればまず別居する
一緒に暮らしながらであると、話し合い期間中にさらなるモラハラ被害に遭うことが予想されます。ひどい場合は、あなたの外出中に荷物を勝手に処分されてしまったり、家に入れないように鍵を付け替えると言ったことをされる場合もあります。
できれば、離婚の話し合いをする前に別居準備を進めることをオススメします。夫婦はお互いに生活を扶助しなくてはいけない義務がありこれを怠ると「同居義務違反」とみなされ慰謝料の請求対象になることがありますが、正当な理由があっての別居はこれに当たりません。モラハラが原因での離婚前提での別居も、正当な理由に当たると考えられます。
モラハラ夫との離婚の場合、離婚をするしない、もしくは離婚の条件でもめにもめて「長期化」する傾向にあります。特に、離婚の条件においては、常識から著しく外れた条件を提示される可能性が非常に高いです。
その間、ずっとモラハラ被害にさらされてしまうと、「もういいや」「出来れば早く別れたい」という心理から、不利な条件で離婚を成立させてしまう可能性が高くなってしまいます。
養育費は毎月1万の金額が違えば、一年で12万、10年では120万円もの金額になります。毎月追加で1万円の収入を増やすのは大変です。その金額があるのとないのでは、子どもに買ってあげられるものも変わってきます。
話し合いを平等に、かつ一般的な条件で決着させるためには、「話し合い期間の安定的な生活」が必要です。
自分の人権、子ども、財産を守るため、安住できる場所を確保しておけるとよいでしょう。
モラハラ被害から逃れて新しい生活を始めたい場合、内閣府が行っている相談窓口もあります。
生活拠点の確保、職の確保などのサポートを受けることができます。
その他、各種相談先はこちらから
【モラハラ相談窓口一覧】「死にたい…」そうならないために早めの相談を!
2.離婚届不受理申出を出す
離婚届は署名する欄がありますが、筆跡を確認することはないうえに、2人が揃って提出しなくても受理されてしまうため、モラハラ夫が勝手に離婚届けを出してしまうと厄介です。特に子どもがいる場合は、相手が勝手に自分を親権者として記入し提出してしまうと、それを撤回するのにものすごい労力がかかってしまいます。
離婚届は受理されると基本的に撤回することができません。ただし、どちらかの意思がないのに提出された場合は撤回することができますが、裁判を起こし判決を下す必要があるため大変です。
そこで、離婚を切り出す前に、あらかじめ「離婚届不受理申出」を市役所に提出しておきましょう。
「離婚届不受理申出」というのは、自分以外の人が離婚届を提出しようとしたときに受理できなくする手続きです。
本籍地の役所でなくても受理してもらえます。その場で受理してもらえ、受理してもらえた瞬間から効力を発揮するというスピーディーな手続きです。提出したことで、夫側に何らかの連絡が行くこともありません。
一度出しさえすれば、撤回するまで半永久的に効力を発揮します。
協議離婚の場合は、離婚届けを出すときに必ず「離婚届不受理申出」を提出した人が行かなくてはいけなくなるので覚えておきましょう。
- 離婚届不受理申出書(役所でもらえます)
- 印鑑
- 本人確認ができるもの(運転免許証・パスポートなど)
3.財産を把握する
共有財産は黙って持っていくと後で揉める原因になってしまいます。別居であれば、別居をした日が区切りとなり、それまでの共有財産の2分の1はあなたに権利があります。預貯金を下ろすことができる状態であれば、半分までであれば持っていっても正当な権利です。それができなければ、通帳のコピーを取り財産があることの証拠を残しましょう。
一方、家などの不動産、証券類(保険や株など)、車や家具家電などの動産はその場で半分に分けることができません。こういったものは持ち出すこともできないことが多いので、コピーや写真等で証拠を残しておきましょう。
またモラハラに加え、相手の浪費癖や借金がある場合も離婚理由になります。
日頃から家計簿をつけておく、レシートや督促状のコピーを確保しておくといいでしょう。
- 給与明細、源泉徴収票、所得税の確定申告書のコピー
- 通帳のコピー(口座番号、別居時の財産が分かるページのコピー)
- 不動産の登記簿謄本のコピー
- 貴金属などの写真、および領収書等
- 有価証券、保険証券などのコピー
- 定年が近い場合は、退職金、退職年金の額が分かるもの
- 厚生年金の番号
4.住む場所を確保する
実家や親戚などに頼れない場合、別居や離婚を機に住む場所が変わり、新しい家を確保しなくてはいけなくなります。
県営、市営住宅は家賃が非常に安く、さらに収入に応じて減免があるため「家族で住む間取り(2LDK、3DK、3LDK)」であっても月に1~2万円ほどの家賃で暮らすことが可能です。
しかし、県営、市営住宅は常時募集の物件であったとしても、申し込んでからすぐに住めるわけではなく、募集開始→申し込み→書類案内→書類提出→説明会→鍵の引き渡し→入居(先着順の物件の場合)まで、おおよそ3~4カ月ほどかかります。
そのため、今すぐに住居を確保しなくてはいけない場合には、前もって申し込みの手続きをする必要があります。
また、抽選の場合は必ず住めるという保証はありません。
相手からの暴力やDVによって居場所が知られると命の危険があったり、身を守る必要がある場合は、DVシェルターを利用することができます。
DVシェルターを利用したい場合は、まず、「配偶者暴力相談支援センター」、「女性センター」、「福祉事務所」、「婦人相談所」、「警察署」のいずれかに連絡をしてください。
DVシェルターの利用が必要だと判断されれば、そのままDVシェルターを紹介してもらえます。
- 配偶者暴力相談支援センター
- 女性センター
- 福祉事務所
- 婦人相談所
- 警察署
5.子どもたちの生活を確保する
子どもが幼稚園、保育園、小学校、中学校に通っている場合、転園・転校等をする必要が出てくる場合があります。事前にどういった手続きが必要なのかを確認しておきましょう。
出来れば、子どもたちの生活が変わらないように配慮することも必要ですが、それが難しい場合もあります。
出来る範囲で子どもたちの負担を減らしてあげましょう。
6.モラハラの証拠を確保する
モラハラで離婚をしたいと考えている場合、証拠が必要です。相手が離婚に応じてくれればいいですが、そうでない場合は離婚事由に当たることを証明しなくてはいけません。
しかし、離婚を切り出した後では証拠の確保が難しくなり、相手から「そんなことはなかった」と言われてしまうと離婚するまで長い別居期間を経なくてはいけない場合もあります。
必ず証拠をそろえてから離婚を切り出しましょう。
モラハラの証拠になるものは次のものです。
- モラハラをしているときの動画や音声
- モラハラを記録した日記(半年以上のもの)
- 暴言や束縛などが分かる相手からのメールや手紙
- モラハラ被害により心療内科などにかかった時の診断書
- 公的機関への相談記録
特に、モラハラをしているときの動画や音声は、決定的な証拠になりうる上に夫からの暴言の迫真性が伝わるため、証拠として確保しておくといい材料です。
7.弁護士に相談する
モラハラ離婚の場合は、たとえ協議離婚であっても弁護士に依頼したほうが良いでしょう。収入に不安がある場合は、必要を抑え、分割払いなどができる法テラスを利用することができます。
メールでのお問い合わせもできます。離婚ではスピード勝負が求められるときもあります。離婚を相手に切り出す前に、良い弁護士を見つけておくと安心です。
8.持ち出すものリストを作る
別居や離婚の際に、持ち出し忘れがないよう、すぐに持って出ていけるように持ち出すものリストを作りましょう。
忘れがちなのが、普段使うことがあまりないマイナンバー通知書やマイナンバーカード、年金手帳、パスポートです。
引っ越し会社に頼むことができれば大型のものも持って行けますが、それができなさそうであれば、大きな家具家電はあきらめ、身の回りの必要なものを持ち出しましょう。(特に通帳、印鑑、保険証、母子手帳、常備薬などは忘れずに!)
リストは、優先度の高いものからまとめましょう。
「必ず持ち出すもの」、「できれば持ち出したいもの」、「持ち出せたらラッキーなもの」にわけ、上から順番に持っていけるようにしましょう。
- 現金、通帳、印鑑、カード類
- 保険証、免許証、マイナンバー通知書、マイナンバーカード
- 年金手帳、パスポート
- 保険証券(自分名義のもの)
- 母子手帳、お薬手帳、常備薬
- 子どもが小さければオムツや哺乳瓶といった日常的に使うもの
- 子どもの幼少期の写真、作品などの思い出の品
- 子どもが保育園や学校で普段から使うもの
- 子ども自身が絶対に転居先に持っていきたいと思っているもの
- 最低限の衣類
- 普段から使う小型の家電(パソコン、カメラ、アイロン、ドライヤーなど)(ただし、自分の持ち物に限ります)
- 季節外れの衣類
- 子どものおもちゃ
- 布団類(布団は大きくてかさばるものではありますが、引っ越したその日から必要になるため、できたら持ち出したいものです)
- 自分の趣味のもの
- 大型の家具、家電
- 食器類やキッチン用品
- 洗剤、ティッシュなどの日用品、消耗品
- 文房具類
お金を出せば買えるものは、優先度の低いものです。しかし、別居や離婚で新しい生活が始まるときにはまとまったお金がかかります。
家具家電などは売れば二束三文ですが、一から揃えようとすると費用がかさみます。
もし、離婚の話し合いの折り合いがついて持ち出せるようであれば、引っ越し費用を払ってでも持ち出したほうがいいでしょう。
9.離婚したいことを相手に告げる
さて、離婚の準備が整ったら、相手に離婚の意思を告げてください。
出来れば、弁護士などに同席をしてもらい、第三者のいる場所が良いでしょう。
そして、決してやってはいけないことは、離婚の話し合いの場で離婚届に署名、捺印してしまうことです。
離婚届を出すのは、「離婚の条件が決まってから」がベストです!
必ず、離婚の条件を決めて、それを公正証書か、もしくは調停証書にしてから離婚届を提出してください。
また、弁護士を雇う予定があるのであれば、必ず相手にそれを伝えておきましょう。弁護士を雇うということで、相手からの嫌がらせの抑止力となるからです。
モラハラ加害者の場合は、別居や離婚を告げられると激怒し、モラハラがエスカレートすることが多いのです。また、それだけでなく泣き落としや土下座、付きまといといったことで心変わりするように強要してくることもあります。
別居後にも嫌がらせや付きまとい、ストーカー行為が続く場合は家庭裁判所から接見禁止命令を出してもらうことができます。あまりに悪質な場合は、面会交流の制限やルールを課すこともできます。しかし、モラハラ加害者は被害者のことをなめているため、「そんなことはできないだろう」と高をくくって、平気で嫌がらせをしてきます。
しかし、弁護士を雇うの一言で、自分が不利になる行為は止めようと、ストップをかけれる可能性があります。私の場合、元夫から別居から離婚まで数々の嫌がらせを受けましたが、それでも弁護士を挟んでいたので「直接の嫌がらせ」は一度もありませんでした。
なにがなんでも直接の話し合いを求めてくるタイプもいますので、「弁護士」に盾になってもらいましょう。
10.仕事を見つける
10-1.在宅ワークで働く
今まで専業主婦だった場合、資格などを何も持っていない場合、子どもが小さい場合、いきなり働き口を見つけるのは容易ではありません。
今後の生活のためにも、長く務めることができる仕事を見つけたいところですが、さまざまな理由で外で勤めることができない場合は、在宅ワークで働くこともできます。
現在、私は在宅フリーランスとして、月に15~20万円の収入を得ています。完全在宅の働き方なので、家事や子育てとの両立もできています。
最初は、月に5万円ほどの収入を得ることしかできませんでしたが、長く続けているうちにスキルも上がり、今ではアルバイトやパートと同じくらいの収入を完全在宅で稼ぐことができるようになりました。
10-2.母子家庭自立支援給付金制度を利用し、資格を取得する
また、母子家庭では、資格を取るときにかかる費用の一部を補助、助成してもらえる「母子家庭自立支援給付金」という制度があります。
この制度を利用すると、資格を取るためにかかる費用の6割を国から補助してもらうことができます。(下限1万2千円~上限20万)
資格講座が対象講座かどうかの確認が必要です。
- 一般教育訓練給付金対象講座
- 都道府県が指定した講座
10-3.高等職業訓練促進給付金等事業を利用し、学校に通う
資格を取るために学校に通う必要がある場合、学校に通っている期間の生活費を月10万円(市民税課税世帯は7万5千円)、国から給付金を支給してもらえる「高等職業訓練促進給付金等事業」という制度もあります。
(対象資格:看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士、理学療法士など)
学校に通っている間の生活費が支給されるため、学校に通う期間働けなくても生活することができます。
10-4.職業訓練を利用する
さらに、長年専業主婦で働いてきてほとんど職歴がない場合や40代以上であったとしても、正社員への道があります。それが、公共職業訓練(離職者訓練・求職者支援訓練)制度です。
専門的な技術を学び、学んだスキルを活かして就職することができます。
受講費用が無料で、受講期間中の手当てが月に10万円支給されます。(※支給要件には、同居家族を含めた収入制限があります。)
※いずれの制度も利用できるのは1回までです。
制度について詳しく知りたい方は、下記サイト、もしくはお住まいの自治体にお問い合わせください。
この他にも、今やすべての職業で必要とされるパソコンスキルを磨く「パソコン教室」などを開催している都道府県や自治体もあります。(託児付きのところもあります)
仕事によっては資格の有無で給料が変わるものもあり、また有資格者であれば、職場が変わっても長く同じ職種で働ける可能性も高まります。
制度をうまく活用し、就職へとつなげてくださいね。
11.調停離婚を利用する場合は?
話し合いで離婚の条件がまとまらなかった場合、すぐに裁判になるのではなく、まずは調停という制度を利用することになります。日本では、「調停前置主義」という考え方が取られており、いきなり裁判をすることができないからです。(まずは、話し合いで解決しましょうというスタンス)
しかし、調停も家庭裁判所で開かれますし、必要であれば、弁護士を雇い同席して話し合いをすすめてもらうことができます。
実際に、私も調停制度を利用し、弁護士を雇い、調停離婚を成立させました。
調停をするにあたって必要な情報をまとめました。調停離婚を考えている方は一読することをオススメします。
まとめ
モラハラ夫と離婚する場合は、手順通りの手続きを踏むことです。勢いに任せて離婚をしようとしてもうまくいきません。出来れば、あなたも子どもたちも安心した場所で離婚の手続きをすすめられることが望ましいでしょう。
離婚までの道のりは長く、時には相手からの精神的攻撃にくじけそうになる時もあります。
周りの人に助けを求めたり、心配なことがあれば弁護士などの専門家にお願いするなどして周囲の力を借りましょう。
特にモラハラ夫との離婚は離婚までの間に「嫌がらせ」を受ける可能性が非常に高いので、自分の身や心を守ることも忘れないでくださいね。
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